第144話クリスマスパーティ
「お兄ちゃんただいま」
「お帰り冬雅」
「・・・クリスマスって恋人といる日じゃないですか」
「日本ではそうだけど今日はイギリス流でのクリスマスを楽しもうと思うけど」
「そうですね・・・比翼もいますし」
「冬雅おねえちゃん・・・邪魔だったら、わたし外で出掛けるよ」
夕方に帰ってきた冬雅を俺と比翼で迎えると、嬉しいそうに笑う。
相思相愛かもしれないけど恋人になっていない。これが重要でその先に進むのは大人になってから。
いや、違う!冬雅が俺に冷めるまで付き合うと決めいたじゃないか!?俺の気持ちはどうでもいい。比翼は邪魔じゃなわけじゃない。冬雅は首を横へ振る。
「ごめん比翼・・・お姉ちゃん、お兄ちゃんが大好きだから
周りが見えなくなることがあるの。だから、ごめんね比翼」
「お、おねえちゃん」
靴を脱ぎ冬雅は涙ぐみこんな時なのに見惚れそうな優しい笑みで近づき、ゆっくりと
「軽率だったから。傷ついているのに忖度が足りていなかったよ」
「そんな・・・ことない。
わたし、こんなに優しくされるのなかったから・・・・・ど、どうしよう」
愛情を一身に受けた比翼は戸惑い嗚咽をこぼす。過去にどれほど苛酷な環境にいたのか僅かに欠片ほど感じて俺の心は痛みを感じた。
「大好きかな。大事な人に使う言葉だよ。比翼はどう?わたしのこと好き?」
「だ、大好きだよ冬雅おねえちゃん」
「うん。嬉しいよ比翼」
「うぅ、うぅぅっっ」
比翼の闇は俺が思っているよりも深い。俺はきっと闇を照らす力はないだろう。微々たるものでしかないけど冬雅はすべて照らして比翼の闇を癒やしてくれるかもしれない。冬雅は・・・本当に眩しくって温かい女の子で、俺なんかいていいのだろうか。
「落ち着いた比翼」
「う、うん・・・」
涙を拭う比翼を優しく手を引く冬雅。なんていうか尊い光景で
これを守りたくなる。先に居間を入った俺は料理の準備をする。
さてシチューをまずは作るか。
野菜を切って肉の代用としてサツマイモを入れる。他のも作ろうとするよ近づく足音。
「お兄ちゃん。手伝います」
「おにいちゃん!わたしもやる!」
冬雅と比翼がご助力になると言ってくれたのは、構わないけどサンタ衣装にエプロン姿をした。
空前絶後の美貌を誇る二人が着ていると可愛く輝いてみえる。
「それは助かるよ。それじゃあ
こちらの食材を頼む」
「かしこま、お兄ちゃん!」
3人で調理をしていると家族がいるのはこういうのかな?っと忘れた懐古心を
「うわぁ!びっくりした」
比翼は肩をビクッと動き驚く。
「もしかして真奈でしょうか。お兄ちゃん?」
「どうだろう。私のスマホに真奈が掛かるのってなかなか無いけど。少し離れるよ」
画面を見ると実の弟である
「もしもし」
『兄者、今日はクリスマスだから帰るから俺の分も頼むぜ』
「えっ?帰ってくるのか」
『ああ。それで兄者の大好物の
ケーキも買ったから冬雅と真奈と一緒に食べるといい』
俺は織田信長と同じく甘い物には目がない。前はそれほど関心はなかったけど小説のヒロインがパンケーキやお菓子を食べる描写に具体的なリアリティを追求のために食べてから
「分かった。楽しみにしているよ」
『ああ、すぐに戻るから。じゃあなぁ』
「ああ、それじゃあ」
通話を終了と押してスマホを机に置きキッチンに戻る。戻ってみたら冬雅が
「冬雅おねえちゃんとおにいちゃんって料理が出来るなら理想な夫婦になれるよ」
「そ、そうかな。お兄ちゃんと――」
「よし、手伝うよ」
「ひゃっ!?お、お兄ちゃん・・・今の聞いていました?」
「聞いていたって?」
「ううん、何でもないよ。
あ、あははは」
すまん冬雅。すっかり頭の中にそのセリフを海馬に記憶した。
遮ったのも恥ずかしいから考えよりも先に出た行動。
袖を
「あれ?三好さん今日は一人で」
「はい真奈さんと行くつもりでしたけど・・・家族とクリスマスがあるからと断れましたので」
「なんか真奈らしい」
口調や態度からすると、素っ気ない淡白と思われるけど優しい彼女はらしい。っと、明確な説明がない信頼がある。
「はい。冬雅のお兄さんとイブで短い盛り上がったって喜んでいましたよ」
「へ、へぇーそうなのか」
真奈が語っていたのだろうか。
「はい。その
真奈が冬雅みたいに明るく笑う姿か・・・。
「それは、ちょっと見たかったかな」
「でしたら私が伝えておきますね」
「頼みます・・・・・あっ、いえ!
