第65話冬雅の一日哀しみと慟哭篇

「そ、その・・・眩しい笑顔が

好きです!どうか

付き合ってくれまれんか?」


「ごめんなさい」


わたし峰島冬雅みねしまふゆかの放課後とは

歓喜と罪悪感な気持ちになる。

歓喜するのはお兄ちゃんと会える時間がもう迫っていること。

2つ目の罪悪感は、高い頻度で

唐突に告白されること。


そうです、わたしは昇降口で

告白されました。

もちろん丁重に断ります。


「ど、どうしてですか?

自分でいうのも自画自賛で恥ずかしいのですが、イケメンで成績優秀な

テニスで全国大会にも行った

僕を・・・付き合った女性は

下から6歳から28歳まで付き合った

この僕が!?」


甘い顔から納得していないと困惑に

なり、目を大きく開いて驚愕。

6才って・・・犯罪じゃあ・・・・・

うん、思ったよりも危ない人かも。


その前に告白したなら

全員と別れて告白かな?

それとも本命とか、遊びとか??

ツッコミたいことは、色々とあるけど

深く考えないことにしよう。


「告白してくれて、ありがとう。

きっと素敵な彼女さんが

見つかると思うよ!」


勇気を持ち告白して断れるのは

悲しい・・・わたしも経験者だから。

友人の真奈と茜は苦笑して

待ってくれた。


わたしが告白されるのは、

ほぼ毎日なので通り過ぎる人も

慣れていて、またか!と

ちょっとした日常光景になっている。

靴を履き変えようと進む。


「ま、待ってほしい!

付き合えないのは、噂されている

好きな相手の事か?

もし、うまく行かずに振られたら

その時こそ僕と!」


後ろから突撃告白を敢行した

名前の知らない人がめげずにそう

声高に言いました。


しつこいとは不思議と一片もない

巧みな言葉と場面。これを持って

モテたのでしょう。

その言葉にわたしは、誠意を持って

振り返り返事をする。


「ううん。断れてもわたしは

あの人がわたしを好きになるまで

諦めない」


生まれて初めて告白をして断われ

身を引き裂かれる思いだった。


「だ、だけど!断れても・・・なんて

現実的に無理じゃないか。

過度な愛情は、嫌悪される」


あの人の言葉に重い気持ちが込められている。多く付き合った発言していた

けど、その経験と考えに至った

理論でしょう。・・・けど

わたしにも理論というより

信念はある。


「うん、きっとやり過ぎると

嫌われるよね。

最終的には、あの人が幸せなら

わたし以外の人に選んでもいいと

思っている・・・」


お兄ちゃんに相談や世間話でも

しなかったら、自殺していた。

それぐらいにわたしは孤立無援だと

自分自身で追い詰めていた。


わたしの悩みを嘲笑や否定、逸らす

ことなく一緒に悩んで苦しんで

脱しようと調べてくれた。

優しさと生き様だろうか、そんな

姿を見て好きになった。


恩があって、お兄ちゃんはどこか

恋愛を恐れて見ていない。


「ねぇ・・・わたしはあなたを

よく知らない。

きっとあなたもわたしを知らない。

それで、本当に好きになれないと

思うの・・・ごめんね、苦しいのに。

好きな人が幸せを願える・・・

隣にわたしがいなくても、

それがわたしの―――――」


「冬雅!!」


遮ったのは親友の真奈だった。

苦しそうに顔を歪めて、わたしを

見続けている。


「そんなの・・・尊いよ!

