第二部第一話Part15『針降る夜』後編
牧野:テナントビル前 (夜)
牧野です。
今、ジュリエッタの入ったビルの前でチケットを配っています。
緊急で、今日、このジュリエッタでサスペンションズの
ラストライブをすることにしました。
生田店長さんにもOKをもらったので、
今は私と鉄砲豚さん、ジョーさんの三人で呼び込み・・・
のはずが、遅れてシフトに来た女の子達も
呼び込みを手伝ってもらっています。
後輩A「先輩のライブ、あたしもみたいですから」
「ありがとう」
後輩B「どんなバンドなんですか?」
「あ・・・えー・・っと、まあ、それは見てのお楽しみだよ」
「おーーーーーたーーーまーーーーさーーーまーーーーー」
うわあ・・・とくっぺが手を振って走ってきた。
「この卑しいメス豚の私をわざと放置プレイするなんて、
おタマ様・・・素敵すぎます(涙を流す)」
「(苦笑)」
私が作り笑いを浮かべつつ通り過ぎる人にチケットを配っていると、
1枚思いっきりぶんどってくる人がいました。
「あなた、今度は一体何のつもり?」
「げえええ日下さん、何故ここに??」
「あんたには関係ない。それより何これ。
六本木蹂躙死物狂異ライブ、イン、スペルマスサスペンションズ?」
「かっ返してください。あなたには、来てほしくないんですよ」
「おい、玉藻。誰だよ、この綺麗な人は。紹介しろ」
「しない。早くチケットを配って」
私達が揉めていると、
魚雅がビルの階段から悠然と下りてきました。
「(魚雅を見て、はっとして、会釈)」
「(日下を見て)この間は美咲姉さんを
家に連れてきてくれて、ありがとう。」
「どういたしまして。それより、これ。どーいうこと?
あなた達、一体何するつもり?」
「俺達の解散ライブを、
妹が勝手に今日この場所に決めたんですよ」
「ライブって、(ビルを見上げ)ここでやるわけ?」
「そうですよ」
「出るのはあんた達だけなの?」
「はい・・・」
「ふー・・・ん。そ。じゃああたしには関係ないわね。
せいぜい頑張りなさい(去っていく)」
「あっちょっと。じゃああたしも手伝うわ、とか、
そういう主人公的な台詞がどうして言えないんですかっ」
「うるさいわねっあんたは。
今こっちはそれどころじゃないの。アディオスッ」
日下さんが人ごみに紛れていきました。
チケット持ったまま。
「全くもう・・・最低だよ」
「(腕を組み、空を見上げ)なんだか、針でも降ってきそうな夜空だな」
「(空を見上げ)針?」
魚雅が言った途端、パラパラと雨が降ってきました。
雨・・・・人々が足を止め、動揺している・・・・。
これは・・・チャンス・・・。
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