第135話―アプローチが激しい二人が大人しい件について―

関係者以外立ち入り禁止のドアを出て真奈と手を繋ぎ帰宅しようとすると大国エミリーさんに捕まった。バイトが終わってすぐ。


「いやぁー、こうしていると

禁断の恋って感じだねぇ。真奈ちゃんはどう?」


書店を後にして、近くの小さな公園ベンチに座り質問されていた。

早く帰って冬雅の顔を見たい。

おっと、勘違いなさらないでほしい。シスコンでもロリコンでもありませんので・・・・・たぶん。


「え、えーと・・・お兄さんとはこうして手を繋いでいるけど

ゲームとかゲーセンで熱くなったりします」


真奈としても当惑しているから、

別方向に話題をする。いや、話題を逸らそうしているのか!しかしエミリーさんは目を輝かせている。


「ほぉー、ほぉー。思ってたよりもラブラブで。それで、いい雰囲気になれるの?」


「お兄さんといい雰囲気か・・・

告白まがいな事なら何度もあるかな」


あれ?そんな事があったかな。

疑問を問いたいが、真奈が怒りそうなのと、今はエミリーさんがいてストレートは難しい。ともかく

距離間を気を付けていていますので。


「おぉー!告白か。それでどんな告白を」


「え?えーと・・・大事に思っているとかそんな言葉ですね。

ねぇ、お兄さん」


「うわぁ!?あっ、うん。そう」


急に話を向けないでほしいのだけど。心なしかいつもよりも元気で高揚感こうようかんでいるように見える。エミリーさんは

そんな俺か真奈または両方の反応に満足して何度か頷いていた。


「うん、うん。まるで年の差なんて知るかぁぁぁぁ!って感じだね」


「はい、そうですよね!」


「・・・・・」


エミリーさんの前では恋人として振る舞わないといけないんだよなぁ。ニセコイだね。さて似た地名があった北海道のニセコ!

関連的なワードを考えて今日も軽度の現実逃避病にある俺はため息をこぼす。


「やっぱり、この後はデート?」


「え、えーと・・・・・は、はい!

オシャレなお店に行って夜景を眺めて・・・あ、愛をは、育むんです!!」


「い、いやぁー楽しみだなぁ」


いつもなら、ツッコミでもして否定するところだが悲しいかな。真奈がこの寒い季節なのに握る手には小刻みに震えていて汗が出ていて、顔が赤い。白に近い肌って赤くなるとすごく分かりやすい。

エミリーさんなんと本気のように見えるけど演技なんだぜ・・・好きなのは知っているけど。さてその後の予定は家に帰ってゲームやアニメを冬雅と3人で観ること。


「ぐはっ!年の差デートなのに、なにこのリア充ぶり。それよりも、お兄さん〜、棒読みは、なぜなにナデシコ?」


そのネタを分かるの俺達の世代ではなかなかいないと思うぞ。

学生の頃にカラオケで昔のアニメを歌ったら知らなくて変な空気になったんだ!って弟が戦々恐々せんせんきょうきょうに語っていたことを思い出す。


「あっ、それ起動戦艦ナデシコですね」


「どうして真奈が知っているんだ!?」


「キャー!」


「うわぁー、びっくりした!」


真奈の豊富な知識には驚かせるけど知っているなんて思わなかったんだ。真奈とエミリーさんが目を見開いて奇声を上げた俺を見る。


「お兄さん、ワタシ何かおかしいなこと言いました?」


「おかしいと言うのか。生まれる前にあったアニメを知っていた事が驚いていたんだ」


「あっ、そう言えばお兄さんが子供時代であったんですね」


真奈は好奇心があふれる顔で、おそらく直感でそう言う。記憶を探り放送したのは前に調べたことがあるけど忘れている。それに

観たのは中学だ。


「ちょっと待ってくれ、年の差カップル」


エミリーさんはダウンジャケットのポケットからスマホを取り出し調べ始める。ちなみにカバーは

可愛い動物。


「1996年だね」


何か真奈と話でもしようかな?と考えていると、エミリーさんが見つけたようだ。


「それなら4才だから。さすがに観ていないね」


「あっ、同い年だ!私の年齢って27だけど山脇も?」


「そうだけど。もしかしてエミリーさん俺と同い年だったのか!?大学生ぐらいかなって思っていたよ」


「フフ、ありがとうよ。なんだか同い年って運命を感じるなぁ」


「確かに。似た趣味と共有できて同い年だと。他にも似ている所もあるかもしれないかもしれない」


エミリーさんの溌溂はつらつさに久方ぶりに盛り上がる。

大人になると同い年って会話が激減するんだよね。まぁ、職種や環境も影響があるから、結論を言うと個人差がある。エミリーさんは「だよね」と肯定して次の言葉を言う。


「そんじゃあ誕生日は?

私は10月1日」


「うわぁー、俺は5月の下旬ぐらいです。さすがに他も同じは無理がありましたね」


「そうだね。なんだかヤバイ、はっはは」


「うん」


飄々ひょうひょうとして苦手意識があったけど、今は同士のように思える。そろそろ来月になると赤穂浪士あこうろうしがテレビであるかな?


「ふーん、お兄さん。楽しそうですね」


握る手に力を加える真奈。痛くはないけど不平不満は伝わった。振り返ると案の定、怒っていた。


「ま、真奈えーと・・・これは」


「同い年って、そんなにアドバンテージがあるんですか?

お兄さんはロリコンじゃないんですか!」


「いや、ロリコンじゃないよ」


悲しいかな。否定するとき目をつい逸らしてしまった。真奈の目は

慧眼けいがんですし目の錯覚か猛禽類もうきんるいな目に見えます。


「へぇー、ロリコンだったのか。やっぱりナンパとかしているの」


「していない!」


素朴な質問をするみたいに導火線みたいな質問やめてくださいエミリーさん。


「お兄さんの言うとおりですね」


「落ち着いたんだね真奈」


賢明な真奈なら、熱くならなかったら分かってくれるのだ。


「お兄さんは、JKが大好きでしたよね」


「ああ、それだけは違うよ真奈」


「うおぉー!?すごい冷静にツッコミだ」


まぁ、そこは違うと断言できるからね。・・・・・冬雅と真奈は例外がついていると心中で付け加えるけど。


「・・・・・お兄さんってJKが好きじゃないんですか。大抵の男性ならそうだと思ったけど」


「あはは、そうだろうね」


高校生を卒業すれば、そうなるかなぁと思っていた。20代前半で

運命的な恋愛をしたいと思っていたけど後半からは、薄れていくし。それに冬雅に最初の告白から

そこから大きく変わったと思う。


「ともかく、俺達はデートの続きがあるんで。ここで失礼したいと思います。彼女が嫉妬しているので」


「嫉妬していない、お兄さん!」


顔を前よりも赤くなっていると、説得力がないけど。エミリーさんはそんな真奈に微笑を浮かべる。


「それな。んじゃ、バイバーイ。若人よ」


手を振って去っていくエミリーさん。


「はい、さようなら」


「バイバーイ!」


俺と真奈も別れの言葉を告げて、待っているだろう人に家路につくことになる。住宅街に入ると

人も少なくなっていく。

寒いから家で籠城ろうじょうしているでしょう。


「お兄さんって、エミリーさんの好きなんですか?」


「唐突だね。いやぁ、恋はまだ知らないよ」


「そうですか・・・このことを冬雅に報告しますねぇ。お兄さん」


「・・・なんだろう。よこましまな事をした罪悪感があるんだけど」


冬雅が悲痛な笑顔を想像すると俺は良心の呵責に苛まれる羽目になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る