でも、冬雅はそんな気持ちで

毎日・・・ずっと、ずっっっとぉぉ

告白していたの?」


「真奈・・・そんなことないと

断言出来ない。

どこかで、わたしはハッキリと

諦観を欲しかったのかも・・・あれ」


どうして?わたし自分の恋を

諦めるためにお兄ちゃんに告白を

していたの・・・分からない。


分からない、分からない、わからない

解らない、解らない、わからない、

わからない、ワカラナイ、分からない

分からない、解らない、分からない。


気づけば床が水滴が落ちている。

流れているのは、涙だと・・・

自分が泣いていると気づく。


「・・・冬雅さん。

真奈さんいったい何が?」


「茜その、強すぎる恋慕が暴走

していると思う・・・冬雅は。

感情が分からずにいる状態なの!」


「そ、そうなのですか。

私も励ましたほうがいい?」


「ううん、ワタシじゃないと

ガラスのような心を砕かないために

同じ気持ちのワタシが・・・

整理させないといけない」


整理?それに、わたしはガラスのような心じゃない。毎日とお兄ちゃん

告白しているのに強いんだよ。


「ぼ、僕はそろそろ行くよ!」


告白した名前の知らない相手は

それだけ言って来た道へ

教室に続く廊下へ走り去った。

周りの人は、集まって注目していた。


「知らなかったよ冬雅・・・

諦観なんて思っていたなんて」


顔を上げると真奈は、優しい表情を

浮かべてゆっくりと歩き近づく。


「こ、来ないで・・・真奈なら

お兄ちゃんと話が合って

意気投合できてお似合いだよ!」


嫉妬していない。わたしは好きに

なってもお兄ちゃんに束縛させたく

ない。告白して明るくなる

お兄ちゃんを・・・。


「ねぇ、冬雅。

ワタシはお兄さんに相応しくない。

冬雅のように初恋なのに

そこまでなれていない。

苦しいけど本当に好きなのか

分からない」


「えつ?」


涙が溢れて視界がおぼろ気に

なっている。溜まった涙を手で拭うと

真奈の白皙はくせきな頬を

涙が落ちていた。


「だって、そうじゃない。

ワタシは、お兄さんが好きでも

大好きじゃない!」


「ち、ちがうよ。

真奈だってお兄ちゃんの

事を大好きだよ。

そうじゃないと、苦しんで泣いて

いないよね真奈」


「ちがう・・・違う、違う!

大好きなんて・・・・・うっぅぅ」


真奈は昇降口で膝を地面につける。


「否定しないで・・・真奈は・・・

大好きだって気付いて!!」


手が届く距離。

生まれたての小鹿のような足取りで

真奈に向かう・・・ゆっくりと

しゃがむ。

そして、わたしは腕を広げてハグ。


「うぅぅ・・・ふ・・ゆ・か?」


「わたしも・・・もう分からないよ。

お兄ちゃんの事を諦めていたなんて

知らなかった。

断れたことがショックだったよ。

わあぁぁぁぁぁーーーー!!」


吐露して分かった。深層意識にあった

想いを見たような気持ちだ。

わたしは、お兄ちゃんのために

告白をしていた。

玉砕覚悟で告白を続けていた。

わたしは、泣いて叫び続けた。


「どうして、峰島が泣いて?」


「平野さんあんなに泣くなんて。

クールなイメージだったけど」


「解決したのかな?」


「お前ら、ここで何を知っている?

んっ、どうして号泣しているんだ」


生徒が集まった人垣の中から

メガネを掛けたおじさんの教諭が

やって来て顔を驚いてから訝しむ。

ど、どうしよう。事情を説明できる

余裕なんてないと絶望していると

茜が前に出て、まるで庇うみたいに。


「先生!しばらくは、そっと

してくれませんか?

冬雅さんも真奈さんも苦しんで

います。場所を変えますので」


「ぬっ、そうか。ならいいが」


思う存分に泣いてから、わたしと

真奈は校庭の木々が茂る

場所へ移動した。

部活の応援や怒号などの喧騒が

落ち着く。


「冬雅さん、真奈さん。

落ち着きましたか?」


冷静で微笑を浮かべる茜が優しさを

込めて言った。


「うん、ありがとう茜」


「うっ!?いつもよりも

直視できない笑顔!!」


わたしは、素直な笑みでお礼をしたけど眩しそうに腕で防ごうとする。

えぇーー!さすがに笑顔で眩しい

なんて、無いよね。

ただの比喩だよね!


「冬雅・・・先は取り乱してごめん。

ワタシも抑えきれなかった」


「いいよ真奈。でも珍しいよね

真奈が、そこまでお兄ちゃんに

愛していたなんて」


純心でかわいいかった真奈。

やっぱり真奈ならお兄ちゃんに

相応しいと核心できました。


「・・・冬雅また、自己犠牲とか

考えていない」


「う、ううん。そんなことないよ。

・・・ たぶん」


「目が動揺を隠せていない!?

冬雅いい、塾が終わったらすぐに

東洋お兄さんに直進で行くから。

そこで、本気の告白するのよ」


「む、無理だよ真奈ぁぁぁ。

だったら真奈もお兄ちゃんに

大好きって一言だけでも告白してよ」


「そそ、そんなこと・・・

出来ないわよ。

もう二度と出来ないから!」


こうして、ケンカしても解決しない。

真奈は、わたしに本気の告白するように口うるさく言ってくる。

それなら、想いを隠している真奈も

告白しないと不誠実。

静観をしていた茜が申し訳なさそうに

間に入ってわたしと真奈の順で

機嫌を伺うように見る。


「・・・と、とりあえず

二人とも塾に行きましょう!」


そ、そうでした。大事な話ですが

受講料を払っているママとパパのために疎かにするわけにはいかないので

議論は保留にして歩いて向かいます。

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