第91話芸術の秋は、爆発だ!その2

翌日の土曜。3人で美術館に行くことに決まった。冬雅は隣なのと必ず朝に

一緒ことで、朝食を済ませると

待ち合わせ場所に向かう。


真奈よりも早く、2時間前に家を出たのだが・・・・・人が多すぎて

滅入る。冬雅はデート(本人がそう言っているだけでデートじゃない!)に

オシャレにやぶさかではない美少女。そう!吝かではない―――

努力を惜しまない。


ピンクのロングワンピース。

裾が長いスカートにフリルに冬雅の

可憐さを際立たせている。


そして、元々がサファイア、ルビー

以上に輝く美貌の冬雅が周囲から

憧憬の眼差しを一身に集まるのは

仕方ない。俺でも眩しく思うほど

だからなぁ。


「えへへ、お兄ちゃんとデート!

デート。秋でデートなんて夢みたい」


電車に揺れながら腕に抱きつく冬雅。

普段は、ここまでしないのだが

舞い上がり過ぎてこうなった。

きっと、現世うつしよ幽世かくりよか混同しているの

だろう。憶測なので穴はあるが

確信的を持てる。


「冬雅さん、電車の中だからって

近くありませんか?」


「ううん、気のせいだよ。

いつものことじゃないお兄ちゃん」


「そうだけど、積極的アクティブだと後悔とか恥ずかしさが後々に堤防が決壊した奔流のごとく

感情が襲われるじゃないですか?」


「いいよ、別に。今が幸せだし

後から強いドキドキもあるとしたら

歓迎だよ!」


いえ、すごく大人しくなる未来が

見えるよ。その猪突猛進すぎる

行動の原理が俺に対する想いなので

憧憬に思えると同時に危うく思う。

真奈と合流地点に着いたかもちろん

早く来たのでいない。

一人の真奈を待たせないと俺が

判断して。


「お、お兄ちゃん・・・着いたねぇ」


「だね。冬雅どう?ここで喋って

時間を潰すのは?」


「・・・が、頑張ります!!」


場所は、真奈をいつも送るときに

降り外に出てすぐのベンチにした。

立ったまま冬雅と手を繋ぎ待つ。

なのだが車内でのアクティブな行動に

羞恥に悶え大人しくなる。


「えーと、じゃあ紅葉が咲いて

秋だなって実感させられるよね」


「は、はい秋ですねぇ」


チラチラと上目遣いといつもの明るい声の高さ半分。


「こうしていると、落ち着くよね」


「わ、わたしはドキドキしっぱなし

ですけど、なんとなく分かります」


「少しバカみたいな話をするけど

誰かと待ち合わせ場所を待つのって

実は懐かしいんだ。それは最後が

いつかだったか忘れるほどにね」


「そうなのですか」


冬雅はそれだけ言ってくれると

嬉しい。下手に驚きや同情されるよりも淡々と答えてくれるのは。


「それにだよ。休日に美術館を

行くのも初めてなんだ。

今からわくわくしているよ」


「それは・・・よかったです」


言葉数が少ないと、なんだか足が浮く

感じだ。これは、恥ずかしいや好き

以外にも悩んでいるのでは。


「冬雅・・・えーと」


いざ、質問ストレートして良いものか躊躇ちゅうちょした。遠回しでもつたえれる自信がない。


「なにか悩み事があるなら

話だけでも聞かせてくれないか?」


「っ―――!?だめ・・・だよ」


そうだけ言って再び沈黙する。

悩み事を否定しないならあることか。

そしていつも俺に相談する冬雅が

しないのは?


「冬雅・・・正直に言うけど」


俺が言うのは別のこと。あの時を

思い出そうと上を仰ぎ見ると

雲が無い群青色の天井な快晴。


「冬雅が告白して今年の秋には

冷めると思った」


「・・・・・えっ?その・・・わたしがですかお兄ちゃん?」


目を見開き驚愕を隠せない姿に

相変わらず表情がすぐに出るなぁと

思う。俺も人のことは言えないが。


「ああ、恋なんていつかは冷める。

どんな、人でも神であっても夢幻の如く消えていく想いだと、

そう信じて絶望していた。

でも、冬雅が告白を・・・毎日としていて大きく変わった」


「大きく変わったですか・・・

えへへ、お兄ちゃんに影響を

良い方向にですか?」


「もちろんだよ。夢と希望を

再び抱くことができた」


そう、現実には眩しいほどリア充と

恨めしくなるような恋に期待して

いなかった。まさか、純愛があるのだと冬雅に告白で知ることになるとは

思わなかった・・・いや、最初の

告白からすでに――――たとすれば

本当に眩しくて尊い想いだ。


「お兄ちゃん・・・好きです。

成長して優しくて強くなっていく

お兄ちゃんが大好き。

それに嬉しくさせてくれることも

・・・大だぁぁい好きです!!」


冬雅は、右手を両手で祈るような形で握ると胸の前に大事そうに抱く。

目は瞑り愛おしそうにする。

俺は・・・冬雅を好きじゃないのに

ドキッとした。


「冬雅ありがとう・・・そろそろ

離してもいいかな」


「お兄ちゃんが本当に望むなら」


そうだよ・・・咄嗟に言えなかった。

なにかがおかしい。俺の中で

気づかずに好きになっているとでも

言うのか?いや、断じて違うはず。

逡巡しゅんじゅしたのは戸惑ったに過ぎないはず。


「お兄さん・・・な、なにを

しているのですか!?」


真奈の声が背後から聞こえ振り返ると

顔を一面と染まり口をパクパクしていた。その後、真奈は俺と冬雅は

不純すぎると説教された。

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