第73話メイドシスター2

真奈に注文を頼み終えると、

メイド服のミニスカート

左右の裾を軽く上げて頭を下げる。

アニメや漫画などでよく見るそれは

カーテシー。

女子高校生が真似ってやったレベルとは思えない完成度だった。


「ふふ、どうだった東洋とうようお兄さん?ワタシが本気を

出せばこれぐらいできるのよ」


優美な姿からいつもの真奈に戻り

胸を張りどうだったか尋ねられた。


「ああ、素晴らしいかたよ真奈。

正直に言うと興奮しているよ!」


口調や雰囲気も動き、オタクが

イメージするメイド像を非の打ち所がない完璧な振る舞いであった。

感動も頂点に達してメイドとしての

完成度に高揚感を覚えるほど。


「こ、興奮・・・お兄さんその

ワタシ。恥ずかしいけど嬉しい」


何故か真奈は、赤らめてもじもじと

していた。余程に嬉しくて戸惑っているのかな?なにかこの推測が

間違っていないだろうか?


「おめでとう真奈。お兄ちゃんに

褒めてもらうために頑張った

甲斐があったねぇ」


「うん、ありがとう冬雅。

帰った後に本を読んで練習して

よかった。・・・って、ちがう!

ワタシは、悪魔で明日の文化祭に

予習練習していただけで勘違いしないでよお兄さん!」


「あ、ああ・・・勘違いしないよ。

だから落ち着こう真奈」


真奈が感情を高ぶり暴走を起こし

どうにかなだめようとするが

早口でまくし立てる真奈。


「お兄ちゃんと真奈が邪魔に

ならないようにわたしは去りますね」


「えっ、冬雅?」


俺の言葉には冬雅は

カーテシーで答える冬雅。後ろ姿を見ていると台所だった。

去ると言っても遮る壁など無い。


それにしても冬雅があんなことを

言うなんて・・・いつもは、邪魔だと

分かっても謝ってでも俺から離れようとしないのに・・・自意識過剰かも

しれないなぁ。

固定概念になるのは良くない。


「・・・お兄さんその冬雅なんですけどワタシに気をよく使うんですよ」


ち、近い。顔を近づき声を囁くように

言う真奈は、うれを帯びた顔で大事な言葉だと言った言葉を

反芻はんすうする。


「もしかして、冬雅が恋慕よりも

親友の真奈に協力的になっている?」


「そ、そうです。

恥ずかしいことを平気でこの人は!

・・・・・コホン。

冬雅はお兄さんを大好きな

くせにワタシを応援する。

だから、お兄さんは冬雅とデート

して恋人になってください」


「・・・真奈それは」


君が本当に望んでいるのか。

恥ずかしいメイド服を着て、

一朝一夕では取得できない完璧な

カーテシーなどさり気ない姿勢も。

あれだけ努力して前に悲しそうに

告白と笑って告白もした。


(だけど、俺が否定していいのか。

真奈が引こうとしているのだ。

そもそも俺の目的は俺の事を

恋慕を冷めさせて本来あるべき

明るい場所に行くのがいい)


そう頭では理解しているけど

二人の想いをあれだけ受けて、

それでいいのだろうか。


真奈を自分の恋を諦めないでほしいと

俺は、言えばいいのか。

否だ!絶対に幸せにできるとは

思えない。ただの小説志望で失業した

ニートなんかが。


「私は―――俺は二人のように

好きというのを知らない。だから

何を言ってもきっと偽善ぎぜんにしかならないけど、

告白の返事は君たちが成人した時に

答えを見つける」


真奈は俺の答えに目を丸くする。

しばらく俺を見つめてから右手を

両手で包むように握り俺と真奈の

視線の間に上げた。


「お兄さんズルいですよ・・・・・

そんなこと言われてたらワタシが

諦めたくない気持ちになる」


「ごめん。口下手だから」


「そうだよ。でも、ワタシは

琴線に触れたことにしゃくなんだよ!・・・お兄さん大好き」


「・・・ありがとう真奈」


告白の返事に俺は好きと軽々しく

言えない。真奈が真剣な想いに流れて偽りだけの綺麗事なんて失礼の極み。

だから今はお礼しかできない。

いつかは、真奈か冬雅を好きになる

日がくるまでは。


「ハヮァーー」


緩みきた声を発する三好さんが

こちらを憧憬の眼差し向けていた。


「わぁー!?えーとご主人様

失礼いたします」


「あ、ああ」


真奈は、廊下に繋がるドアを開けて

バタンと閉める。

友達に今の一連を見られて恥ずかしさで堪えなくなったのだろう。

見られた俺も恥ずかしいし。

三好さん振り返り微笑を浮かべる。


「冬雅のお兄さん。あの・・・

真奈は俗に言うツンデレですけど

本当は優しくて素敵な女の子です。

幸せにしてください!」


上体を45度を曲げて手本となる

頭の下げ方をする。


「三好さん・・・はい。善処します」


十秒以上も下げられると、とても

勘違いとか否定の言葉が出来ずに

首を振るしかなかった。肯定で。


「お兄ちゃんお待たせしました。

わたしが作った秋ですので旬の

食材を使った料理なんです!