今のは言い間違いです」
「いえ、いえ。絶対に伝えておきます」
「えぇーー!?三好さん気のせいかな私の扱いが前よりも優先度が落ちたような」
気を遣わなくなったのを遠回しに優先度が落ちたという言葉へ変える。非常に迂回な言葉が理解していないと思う。俺も似たような事を返されたらそうだと思う。
ともかく三好さんはにこやかに笑っている。親友である真奈の話をすると自分の事のように感情的になる。いつもは満面的な笑みを浮かべる。って最近の俺は笑顔の評論家にでもなったのか!?
「そんなことないですよ。真奈さんの未来の夫になる方ですから。
私も仲良くしようと思っています」
「そ、それはどうも。
未来の夫には答えれないと思うけど」
「フフ、冗談が稚拙なんですね」
あれ?笑顔なのに辛辣な気がする。もっとも真奈がこのやり取りを聞いていたら大変な事になる。
「続きは中に上がってからしよう。今日はとくに寒いから」
「そうですね。ご
三好さんを連れてリビングに戻ると冬雅が「遅いよ茜」と駆け寄り歓迎する。三好さんは「少々、片付けないといけない手伝いがあって」と応える。同年代だと年相応になる。これが素だろうなぁ。
「その気になったのだけど、冬雅さんの後ろに隠れているこの子は?」
「えーと、親戚かな?」
「親戚・・・どうして疑問系なの?」
それはその場で浮かべた設定上のことだから!なんて言えるわけがなく冬雅に援護射撃しよう。
「実は・・・冬雅とは会うのが初めてでして親戚関係って実感していないからだと思います」
いつもながら苦しい嘘に罪悪感に苛まれる。こういうのは冬雅の
成否とか関係なく俺がしないといけない。冬雅の方が親友に騙した罪悪感にさせたくないからだ。
「そうなんですね。初めまして私は
ショーヘアーの黒髪と女性が求める理想的な体型をした三好さんに緊張しているのかな比翼。
大人のような色気の意味ではなく
精神が落ち着いていることが。
JKなのに大人な雰囲気があるのに俺は子供のように慌てふためく。
・・・少し羨ましいと思う。
それよりも比翼は小さい子供みたいに冬雅の背中を壁にしてそっ、と顔を出して比翼を見る。
「ど、どうも。わたしは
「うん。よろしくね箙瀬さん」
「わたしの事は比翼で!」
そこは堂々と主張するんですね。
三好さんも加わり料理を作る。
さすがに人数も人数なので役割分担と場所を決めて行うことにした。シチューなどは冬雅と三好さんに任せ俺と比翼はからあげを揚げる。
「いいかい、からあげを揚げる油は一度きり。なにかしらを揚げた後の油は質や栄養など落ちる。
なので次に使用するなら新しいもので使う。次にからあげを揚げるときは油を多めに使うのがスタンダードだけど少なくする」
「お、おにいちゃん説明が長いよ」
比翼は辟易とした顔で諦めている状態。し、しまった料理を教えるのってデリケートに教えないといけないのは前に実体験で学んだことがあるのに。優しく教えることを意識しないければ。
「普通は多めに油だけど少なくがいいんだ」
「どういうこと?」
想定内の質問が来たので即、答える。
「油が飛ぶんだ。けど少なめにしたら」
「飛ばないんだね!」
「半分は正解かな。このやり方は多く入れるときにやるんだ。
百聞は一見にしかず!ことで早速やってみようか。はい」
油を比翼に渡し、すごく緊張してゆっくりと鍋に入れていく。ちょっとだけ入れて入れ終わったと達成感に浸る比翼。
「やりました。おにいちゃん!」
「・・・もう少し入れてみようか」
初心者がやりがちな事は油や調味料など量だろう。比翼は俺の言うことをしっかり聞いて入れて
適量のところでストップと言うまで4回目も入れていた。ともかく―
「偉いぞ比翼。さすがは比翼だ」
「・・・・・」
比翼は目を見開いて驚いていた。
き、気持ちわるかったのかな?
