第45話サマー休暇は、夏が終わるよりも早い

翌日いつもと変わらぬ日が登り

一日の始まりを報せる。


いつもと変わらない・・・

しかし憂鬱な心は、鳥のさえずりや陽の明るさが別のように見える。


(冬雅が、挨拶ないか・・・

昨日あれだけ泣いていたなぁ)


真奈が、走って出て行った後は

号泣していた。ここまで、泣いたのは

俺が最初に告白を断ったのよう。


心配になり、ベッドから立ち上がり

冬雅のベランダの先、つまり部屋を

見ると、机に座って勉強していた。


「冬雅おはよう」


「えっ?お、お兄ちゃん!?

おはよう。今日も・・・いい天気

ですよね?」


慌てて立ち上がる冬雅。


(冬雅もか。

どうして人間って

落ち込んでいると朝がこうも

変わるのか。

同じだと分かっても、違うんだ?)


なんと言えばいいのか、不可視的な

闇が漂っているよな、そんな

まやかしにあるのだと思えてしまう。


「冬雅、朝食を作っているから

ゆっくり・・・どうして制服を?」


「夏休み終わって今日が

登校日なんですよお兄ちゃん」


そうなのか。ゆとり世代での夏休みは

8月末まであったけど、言われて

みればニュースで学力向上のため

夏季休暇を減らしたとあったなぁ。


ゆとり世代は○○○ってよく

言われバカにされたが、

その前の世代では学力できる人と

出来ない人。


主に出来ない人は

勉強をせず不良化になる傾向が多い。

そのため、犯罪を増える。


詰め込み教育など緩和し学びやすく

した教育制度がゆとり教育。


しかし、PISAピサまた国際学習到達度調査と呼ばれる。

(PISAは、programmeプログラムForファーinternationalインターナショナルstudantスチューデントassessmentアクセメントの略称)

加盟国の国際学力のこと。


3年ごとに実施。対象は15歳児。

行うのは読解力、数学的や科学的の

リテラシー。


ゆとり世代から、その国際学力が

落ちたと危惧したのだが、

前とは違い加盟国の参加が増えた。


つまりは、参加が増えたから成績が

落ちたと勘違いしたのだ。

ゆとり世代とバカにされたら

知らないんだと思った。


「お兄ちゃん・・・その、 わたし

真奈とは誤解を解けるように

話をしてみます!」


「ああ、でも冬雅。困ったら

いつでも私に相談してほしい」


「はい!詰まったときは、

頼らせてもらいますね」


親友の冬雅なら、真奈の誤解だったと

してくれるかもしれない。


気分を変えて朝食を作る。料理しているときは、悪い思考がしなくなる。

簡単な目玉焼き、味噌汁が出来ると

インターホン響く。もちろん冬雅。


「今日も、わたしはお兄ちゃんが

・・・す、好きです」


という、制服姿で恥ずかしそうに

課題にしている告白をする。


これ、どう応えれば正解が

分からなくなる。

どれだけ誠実に

込めても冬雅の想いに対して

正解じゃないと思う。


「冬雅・・・ありがとう」


結局は、こんな言葉しか言えない。

冬雅は、えへへっと笑ってくれた。

冬雅に家を上がらせ一緒に

朝食を食べる。


告白しても、冬雅は暗かった。

やはり・・・真奈のことが。


「お兄ちゃん、わたし悲しいです」


「・・・ああ」


「また、お兄ちゃんと居られる

時間が減らされるのが」


(そっちかあぁぁぁぁぁーー!!)


「そ、そうなのか・・・」


「はっ!名案を思いつきました。

わたしがお兄ちゃんを執事として

従事していると言えば学校も

一緒に・・・いられる!」


「ふゆかぁぁーーー、名案じゃない。

迷案だよそれは」


「えへへ、もちろん冗談ですよ。

そこまですると、お兄ちゃんは、

小説を書くのが難しくなりますよね」


「・・・少しだけ、だけど」


「うん。夏休みは遊んでくれて

ありがとう・・・幸せでした。

まだ、季節は夏だけど」


冬雅は、話をするたびに明るく

笑顔も口角から今は白い歯を見えるほど花が咲くように笑う。


冬雅は、名残惜しいそうに

学校に行く。

8月26日の月曜日で学校なのか。

冬雅と真奈の学校は進学校。


「・・・さて、小説でも書くか」


2時間ぐらい経ってば掃除や

買い物しよう。

リビングルームに戻りPCの

キーボードを打つ。


(俺が・・・同い年だったら、

こんな事が起きなかっただろうか。

冬雅の告白に俺は毎日ドキマギされ

真奈にカードゲームやアニメで

話を盛り上げる・・・・・

二人は、俺の事が好きだ。

そして・・・肝心の俺は・・・・・)


ラインの軽快な着信音。

スマホは、リビングテーブル上。

ローテーブルの距離に少しあるので

後で読もう。


二度目の着信音。

三度目の着信音・・・気になったので

見ることにした。


「・・・真奈!?」


トークに最初の

一回目の着信音の内容。


『とうようお兄さんおはよう』


漢字変換を失敗したか億劫か。

2回目の着信音は――――


『昨日、取り乱してすみません。

渡しはもう来ません』


ワタシを渡しと間違っている。

いや、それよりも気になるのは。

3回目の着信音を書いていたのは。


『冬雅は、東洋お兄さんが

大好きです。東洋お兄さん絶対に

冬雅を悲しませないでください。

冬雅と付き合うとしても

別れるようにするにしてもです』


「・・・真奈・・・・・」


真奈それでいいのか!そう強く

問いたいと衝動感が襲う。


時間は登校。行っても迷惑だろうし

周りは女子高校生にナンパする

倫理観のない大人と見るだろう。

それに、本人が隠そうとしているのに

俺が訊くわけにはいかない。


「4回目!?」


4回目の着信音と振動。


『今まで、ありがとうございました。

東洋お兄さんと話せて

楽しかったです。ほんとうに、

東洋お兄さんも幸せになってほしい』


「・・・・・」


楽しい・・・俺を幸せになってほしい

・・・その表面上に否、画面上に

込められた意味とどんな表情して

送ったか俺は反芻はんすうする。


「真奈。別れるにしても、こんな

つまらない終わり方はしない。

させない!

冷めていないのに無理なんかして。

じゃなきゃ、昨日の怒りや悲しんだり

しない・・・・・3人。

3人で笑うんだ。

そして、恋は勘違いだって笑って

終わらせてみせる」


真奈が、身を引こうとするなら

引き戻してみせる。

俺は、そう決意すると真奈のために

PCで別の小説を書き始める。

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