第117話ファイナル勇者マナ

国の惜しみのない資金を受け取り

お兄さんと二人で未知の冒険へと

なった。王との謁見の後に次期国王ことアイール・レイン・ファングに渡された地図を広げる。

日が昇り木に背中を預けていたワタシは顔を上げる。


「もう、こんな時間なのか」


時計が数が少なく、現代科学の恩恵がないと想像の以上に不便だった。時刻は体感時計と太陽が頼り。冒険に出て数カ月の月日が過ぎた。お兄さんの告白で冒険というよりハネムーンに近い旅行感覚で出た。生活は毎日が幸せで

満ち溢れていた。


「お兄さんのためにも、今日も頑張らないとねぇ」


そう自分に言い聞かせて地図に視線を戻す。黒く塗られているのは

人類と神々と悪魔の三つどもえの激戦にカタストロフィーという魔法で消滅した領土。

その結果、領土は限られた。

ともかく現目的だ。ワタシ達が向かうべき地は奪われた領地で、

黒でバツと簡単に加えている。


(近いのは、ここかな?)


安全性と近道を探して頭に入れる。大体の道は覚えたから、朝食を作らないと。密林の草木が生えていない場所に戻り、まだ睡眠中のお兄さんの寝顔を見る。


(最初は隣で寝ているのが、

ドキドキしっぱなしだったけど

今は慈しみがあるかな)


何度も寝ていれば、慣れていき

別の感情も芽生える。

もちろんドキドキは、まだある。

さて、消した焚き火を起こして料理だ。川で捕まえた魚や野菜など鍋に入れていく。ほとんどが現地で取ったもの。自給生活にすごく不便に感じたけどお兄さんのためと考えると、煩わしい過程も

愛情になる。


「フフ、ワタシとお兄さんの夫婦生活♪これからも、かけ離れ無い強いきーずーなを心にあるんだ。これからも、一緒に―――」


一人だけとあって放歌高吟ほうかこうぎん、気持ちよく歌う。


「んぅー、いい歌だね」


両手を上げて伸びするお兄さん。

ゆっくり立ち上がり、隣に座る。


「ふふ、また歌を聴いてしまいましたか」


「あ、ああ。・・・・・けど、そうして大人をからかうのはやめてほしいよ」


「お兄さんかわいい」


「いや、可愛くはないだろ。

可愛いのは真奈の方だよ」


「そ、そう。いい天気ですね」


「そうだね真奈」


一緒に見上げる大空は群青色と太陽の雲ない。まるで、ワタシの心のように。


「いつも早起きで、わるいし

俺が変わろうか真奈」


「いいですよお兄さん」


「大人の俺からしたらJKにいつまでも、そうされると申し訳ないけどなぁ」


「いいですか、お兄さん。

ワタシ達は夫婦なんですよ。

そ、その、もう子供じゃないですし・・・同じ立場として扱ってほしいかなって」


自分で言うととてつもなく恥ずかしい。そりゃあ、子供として扱いするだろうけど、いい加減に

お、お嫁さんとして見てほしい。


「そうだな。それじゃあ、頼ませてもらうよ真奈」


お兄さんは、ワタシの髪を優しくなでる。気持ちいい。すごく!

