第二部第四話part8『別れの予感』

網浜:洗足池公園 ベンチ 夜 



 アミリンです。今日は牧野さんの路上ライブを見学しに来ています。

 ライブと言っても、一人で孤独に演奏しているだけですが・・・。


 これから、牧野さんに、森羅さんのことを話さないと。。。


「ねえ、アミリン。聞いて!! 私ね、スカウトされたんだっ」

「へえ、そうなの? 凄いね!」

「アミリンがライブを開いてくれたお陰だよ。本当にありがとう。ちょっと借金が出来たけど、頑張って返さないとね」

「タマちゃん、よかったね」

「うん。でも、そこのプロデューサーにバンドを組めって言われて、困ってるんだ。。。私はソロでやりたいのに・・・」

「タマちゃんのライブ、観られなかったから、どんな物かわからないけど、

 きっとプロデューサーさんが才能を見出してくれたんだから、言われた通りにしてみたら?」

「う~ん・・・でも、メンバーがな~~私、友達少ないし、伝もないから。オーディションしてくれるって言われたけど、そういうのは嫌だし。どうせやるなら苦楽を共にした人たちと一緒にやりたいんだよ・・・」

「上杉君とかは?」

「駄目だよ。彼、また引きこもっちゃったもん。とくっぺは地下アイドル活動で忙しいみたいだし。

 豚野郎さんもドラム教室の講師で生計を立てるのに必死みたいだし。。。当日は、本当に奇跡的に集まったメンバーなんだよ。継続的な活動なんて、とても無理っ」

「そうなんだ・・・」

「なんだか、嬉しいのもあるけど、悩みが増えちゃってさ・・・ごめんね、アミリン。愚痴っちゃって。でもアミリンになら話せるから、

嬉しいよ」

「いいよ、気にしないで・・・・」

「さてと、とりあえず、今は森羅さん探しに奔走したいな。アミリン、今、どんな状況? 何か私に手伝えること、ある?」

 

 来た。。。。


 ついに運命の瞬間が・・・・。


 大好きなタマちゃんとの、決別の時が・・・。


「あのね、タマちゃん」

「うん」

「大事な話なんだ。落ち着いて聞いて」

「うん」

「実は、・・・森羅さん。見つかったんだ」

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ」


 凜がそう言うと、タマちゃんがベンチから勢いよく飛び上がって、周囲を跳ね回り始めました。


「やった! やった! やった!! やった!!! やったあああああああああああああああああああああああっ!」


 タマちゃんが瞳に涙を浮かべながら、凜にすがり付いてきました。


「アミリン、ありがとう。本当にありがとう。で、どこに居るの? いつ会える? 明日? 明後日? それとも直そこにいるの??」

「タマちゃん、落ち着いて。森羅さんには、会えないんだ・・・・」

「え・・・」


 凜がそう言った瞬間、タマちゃんが凍りついたように固まってしまいました。


「あっ・・・会えないって、どっどどどど、どういうこと?」

「実は、見つけたことは見つけたんだけど、彼女、今、海外に居るんだよ」

「か・・・・海外?! どこ。すぐに会いに行くよっ国を教えて??」

「流石に国までは解らなかった・・・流石の凜でもこれ以上はわからなくって、もう、会えないよ・・・」

「・・・」


 タマちゃんが、無言のまま凜から体を離して、ベンチに座り込み、そして、大粒の涙を流し始めました。


「う・・・う・・・・そんな・・・嘘だ・・・嫌だよ・・・そんなの・・・・嫌だよ・・・・」

「ごめんね、タマちゃん。力になれなくて。凜も精一杯頑張ったんだけど、流石にこれ以上は無理だったんだ」


 タマちゃんは泣いている。号泣している。何だか凜も泣きそうになってきた。

 

「ううん、いいよ、アミリン。ありがとう。こんな私のために、頑張ってくれて・・・結果は残念だけど・・・」


「タマちゃん・・・」


「うう・・・森羅さん・・・どうして・・・どうしてなの?・・・森羅さんに、会いたかったよぉ・・・・」


 タマちゃん・・・ごめんね。今は、こうするしか、無いんだ。

 凜が泥を被って、悪になるしかないんだ・・・・。


 嘘がバレたら、きっと、凜はタマちゃんに絶交されるだろうね。


 でも、これはタマちゃんを守るためだから。


 凜は、いつでもタマちゃんの味方だから。


 これからも、影から守ってあげるよタマちゃん。

 だから、ごめんね、タマちゃん・・・。

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