第18話 おうちデート その1 宝探し
僕の部屋にて。
僕と璃月は小さなテーブルを挟んで向かいあって座っていた。
この部屋にはお姉ちゃんが勝手に入ってくるぐらいで、誰も入れたことはなかった。そのためか、璃月がここにいるのがなんだか不思議な感覚だった。
彼女も落ち着かないのかそわそわしたりして、部屋を見まわしたり、僕が出したジュースの入ったコップの水滴をジーと観察したりしている。
「鳴瑠くんのお部屋って、物が少ないね」
「そうかなー」
「小説とか、マンガとかもないし、ゲームもない。あるのは最低限の家具と私の写真くらいで、物がないからこそすっきりしてて綺麗なお部屋だね」
「そうともいうかも。璃月の部屋はどんなのなの。ぬいぐるみとか、かわいい小物とか、ピンク色の壁紙とか、うさぎさんのいるファンシーな感じの部屋?」
「私の部屋に夢を抱かないでよ。そもそも、そんな可愛いお部屋に住んでる子いないよ。女の子の部屋に夢見過ぎ」
「え、そうなの?」
「うん。ちなみに私のお部屋は、本棚がいっぱいあったり、家具が浮いてたり、暖色系の照明が使われてたり、変な形の窓がいっぱいあったりするファンタジーなお部屋だよ」
「それはそれで住んでる子の方が少ないよ。もっと夢が広がる部屋でしかないじゃん。どんな部屋なのか気になるから行っていい?」
「もちろんだよ」
いい感じな流れで、遊びに行く約束ができてラッキーだった。
それにしても、璃月の部屋は一体どんな部屋なのだろうか。謎が深まるばかりだった。
謎多き女の子、璃月は真面目なトーンで話題を変える。
「で、お部屋に来たらやることがあるよね」
「うーん、なにかな。ゲームとかやりたいんだったら、お姉ちゃんの部屋からもってくるけど」
「ゲームは今じゃないかな」
「それじゃーなに?」
「やることはただ1つ。それは――」
「それは?」
「鳴瑠くんの持ってるえっちなものを探す――言うところの宝探しだよ」
「いやだよ!?」
「どして?」
「普通に見つけた後、気まづくなるじゃん」
「私と君なのに?」
「その信頼は嬉しいけど、嬉しんだけどね。思春期男子の心は意外と繊細だよ?」
「えー」
「えー、じゃありません」
むー、と唸る璃月。
そんな彼女は再び口を開く。
「私ね、彼女として鳴瑠くんのもっとライトな性癖を知っておきたいの」
「僕のことを知ってくれようとしてくれるのは嬉しいけど――というよりもライトな性癖ってなに?ディープな性癖があるみたいじゃん。僕に変態性しかないみたいじゃん」
「え、違うの?」
「僕、そこまで変態じゃないと思うけど?」
「・・・・」
黙る璃月。
やめてよ。僕の彼女がそんな態度とると、本当に僕が変態みたいじゃん。
「鳴瑠くん。私の知っている君の性癖ってなんだか知ってる?」
「いや、知らないけど。そもそも、そこまでえっちなことをしてないと思うけど。あるとしても、今日の保健室でのことくらいじゃないかな」
うわー、みたいな顔をする璃月。
ひどくないかな、その反応は・・・・・。
「私の知ってる鳴瑠くんの性癖って、私にいじられるのが好きだったり。私とイチャイチャしてるところを幼女に見られるのが好きだったり。視姦されるのがよかったり。私が寝てるのをいいことにイタズラしたり、寝てる状態で私から性的なイタズラをされたい願望があったり。せんせーにバレるかバレナイかの瀬戸際で私を毛布の中に隠してえっちなことをさせようとしたり。それはもう性癖が歪みに歪んだラインナップだよね」
「うわー、聞きたくない‼というより、最後に関してはそんな事実はないけどね」
璃月は僕の話を聞かずに進める。
「と、いうわけで。私は君のもっとライトな性癖ラインナップを聞きたいわけさ。むしろ、ここまで酷いラインナップを見て別れを切り出さないんだから、何がでても驚かないよ。だからおとなしく君の持ってるえっちなものを出して」
たしかに、璃月の知っている僕の性癖ラインナップは末期と言っていいほどにヤバいものばかりだった。
とはいってもだ。僕には出せない理由があった。
それは単純なこと。
「僕、そういうの持ってないんだよね」
「嘘だよ。男の子はみんな持ってるって私、知ってるよ?」
それは一体どこの常識なんだろうか。
そもそも、えっちなものはR18指定が入ってるはずで。僕たち高校生は買えないので誰もが持ってないはずなんだけど。
常識としては、持ってないほうが正しいはずだ。
とりあえず僕は、皆が持ってる体で話を進めとく。
「ちゃんと持ってない理由があるんだ。僕の部屋には度々お姉ちゃんが入ってくるわけで、たまに家探しみたいなことをするんだよ。だから、そういうの置いておけないっていうのが正解かも」
「あー、そういうことかー。でも逆に言えば、そういうものを持っていないからこそ、私との出会いで性癖が歪んでしまったともいえるかも」
「変な性癖分析はしないでほしいんだけど・・・・」
「そこら辺は平気。君がどんなに私のせいで変態になろうと、ちゃんと責任をとって結婚したあげるから」
「璃月・・・・・」
「鳴瑠くん・・・・」
見つめ合う僕たち。
これが性癖の話からきていなければどれだけよかったことか。
「それじゃ、話題を変えて。君がどんなものを好きか教えてよ。例えばおっぱいが好きとか、おしりが好きとかさ」
「何も話題が変わってない気がするんだけど」
「はやくはやく」
「わかったよ」
そう言って、少し考えてみる。
「ありきたりだけど、璃月のおっぱいは好きかな」
「あー、男の子ぽい・・・・ぽくないよ。おっぱいという存在じゃなくて、なんで私のおっぱい指定なの?ありきたりじゃなくなってるじゃん‼」
「いや、璃月のおっぱい以外のおっぱいは、僕にとっては対して好きではないし」
「むー、君はそういうやつなのは知ってたから。それで他には?」
「璃月のアホ毛には興奮する」
「アホ毛にムラムラするのは変態度増してない?」
「言い間違えた。グッくる」
「それもどうかと思うけど、ふーん。私のアホ毛好きなんだ」
「うん。璃月のアホ毛を僕は愛してるよ」
アホ毛を指でくるくるし始める璃月。
まんざらでもない様子だ。
「えーと、他には?」
「璃月のおっぱいで少し影ができてる制服とか」
「そういうピンポイントなのやめよーよ。どんどんディープよりになってってる」
「それじゃ、ライト側によらせて。璃月の鎖骨」
「そ、それも変態感強いかも」
璃月は鎖骨を手で隠す。
「えー、それじゃー。璃月のスカートとニーソックスから生み出される絶対領域。また足も好き」
「ちょっとストップ。その『璃月の』シリーズやめよ。私の好きなところを言われてるみたいで、そのぉー照れる」
「うーん、璃月の好きなところを言ってみてるだけなんだけど」
「むぅー」
「まだ続ける?」
「もうやめだよ。君の性癖を知ったところで意味がないことはわかったから」
そう言って唸る璃月。
僕は薄々思っていることがあった。
璃月も璃月で、僕同様かそれ以上に璃月も変態なのではないか、と。
まぁ、璃月がえっちな子だとしたら、それもそれでアリなので問題ない。
えっちな璃月も好きな僕だった。
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