第75話わたし文化祭は去年と同じく退屈です

文化祭の当日。

わたしはメイド服で

催しのメイド喫茶店に似せた教室で

お客さんに接客をしていた。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「は、はい!」


わたしの笑顔は多くの人を

魅了させる。とくな一目惚が最も

多く見られると、

一応わたしはそう認識している。

いえ嫌でも実感させられるのが

適切かな。


「ご案内します」


お客さんは他校の高校生で去年すごい

可愛いのがいるとSNSなどで

噂が広まり今年は他校の

高校生も多い。と休み中に

真奈が教えてくれた。


「ご注文はこちらのメニュー表に。

何にいたしますかご主人様」


「う〜ん、そうだね。

おいしくなれコーヒーで」


「かしこまりました」


(お兄ちゃん来ないし席が埋まって

去っても長蛇の列から新しく来る

・・・猫の手も借りたい気分だし

すこぶる憂鬱ゆううつだよ!)


最早、学校行事のメイド喫茶店レベル

じゃないよ。普通にメイド喫茶店と

同等の大変さだね。

メイド喫茶店でパイトしていないから

知らないけど。


「ご主人様に珈琲コーヒーを一つお願いします」


「かしこまりました!」


本格的なメニューはどうしても出来ず

ダージリンとホットサンドのみ。

ガスコンロなどは危ないことで

教諭陣に却下された。

もう高校生なのだけど・・・ねぇ。


わたしは奥に勤しむ執事衣装の

男子高校生に注文を伝える。


「コーヒーを入れました!」


少ししてから、

コーヒーメーカーで淹れただけの

珈琲を教諭が使う教卓の上に置く。

わたし達ははそれをトレイにせてご主人様にまで運ぶ。


「お待たせしました」


「あ、ありがとう・・・」


美味しくなれコーヒーは、

もちろんまじないをかけることです。


「それでは、おまじないをしますね。

美味しくなれ、キュンキュン!

さあ、どうぞお召になさてください」


「「おぉぉーー!!」」


他のお客さん達がわたしの姿を見て

歓喜の声を上げる。

さ、さすがに恥ずかしい・・・

何度もされると、とくに。

頼んだお客さんは、うっとりと

見とれていた。


わたしは、教壇の前まで来て

待機するのだけど視線をかなり

感じる。お兄ちゃんや真奈がよく見る

アニメやラノベではヒロインは

その視線を知らずにまたは気づかずに

いるけど、リアルはとっても不可能なほど気づきやすい。


「冬雅お疲れ」


「お疲れ様です冬雅さん」


「うん、お疲れ真奈と茜。

二人もお疲れだね。あはは」


主に接客は、わたしと真奈と茜の

三人。他の女子はテーブルを拭いたり

皿を調理室まで持って洗いなど

接客以外が多い。一応はシフトのようなものはあるが。


「それじゃあ三好さん休んでください

!田中さんお願いします」


声の主は、飯富冷陽おぶれいようで知的なイメージの男子。


メガネをかけ成績優秀からメガネと

あだ名で呼ばれている。

あの人は料理が出来る事と

見た目に反して高い声。

田中さんが教壇の前に立ち

露骨に視線を的にされ嫌な顔から

落ち込む。えーと田中さんもかわいい

から、真奈さんが非常にかわいい

であって・・・落ち込まないで

ほしいなぁ。


「えーと、それじゃあ後は頑張って。

冬雅さん真奈さん!」


「うん。文化祭を楽しんでねぇ!」


「ワタシがいないからって

泣かないでよ茜」


「な、泣かないよ。小さい子じゃ

ないんだから!」


三好さんは、教室を出る。

制服に着替えてから物見遊山するの

でしょう。


「あの、二人ともよろしく」


田中さんは、わたし達に声を掛ける

まで三好さんが出るまで待ってくれた

ようです。


「うん、よろしくね田中さん」


「頼んだわよ田中さん!」


「は、はい。お二人に負けないよう

頑張ります」


グッと握りこぶしを肘を曲げ胸の前に

した田中さん。かわいいさを

わたし達にしなくても。

あと学校メイド喫茶レベルなので

競争みたいなことはないんだけどね。


「あ、あはは力まないでねぇ」


「はい!力まずに全身全霊で

張り切ります」


・・・うん。わたしと真奈で

面倒をみよう。なんだか危うさを

感じるから。


「・・・あっ、冬雅と田中さん

行くよ」


「うん」


「え?なにをするので―――」


「「行ってらっしゃいませ

ご主人様」」


「いってらっしゃいませ

ご主人さまぁぁ!」


お客さんが出ると真奈が省略した

セリフに田中さんが戸惑っていたので

心配していたけど、やはり

緊張で練習していた言葉が

遅れてしまった。


まぁ失敗は誰もあるので。

この言葉に接客ではない雑用係の

メイドと執事達は素早く動き

テーブルを拭き、

もう一人はお客様を呼びに

廊下へ出る。

新しいお客様が来店すると明るい

笑みを作ってキレイに頭を下げる。


「「お帰りなさいませご主人様」」


「お帰りなさいませご主人様ぁぁ!」


田中さんは、わたし達の後に

セリフと上ずった声をする。

頭を上げお客さんは、初老の夫婦ようです。働いている生徒の両親だと

思われる。


初老の夫婦は温かい笑みで、

「あまり無理しないでなぁ」

「落ち着いてね」と

田中さんにエールを送る。

応援のセリフを終えたところで

真奈は田中さんの隣に立つ。


「それでは、ご案内をします。

田中さんもついて来て」


「う、うん」


どうやら真奈は、慣れない田中さんを

連れ仕事の空気を慣れさせようと

荒療治をするようですねぇ。

さり気ない優しさは真奈の美点だね。


それから真奈のおかげでお客さんに

慣れてきた田中さんは、

お帰りなさいませご主人様を

同じタイミングで言えるように

なった。


「よし、そろそろ峰島みねしまさんの交代の時間だ。羽柴はしばさんを呼んでくれないか?」


指示をする飯富さんは、お客さんに

視線をチラッと向けると硬直した。

なにかな?と気になり視線をたどると

田中さんを優しく応援した

初老の夫婦でした。


二人も硬直状態の飯富さんに気づき

席を立ち近づく。


冷陽れいようこんな所にいたのか!ここで命令をしているのか?

ん、どうなんだ?」


「ふふ、確かキレイな子が多かった

けど冷陽が好きな子がいるのよね」


どうやらご両親のようです。

クラスの頭脳と謳われる男の子は

両親に指を向ける。


「なんで、オヤジとオカンが

ここにいるんだよ!

今日は絶対に来るなぁ!って

あれだけ言っただろ」


「なにを言っているんだね冷陽。

お前の名前の由来は、太陽が少し

冷たくなった熱さのような男にしようと決めたんだぞ!」


「わあぁー!?おいやめろオヤジ」


・・・あ、あれ?教室では冷静沈着で

メガネキャラと有名な飯富さんが、

人が変わったように

口調がいつもと違うよ。

体育会系と言うのか普通というのか。


「・・・以外だね」


真奈の呟いた言葉にわたしは心で

肯定しました。

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