「えーと続けるよ」
「は、はい!おにいちゃん」
涙目になって元気よく答える比翼。情緒が不安定な反応をしたことに俺は心配になり精神科でも
診に行かせないといけないかと思った。そうなった場合は保険証とか訊かないといけないだろう。
ともかく今日は比翼を楽しませることだけを全神経を注がないと。
「よし次は真空パックで鶏肉と
「はい!」
比翼に細かく指示をして、できる度に「さすが」「すごい」と褒める。
「・・・おにいちゃん優しいすぎます」
「え?」
真空パックで混ぜている途中でそう呟くと俺に顔を向ける。混ぜると言うよりも外側を持ってただ振るシェイクに近い。それよりも比翼の顔は涙が頬に伝っていた。
「比翼・・・・・」
「ずっと怒られて八つ当たりされ続けてそれが当たり前だって思ったんです。おにいちゃんは褒め続けて・・・嬉しいけど困ります」
まだ比翼には分からない事が多い。常識を知らずに愛情や褒めるという当たり前の事を知らないようであるように。
「比翼これだけは言うよ。
愛情とか褒めるの慣れてもらう!」
「あっ、は、はい?」
泣いているのは未知な感情に高ぶって慣れずに混乱して限界になって泣いていると思う。そう決意した。比翼は呆れ困ったようななんとも分かりにくい表情する。
「これは全人類が
享受は難しいと思い言い換えた。
それよりも我ながら無茶苦茶でエコの
傍若無人に受け入れると俺は言っている。
「逃してくれないんですね」
「ああ絶対に」
比翼が想像したよりも闇に絶望にいるなら本人が否定しても逃げようと救って明るくさせてやる。
俺が子供の頃に夢を見て夢想していた偶像上の存在である目的のない救う存在を。別の言い方を言う機会があるならヒーローと呼ぶべきだろう。
「あっあうぅぅぅ。おにいちゃん」
真空パックを置いて比翼は俺の胸の前で飛びつく。
「うわぁ!?」
「おにいちゃん大好き。大好き!」
胸に顔をうずめて頬をずりのようなことされて大好きと連呼。
くすぐったい二重の意味で。
「比翼・・・ありがとう」
「どうしてお礼なんてするんですか?わたしがお礼したいです。
おにいちゃん大好きとありがとう」
「はは、そうか。うん、どうもいたしまして」
「冬雅のお兄さん」
ゾッ。背筋が凍るような視線と声に俺は何故か汗が止まらず恐る恐ると横へ向くと三好さんが笑って笑っていなかった。外は笑って目と声に笑っていない。バ、バカな!?27才の俺がJKの威圧的な雰囲気で怖じ気づいただと。
ちなみに冬雅は感動して流れる涙をハンカチで拭っていた。
「三好さん進捗はどうかな」
「はい。順調ですよ・・・冬雅のお兄さんは真奈という婚約者がいるのに
もしかして真奈の事を思って怒っている。いや当然として分かっているけど、まるで不倫しているみたいな批判的なんだけど!?
もちろわ比翼には恋愛として見ていないし比翼には失礼になる。
「お、お兄ちゃん!真奈と婚約者ってなんですか!?」
「冬雅これは違うんだ!」
冬雅の誤解を解くのにかなりの時間を要した。・・・はは、疲れた。
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