SUNDAY~田崎くんのツッコミ退魔日記~

作者 飛鳥 休暇

やっぱり最後は笑顔やん!?

  • ★★★ Excellent!!!

漫才師を目指す明人は、ボケ(頭おかしいという意味ではなく、漫才における役割)で退魔を行うサンディーと出会い、ツッコミ担当の相方になる。
さらに「泣」で霊の心を昇華させる静香、「怒」で悪鬼を吹き飛ばす麗奈も絡んでくるのだが、この『魔』には実は秘密があって……?

すでに紹介させていただいたとおり、本作の除霊の方法は「喜怒哀楽」の感情そのものになります。時には1エピソード丸々漫才で魔を蒸発させ、時には「ブサイク」の暴言による怒りで退治します。登場人物の退魔方法が特徴的で楽しいです。
その中で「喜怒哀楽」の「喜楽」を主人公目線に据えているのは、喜びや笑いが一番強い感情なのだという筆者のメッセージなのではないかと感じました。事実、お笑いの劇場で人の笑いのエネルギーが視覚化するシーンがあります。笑いってすごいんです。どんなに絶望的な状況や怒りの吹き溜まりであっても、笑いがあれば次の瞬間みなハッピーになっているかもしれない。幸せへの縮地なのです。本作は筆者いわく「お笑い小説じゃなくてヒューマンドラマなんや!」ということですが、ヒューマンドラマそのものが実はお笑いなのかもしれません。たくさんの楽観性にあふれているものなのかもしれません。筆者の解釈による「ヒューマンドラマ」をぜひ楽しんでいただければと思います。

最後に私なりの見どころを。
それは、「熱さ」だと私は感じました。
出てくる登場人物がそれぞれ辛い過去を背負っていて、それらが重奏をかなでる形でクライマックスへと向かっていきます。そこで描かれるのは、登場人物たちの心の鼓動。そして螺旋。
クライマックスに至るまでに描かれてきたエピソードの全てがミキサーにかけられ、鮮やかな「みっくちゅじゅーちゅ」が出来上がります。結末は甘い甘い未来への一歩なのですが、それを仕上げるミキサーの音は実に「熱い」。
セリフ、行動、思考、最後の一歩の全てが熱さにまみれているのです。心の中がカーッとなってきます。読んでよかった! と思えること間違いなしです。

だから私は、飛鳥休暇作品をやめられない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

その他のおすすめレビュー

いっさん小牧さんの他のおすすめレビュー 95