お兄さんのために期待に応えよう。それから、手を繋ぎ領地奪還に進む。付近に魔物の数が増えて

ようやく幹部と戦闘になる。

相手は棍棒を持つオーガ。


「風の竜よ。その偉大なるアギトで敵をらい尽くせ

[ドラグーン・ファング]!」


ワタシは詠唱する。すると後ろに風力で生まれたドラゴン。

そして、オーガを喰らわんと突き進む。


「フン!」


オーガは、棍棒でぎ払う。すると、散り散りとなる風の部位が敵を襲う。

鎌鼬かまいたち、風は刃となり手を切り裂く。


「効かぬわ!」


オーガは、確実に傷を負っている。しかし致命傷とはいかない。


「なら、これはどうかしら」


ワタシは、大剣を握り突撃。


「フン。火に入る夏の虫とは、この事を言うのだろうなぁ」


オーガも棍棒を両手に突撃。

巨体のオーガの方が、腕が長くリーチがある。棍棒を振り下ろし

ワタシは右へ回避する。

瞬間、振り下ろした棍棒の衝撃。

乱暴な風と土塊が舞う。


「今だよお兄さん!」


「なに?」


すると、ワタシが先までいた背後から煌々こうこうと輝く閃光の流星がオーガを貫かんと進む。


「ま、まさか!?すべてはこの技を確実に当てるためにオレの隙を作らせたのか」


「そういうわけよ。じゃあね」


「く、くそがああぁぁぁーー!」


幹部を次々と倒していき最後の

敵である魔王の根城へ侵入。

今までほうむった幹部が

復活していた。倒したら回復アイテムが落ちていて拾って、過去に戦った幹部を倒すを繰り返す。

艱難辛苦の道のりであったけど

玉座の間に入ると、魔王が座っていた。


「真奈いけるか!」


「もちろんだよ!お兄さん」


「くく、そう血気になるではない。どうだ異世界に招かれた勇者よ。我に仕える気はないか?世界の半分を与えてもいい」


「答えはノーなんだから」


「なら、ここで消えるがいい」


魔王との戦闘は激しかった。

ワタシのとっておき、カード顕現により究極の碧眼へきがん蒼龍そうりゅうを呼び出し滅びのバーストストリームにより魔王の体力を全損。


「ぐわあぁーー!?

ば、バカな我が負けるのか。

否、否、否、いな、いなぁーー!我は無敵で世界を統べるのだ!!」


魔王の身体から瘴気が起きる。

瘴気を包まれていき、晴れていくと黒き竜が睥睨していた。


「こうなれば、滅ぼす。

世界を全てを・・・・・ぐあぁぁぁぁぁーーーー!!」


尽きることない怨嗟のおたけび。

ワタシは、両耳を塞ぐ。

心まで絶望に支配されていく。

こわい、かないっこない。

諦めていると、黒き竜の身体にいかずちが命中する。


「真奈、俺達ならやれる。

だから諦めないでくれ!」


「っ!?そうだよね。ワタシにはお兄さんという相棒がいる。

お兄さんとなら、なんだって・・・・・できる!」


押し潰すほどの畏怖をワタシは

屈せず立ち上がる。


「ほう、恐怖を超えたか。面白いぞ人間よ!いや異世界の勇者よ」


黒き竜は、不敵に笑う。

ワタシは、剣と魔法の連撃を仕掛けてお兄さんは連続魔法で放つ。

黒き竜は、長い死闘によりよろめいた。


「今だよお兄さん!」


「ああ!」


ワタシとお兄さんの手を繋ぎ

それを敵に向ける。


「これが」


ワタシは、敵を向けて言い放ち。


「俺と真奈の」


お兄さんも続ける。


「「愛の力だ!!」」


言葉と心が重なり奇跡の極光オローラが繋ぐ手から放つ。

膨大な光。

黒き龍の巨体を全て呑み込むほどの光は壁を貫き、おそらく宇宙を超えて飛んでいく。

光が収まる。


「我が滅んでも第二、第三の魔王は復活する。そして・・・勇者らを――」


言葉は途切れ灰となり、風に吹かれていった。


「お兄さんやったよ!」


「ああ、やったんだ真奈」


ワタシとお兄さんは、熱いハグをした。どれほどハグしていたか

分らないけど、数時間もしていた気がする。その後、ワタシはお兄さんを見つめてくちびると唇を触れようと―――


「な、なにっ!?」


地面が黒く変化。すると、景色も

黒に侵食していき、瞬きする刹那で全てが黒へと変わった。

お兄さんの姿も少しずつ薄れていく。


「お兄さん!お兄さん!!」


「真奈、真奈ぁぁぁーーー!!」


繋いだ手を決して離さない。

離せば2度と会えないような恐怖があった。だけど、消えた。


「お兄さん?お兄さんーーー!!」


「お兄さん!・・・あれ?」


ワタシはベッドの上に寝ていた。

目の前にはワタシの部屋の天井。

ワタシの思考はクリアになっていき覚醒と呼べる状態になって

理解していく。


「あわあわ、また夢を見た。

し、しかもお兄さんと恋人になって夫婦になってハグして

さ、最後に・・・キ、キスを・・・・・」


異世界に強制帰還も考えたが

夢の中である特有の辻褄つじつまが合わない出来事が多い。


「あ、うわ・・・・・うわあぁぁぁぁぁぁぁわっっーーーーー!!」


一気に羞恥がワタシを襲う。

普段のワタシなら、もっと慌てている。体力があり過ぎたりも。

お兄さんも冬雅を心配していないし、告白していたし。

矛盾がいっぱいある。どうして

疑問を持たなかったのよワタシ。


「ど、どうした真奈!?」


「ナーちゃんどうしたの?」


絶叫にパパとママが、慌てて入ってきた。


「えーと、パパとママその・・・

ごめん。いい夢を見たの!」


「「・・・いい夢?」」


二人は、首を傾げる。

それから、ご近所さんが悲鳴が聞こえた事で警察に通報。

パパとママが、勘違い打と頭を下げる結果となった。

ご、ごめんなさいパパ、ママ。

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