・・・えーと、なにかありました?」


冬雅が、トレイを持ってこちらに

来たのだが頭を下げている

三好さんの姿に首を傾げて尋ねた。


「冬雅さんが来ましたので

ご主人様を頼みました」


「えっ!?う、うん・・・」


三好さんが、真奈を追いかけ廊下に

行き何の説明もなく任された冬雅は

戸惑いながらもテーブルに

作った料理を並べて置く。


「お兄ちゃんご主人様

お待たせしました。

あじの焼きびたしに

サツマイモとニンジン、大根を入れた

味噌汁と白米です」


定食屋のメニューみたいなの出てきた

けどメイド喫茶ってそんなの

あったかな?

リアルでは1度も来店ないから

知らないけどきっと、あるはずだ。


「メイド喫茶店のようにした空間に

ギャップすごいけど、個人的には

魚料理は好きだから嬉しい。

それに、掛け軸もあるのも最初から

ギャップを狙って?」


「ううん、カッコいいから、

かけているだけ。

お兄ちゃんご主人様は不満だった?」


「そんなことない。

おもむきが出ていて気に入っているよ。でも、不満があるとすれば冬雅、少しネガティブだよ」


「ネガティブ・・・ですか?」


反論されたことかネガティブに

思われたこと。その両方か冬雅は

目を瞬き驚いていた。


「俺は冬雅の笑顔で明るく

なれたんだ。いきなりは無理だけど

明るくなってほしいと思う」


「お兄ちゃん・・・うん!」


冬雅の満面な笑みは眩しいほどに

輝いて美しい。

それにしてもこの料理はインスタントではないだろう。そういえば台所で 包丁で何かを斬る動きは見えた。


まさか、冬雅が俺のために作ってくれ

たことに小躍りしそうになるほど

嬉しく思う。

手を合わせていただきます!と

食事前にする挨拶を唱えてから箸を

持ちまずは味噌汁を飲む。


「・・・美味しい」


「えへへ、照れますねぇ」


冬雅の気持ちはよく分かる。

作った料理を美味しいと言われると

嬉しい反面、恥ずかしいのだ。

次は魚を口に運び、すぐにご飯を

口に入れて一緒に味わう。

味覚を感じる舌の味蕾みらい

幸せな味を起こす。

すごく美味しいと言えば冬場は

嬉しそうに笑って答えてくれた。


「でも、落ち着かないなぁ」


「落ち着かないなら、わたし

なんでもしますよ!

お兄ちゃんご主人様」


やる気に満ち溢れる冬雅に

俺は遠慮なく、さき言った言葉を

利用することにした。


「なんでもか、それなら冬雅に

命令をさせてもらうよ」


「命令?お兄ちゃんご主人様なにを」


「なんでもやると言質がある。

絶対遵守してもらう」


「そ、その・・・頑張ります!」


「その意気込みはよし!

向かいに座って一緒に食事しよう!」


「はい!お兄ちゃんご主人様・・・

・・・・・・・・はい?」


冬雅はポカンと口を大きく開いて

首を傾げた。

少し冗談を言いたくなり

間際らしい言葉をしたのが原因

だろう。でも一緒に食事したいのは

本当だ。ずっと立たれて食べ終えるまでは、落ち着かない。


「せっかく冬雅といるのに

一緒に食事の方が美味しいし、

楽しい以上に思っているけど

駄目かな?」


逆に俺が不安になる番だ。

まさか、冬雅と一緒に食事したいなんて普通に恥ずかしい。

十歳も下のJKに誘うのは難しい。


「・・・そ、その嬉しいです。

い、今すぐにわたしの分を持って

来ますので!」


「っ!?慌てないようにねぇ」


冬雅の幸せそうな笑顔に俺は

心が暖かくなる。

冬雅は、コッペパンを持って向かいに

座って一緒に食事する。

いくつか言葉が出ているが、

一言で表すなら幸せ。

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