第31話たとえ雨が降っても

「…今日は雨か」


平野真奈ひらのまな、ワタシの朝は早い。

いつもの時間帯で目覚めて午前4時の理由は勉強をはかどるから。


一夜漬け(徹夜での勉強)という愚行は決してしない。というか、睡眠不足で

集中力を低下状態に陥るから。

さらにテストなどの大事な日でも眠りの誘いにより実力がいつもと発揮出来ず、負のスパイラルで

水泡に帰すだろう。

起きるとカーテンの隙間すきまから日が昇り始めたばかりの

儚い陽光がない。

怪訝に思いカーテンを覗いてみればどうやら雨が原因だったのだ。心理的な余裕が

なかったのか、天気予報を見ずに

降ったことに戸惑いを覚える。


「結構、降っているなぁ…

お兄さんと会うのやめようかな」


わざわざ雨の中で家に進むのに

電車や徒歩で移動しないいけない。


(昨日、会えなかったから

今日は会えるって楽しみにしていたのに・・・はっ!も、もちろん

お兄さんじゃなくて、冬雅に

会いたいに決まっているけどね。

って、ワタシ誰に

言っているのよぉぉーー!!)


頭を抱えて、悶えるという感情を全力で振り払う。もう、

何なのよ!このドキドキは。


「・・・でも、明日には会えるよね」


豪雨のためお兄さんの家に行くのは諦めて今日のスケジュールは一日中と勉強をしよう。

顔を洗い勉強に没頭する。気づけば

午後一時になっていた。

昼食を食べて再開としよう。


ママが作った料理オムライスを

食べながら塾や友達の話題をする。


「それで、冬雅とあかね

ワタシによく相談されるんだけど、

ほとんどが

同じなんだよね。少し、参るよ」


「フフ、それだけ期待して

いるからよ。ナーちゃん」


向かいで明るく笑うママは

ワタシのことをナーちゃんと呼ぶ。

41 才なのに容姿は20代前半にしか

見えない。しかも美人と美少女の

狭間という絶妙的な色気とあどけなさが醸し出していて併せ持つのだ。

しかも、家事、料理、株で儲ける?事を容易にできる人だ。

専業主婦なので幼かったワタシはママを基準にしたため当然の技能なのだと思ったけど

そうでも無いらしい。

このリビングだって、観葉植物と

世界地図のポスター(勉強用として

小さい頃に使っていた)や本棚が特に

多く本の量も多い。

広さをたとえるなら、高校教室の2倍

ちょっと上。家具と壁の色は白。

カーペットは黄色。


「どうしたのナーちゃん?

顔色が曇っているわよ」


「くもっていないよママ。

鋭いのが取り柄なのに外れているし。ヤバいよ」


「もう、ママをからかうんじゃ

ありません。雨が激しいけど

今日も出かけるの?」


「ううん、今日はいいよ。

今日は、ねぇ・・・・・」


寂しいなんて思うのはどうしてか。

ママの前では元気そうに振る舞わないとするけど感づかれる。

もし、お兄さんの家に行っていると

分かれば警察を呼び淫行条例の抵触で

事情聴取されるかもしれない。

罪になるとは思えないけど確実に社会的立場を考慮すれば苦しむ結果になるのは確実だ。

秘密にしないと。


「あぁー!ママわかったわ。

ナーちゃん好きな人が出来たから

いつも外に出ていたのねぇ」


「・・・へっ、はあぁ!!?

そ、そんなことないから。

ど、どうしてワタシが好きな人を

出来たと思ったのよ!」


「だって、ナーちゃんが、うわの空で

頬を赤らめたりニヤけたりしていたら恋の症状じゃないかと思ったのよ」


くっ、鋭い!普段は天然のくせに

いらない所で対極的な力で相互させるから読み取れない人なのだ。

この人は、外交で成功する気がする。


「フフ、相手は誰かしら。

真奈を大事にできる人が

必須条件だけどね」


(その条例ならお兄さんは軽く超えて

いるよねぇ。だって、いつも送って

くれるし健康を気にしてワタシの

ために作るし、優しいし・・・)


フッと冬雅も含まれていると考えると複雑になってしまう。

次の手を打つ前にママの追求を回避して勉強するから

邪魔しないでと釘を指す。

自分の部屋に戻り視線を自然とスマホに向ける・・・少しだけなら。

冬雅に今日も行けなくなって本当に

ごめん。と朝から伝えのラインで

知らせたけど、残念そうに

返ってきたので二度目の謝罪と

本題に入る。お兄さんと一緒と?

返ってきたのは・・・


『うん。お兄ちゃんに勉強を

教えてもらっています。

隣でお兄ちゃんが執筆中なので

なるべく尋ねないようにしてるよ。

疲れたら、隣のお兄ちゃん顔を見たら元気爆発で回復しているよ!』


「・・・羨ましすぎる。

はっ、いやいや!ワタシは羨ましくなんてないから」


それにしても、冬雅は隣で

お兄さんといるのか・・・わたしも

行こうかな?でも、午後2時で

たどり着いても居られる時間は

長くない。

冬雅に、『そう、お幸せに』と返す。

さて、勉強を再開と思ったが

ラインでお兄さんと登録したの

画面を見て思い出した。


「・・・少しぐらい、いいよね」


前に呟いた気がしたけど別にいい。


(お兄さん、小説を書いていますか?暇なら少しやりとりを

してくれませんか?

・・・そ、送信!)


しばらく待つと返事が来た。


『いいよ。今は退屈だったから

やりとりをしようか』


「・・・本当に優しいんだから。

それに、素敵」


冬雅が、お兄さんは執筆とあった。

なら変に気を使わずに返した。

そんな影でそんなことしていると

思うと素敵と思った。

それから、時刻を忘れて午後5まで

ラインのトークをしていたことに

ワタシは自らの行いにおののいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る