第74話シークレットデンジョン

冬雅の家で美少女の冬雅達はメイドの

格好で明るく出迎えてから翌日。


(・・・朝か)


夢かうつつではっきりとしない思考は、窓越しから

射し込む陽の強さとスズメのさえずりにゆっくり意識が覚醒する。


「んっ―――んん!」


両腕を垂直に伸ばして鈍ったような

体をスキッリさせる。


「おはようございますお兄ちゃん!」


カーテンを昼夜ずっと開けている

窓を向けると妹ではないけど

すっかり妹のように

可愛く思えるようになった冬雅だ。

ベランダにいる冬雅は

手を左右に上げて振る。


「ああ、おはよう冬雅。

昨日はありがとう。そして明日は

文化祭を楽しんでね」


「う、うん。ありがとうお兄ちゃん。

楽しだよ・・・あはは」


誰でも分かりそうな下手な取り繕った笑みで答える。

文化祭が嫌いというものではなく

俺が行かないことに落ち込んでいるのだろう。何度も思うが大人と未成年が

いるのは社会的に完全にアウトだ。


「文化祭は行かないけど冬雅が

楽しむといいよ」


「はい。お兄ちゃんがわたしと――」


「・・・よし、冬雅のお弁当と

朝食を作るのでいつもの時間に」


「は、はい」


言葉が出そうででない冬雅に準備を

優しく促すと、複雑そうな表情と

声音だった。


もしかして・・・

心理学用語のTOT現象また舌先現象。

簡単に言えば喉から出かかっているのに言葉にして途切れる。

思い出せないのが主な原因だと考えに至ったが刹那のごとく脳によぎり

違うと思う。誘うのに躊躇ている。


(冬雅・・・わるいけど

淫行や援助交際なんて思われたら

学校生活が苦しくなるんだ。

だから、聞き受けないんだ)


2階から一階にある洗面所で顔や手だけ洗い終え、すぐに料理しないと

いけない。


そういえば、文化祭だから学校で

食事を楽しむこともある。

お弁当は、必要はあるかな・・・

一応、確認しよう。


二階の俺の部屋に入ってスマホを

ラインアイコンを押し

素早くトーク画面と用件を送り

ポケット入れて朝食の準備に戻る。


ラインの着信音と振動が起きる。


『はい!ぜひ愛する人のお弁当を

すごく欲しいです』


「・・・そうか」


トーク画面にある文字だけで冬雅を

見れるわけではないけど

飛び跳ねっているような気がする。

スマホのトークを終了して

料理を作りにいく。


しばらくして来客を報せる音が響き

玄関に向かいドアを開く。


「えへへ、お兄ちゃん大好きです」


動物パジャマから制服姿の冬雅が

満面な笑みと頬には少し赤らめて

向ける。日課としている告白である。


「ありがとう冬雅」


その大事な言葉に曖昧な答えになる

お礼をいつも口にすると雑な対処の

ようで心苦しくなる。


「うん、こちらこそありがとう

お兄ちゃん」


「どういたしましてかな?

朝食は出来ているよ。

一階に食べよう冬雅」


「はい!」


靴を丁寧に揃えてから上がり、

居間について来る。

テーブルに着く、もちろん向かいで。

今日の朝食メニューは

食欲が増す香りを漂う焼き魚。

それとご飯、カボチャの味噌汁。


「お兄ちゃん昨日はわたし幸せ

でした。メイド衣装でお兄ちゃんの

お嫁さん候補の真奈を

ドキドキしていましたからねぇ」


「そうだね。昨日は疲れたなぁ

・・・え、お嫁さん候補!?」


「はい、お兄ちゃんの義弟さんが

冗談を混じりで言った言葉に

言ったあれですねぇ。

あのお嫁さん候補って素敵で

魅力的です・・・えへへ」


饒舌じょうぜつに答える冬雅に

は俺も癒やされている。

信頼と愛情を隠さずに表れていた。

平らげたとあと,お弁当を受け取る

あいふ弁当だと近畿雀躍きんきじゃくやくな反応していた。



「それでは行ってきます!」

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