第六話part11『3U事変(前編)』

網浜:3U店内 夜


アミリンでっす。ただ今3Uにやってきました。

噂に聞いたとおり、なんだか怖そうな人が多いです。

レザージャケットを着ている人が多いですし、モヒカンの人もいます。


「タマちゃん大丈夫かな・・・」


アミリンが店内でドリンクを飲んでいると、男の人に声をかけられました。

「ねえキミ」

「はい?」

「どこから来たの? 学生?」

「いえ、公務員ですよ」

「なんだ、年上か」

「そういうあなたは」

「僕は大学生の法月幼成、今日のライブの目玉、朝稲小弦の彼氏だよ。」

「へえ、そうなんですか。朝稲小弦ってどんな人なんですか」

「とってもキレててヤバイ女さ。でも僕はそこが好きなんだけどね」

「じゃあ今日は楽しみですね」

「ああ、今から楽しみだよ。よかったら一緒に観ない」

「凜は人を待っているんで」


 長畑さん、まだかな。。。


「そか、残念。それじゃ、またね」


幼成という人と別れ、再び人ごみを避けつつ店内をうろついていると、

テーブル席に指野さん達を発見しました。


「指野さーんっ」


日下:3U店内 (夜)


来てしまった。もう後には引けない。あたし達には見守ることしか出来ない。

あたしと狩川さん、指野さんの三人はテーブル席でお茶を飲み、時間を潰しているわ。

「何事も無ければいいんだけど」

「牧野さんが心配ですね」

「まあ何とかなるって」

「狩川さんは楽観的すぎます。もっと危機感を持って下さい」

「まあまあいいじゃない」

「それよりバックステージから観るって本当ですか」

「ええ、本当よ。何が起こるか解らないから裏方として進入するわ」

「指野さん一人で大丈夫ですか」

「平気よ、二人は見守ってて。おかしな動きがあったら教えて」

「解りました、気をつけてくださいね」

「じゃあ私はそろそろ行くから」

「はい」


あたし達が話していると、指野さんを呼ぶ声が聞こえた。

あたしと狩川さんが声のする方を向くと、そこには網浜凜が。


「網浜、なんであなたがここにいるの」

「呼ばれてきたんですよ~指野さん、狩川さんこんばんわ」

「あら、網浜ちゃん、あなたも来てたの」

「はい、よかったら一緒に観ませんか」

「悪いけど、私達は遠くから観させてもらうわ」

「そうですか」


指野さんがそう言うと、網浜は寂しそうに去っていった。

でも刑事が来ているってことは心強いわね。


「今日のライブ、刑事さんも観に来てるなんて意外ですね」


あたしはわざとちょっと大声でそう言った。

これがけん制になればいいんだけど。


網浜:3U店内 (夜)


アミリンです。指野さん達は独自に観るようです。

凜が店内をうろうろしていると、後ろから肩を叩かれました。

振り返ると、そこには長畑さんの姿が。


「長畑さん。もー、待ってましたよー」

「御免な、遅れちゃって。それよりライブはもう始まっているのか」

「もう間もなくですよ」

「そうか、なんとか間に合ったみたいだな」


長畑さんは嬉しそうに笑っていました。


牧野:3U店内 楽屋内(夜)


牧野です。大変な事態が起こりました。事前に送っておいたベースが私の元に届いていないんです。

「すまない、牧野さん。こちらで受け取ったのは間違いないんだが、誰かが持っていったらしい」

「そんな、ベースがないとステージで演奏ができません」

「ああ、わかってる。今、スタッフ総出で探しているところだ。だがもう時間が無い。

とりあえず代わりのギターでステージで歌ってくれないか」

「ええ~~~~!?」

「もうそれしか方法は無いんだ、頼むよ」

「今日は高速スラップを披露する予定だったのに、アコギで一体何をすれば」

「キミの持ち曲を披露してほしい」

「わっわかりました」


なんだか大変な事になってきちゃったな。

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