第92話芸術の秋は、爆発だ!その3

「冬雅は、ともかく、お兄さん!

克己心こっきしんが無いのですか?い、良い雰囲気なのは・・・

いいですよ。でもねぇ、付き合って

いない女の子に、あそこまで

照れるなんて・・・なんだか

不愉快!あと場所とかも」


説教が終わると真奈は俺の右から手を繋ぎ、目的地に歩き進む。

電車に乗り降りて国内で有名な

場所へ歩いて行く。

真奈の機嫌は良くないお怒りモード。言葉の後半はヤキモチに

聞こえるけど、そうだとすれば

光栄だけど俺には分不相応だな。


「め、面目次第もありません」


「・・・ねぇ?急にごめんって先に謝るよ・・・・・お兄さんって

冬雅が好きなの?」


「―――――」


真奈をデート楽しませようと

少し距離を取る冬雅は息を飲んでいることだろう。二人きりでデート気分を考慮したのだろうけど

ときどき後ろから付いて来ているか心配になる。


考えるべきは真奈の質問だ。

待ち合わせで冬雅といい雰囲気に

なっていると真奈は思っている

だろう。もちろん誤解で、

少しドキッとしただけなのだ。

・・・あの時の真奈が来なかったら、どうなっていたか?

いやいや!別の事に考えるな!

もちろん応答は既に決めている。


「女の子として好きかは・・・」


冬雅から毎日の告白してきて

胸がいっぱいになることはある。


冬雅を振ったことは大人としても

冬雅に対しても正しい選択だと

思う。だけど、別問題に冬雅の想いと俺自身の想いに間違っていないのか・・・答えが見つかっていない。そんな悩みが巡るのだ。

なにが正解?本当の気持ちは?

分からず混乱していく。


「あ、あはは。お兄さんは

ワタシ達が大人になるまで返事

するでしたよねぇ、冬雅の

告白を。ちょっと焦燥しょうそうに駆られたのかな?ワタシ・・・はは」


「・・・・・・」


ぎこちない笑みで、これ以上の

話を明るく笑い飛ばして

中断させた真奈。

これで、いいのだろうか。

下手に慰めて言葉は失礼だろうし

肯定だって同じ・・・後ろの冬雅も何も言わずに足音が耳に入る。

現段階でのベストな行動は――


「俺は冬雅や真奈とデートするのを楽しみにしていたんだ」


「「えっ?」」


今はデートなんだ。


「だって、デートなんだよ。

楽しまないと損だからね」


暗い空気を一変させるには

偽りのない本気の気持ちで

しかない!

恋人でもなく妹でもない女の子と

二人でデートなんて歪すぎる

関係だろう。それは客観的に

だけだ。


「お兄ちゃんとデート・・・」


「そうだよ!秋と言えばデート。

季節としては穏やかで紅葉も

キレイで俺達としていい思い出になるはずだよ」


歪な関係だと思われても俺の見解はかけがえの無い貴重な時間と

想いなのだ。終わりが訪れる前に

いい思い出は作りたい!


「・・・ふ、ふん!お兄さん

女の子と二人でデートが

そんなに楽しみだったのですか」


頬が赤らめた真奈のトゲがある

言葉に笑顔で答える。


「そうだよ。正直に言えば

舞い上がっている」


二人の迷いを断つなら

俺が断たないといけない!


「え?はぁ!?ど、どうしたのよ急にそんなこと言って!」


「今はデート。楽しまない方が

おかしいでしょう」


「そ、そうだけど・・・

あー!支離滅裂なんだけど!?」


空いた手で髪を乱暴にかく真奈。

自分でもそう思うよ。


「いつも、恋で悩んでばかりで

せめてデートぐらいは存分に

羽目をはずさないか真奈」


俺は、真奈の握る手を少し強くした。華奢な手なので力をわずかに

痛くないよう慎重に。


「ひゃあぁ!?お、お兄さん

・・・本当にどうしたの?

なんだか、恥ずかしいよ」


強気だった真奈の態度は反転。

目を潤ませ上目遣いで

戸惑っていた。そんな反応だと

俺も気恥ずかしいが、止まらず

突き進むのみ!


「だからデートだよ。貴重な時間はいつか終わりがくる。

だからこそ、お互いにいい

思い出になれるデートを・・・

したいんだ」


この俺の行動力は冬雅の告白に影響が大きいと今になって思う。

百折不撓ひゃくせつふとうは何度でも諦めず挑むこと・・・

冬雅に影響を受け俺の心にも

変化があった。


俺は、刹那の迷いなく真奈の目をまっすぐ向け伝えよう。


「俺は真奈にかけがえのない

思い出を作りたいんだ。

だから、告白する気持ちで

デートをする!」


「・・・お兄さん。

その、ワタシも・・・デートを

楽しみにしていたよ」


真奈は、うつむいていたが

握る手を恋人繋ぎにした。

何度も毎日としている事だけど

慣れない!頬が熱くって赤く

見えていることだろう。

横断歩道の信号が赤いに止まって

後ろにいる冬雅へ向く。


「冬雅、いつも眩しいその明るい笑顔が好きだよ」


「・・・・・・」


冬雅は、俺の言葉に口を開けて

ひどく驚いていた。

周囲は、何を言っているんだ

身の程を知れ!などの視線を

集めさせた。

冬雅は、しばらく空いた口を塞がられずに硬直にいたが

肩をビクッと揺れ動き意識を

取り戻した。


「お兄ちゃん・・・さき、

わたしを好きだって言いません

でした?」


「笑顔が好きだって言ったね」


いつも、その笑顔に元気を与えられて前を少し向けるように

なった。嘘偽りのない言葉に

冬雅は頬を焦がすほど赤くなる。

涙腺から水滴が・・・涙が

頬に伝って地面の下に落ちる。


「お兄ちゃん大好き・・・

わたし大好きです!

お兄ちゃんに負けないぐらいに

笑うお兄ちゃんが大好きです!」


信号を待つ人達は戸惑う。

妹のスキンシップ?と疑問符を

浮かべていた。

まぁ、そんなことよりも冬雅が

いつも以上に大好きを連呼して

くる。無邪気に、満面な笑みで

はしゃぎ告白して。


「ふ、冬雅えーと嬉しいのだけど少し落ち着いて」


「羽目を外すって言ったの

お兄ちゃんだよ。

わたし、いっぱいデートする」


冬雅は、そう言うやいなや

空いた腕を密着としてきた。

控えめな胸に当たって、わぁー!!と叫びそうになる衝動を

抑えて平常心を作る。


「冬雅さん、その距離が・・・」


「デートだよお兄ちゃん。

このぐらい距離は当たり前だよ。

えへへ、相思相愛」


追加攻撃の腕を冬雅は顔で

スリスリと動物のような行動を

そう頬擦り。やり過ぎでは!?


「・・・お兄さん!

ワタシにもドキッとして!!」


恋人繋ぎだった絡める

指に力を入れる真奈。

しっかり握れば温度も感じて

柔らかい手だなぁと不覚にも刹那な感情に、そう

思ってしまったのだ。

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