第五話Part6『所詮僕は引きこもり』

上杉:上杉の家 リビング


上杉です。洗濯機が壊れました。これでは洗濯ができないので困る。

僕はさっそく近くのコインランドリーへ行くことにした。


犬伏:長畑の家 321号室 リビング


犬伏です。ルリの口からとんでもない言葉が出てきました。


「洗濯機が壊れた!?」

「ええ、修理に2~3日かかるらしい。悪いけど、洗濯は各自コインランドリーを使って」

 

「え~僕ちゃんめんどくさい」


あっソファで寝そべっていた東矢君がルリに蹴られた。


「しょうがないな。あたしコインランドリーに行って来るよ」

「そう。不審者に気をつけて行くのよ」


「は~~~い」


さっそくあたしは洗濯物を持ってコインランドリーへと向かった。


上杉:コインランドリー付近 夜


 上杉です。大量の洗濯物の入ったビニール袋を抱えて、僕はコインランドリーへと向かっていました。

すると、なんと見覚えのある女性の姿が僕の瞳に映りこみました。


僕の憧れの、犬伏真希さんだ。


犬伏さんがコインランドリーの中に入っていった。一体どうしてここに彼女が?

いや、これはひょっとして神様が僕にくれたチャンス。


僕は駆け足でコインランドリーに入った。


上杉:コインランドリー内 夜


上杉です。

犬伏さんが椅子に座って雑誌を読んでいました。

これは、童貞を捨てるチャンス!

いや、さすがにこんなところで行為には発展しないだろう。

落ち着け、落ち着くんだ上杉純夜。

確かに僕は童貞で引きこもっているけれど、人と話せないわけじゃない。

ここは世間話だ。童貞を捨てるのはその後でいい。


「あっあの」

「はい?」

「こけっこけっここ」

「? 何か?」


 まずい。何を話せばいいか分からない。

 畜生。何で僕は童貞なんだ。女のあしらいの一つも知りやしないウンコ野郎だ。

 ええい、引くな、上杉、男を見せろ。これで彼女も一ころの一言を話せ。


「つっつつつ、月が綺麗です、ね」

「え? ああ、そうですね」


 伝わってね~~~~~~~~!!


 それから暫く僕と犬伏さんは無言で洗濯物が乾くのを待ち続けた。

 

 所詮、僕は童貞だから、こんなとき何て声をかければよいのかわからない。

 それにしても犬伏さんはきれいだな。芸能人で言うなら山本美月にちょっと似てるな。


「あの~、すいません」

「え、なっなんですか」


「社会の窓が開いてますよ」


 !!



 チャックを戻そうと具足に触れた瞬間、僕は興奮していた僕のアレは果ててしまった。


「あう、おう」

「? どうかしましたか」

「あっあうう、おう、いった」

「いった?」


 しまった。犬伏さんの前で醜態を晒してしまった。

 笑っている、犬伏さんが僕を見て嘲り笑っている。


 所詮引きこもりの童貞なんてこんなもんだ。僕は生まれ変わらないといけない。

 でもそのチャンスが無い。頼む神様、この引きこもり地獄から僕を解放してくれ。

 そして童貞を卒業させてくれ。

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