第75話 サハラン・B・サルサ


 第75話 サハラン・B・サルサ


「すごいね!まさか恐竜に変身するなんてっ!私もちょっと頑張ろうかなっ!」


 ユウキの隣で試合を見ていたユキが、少し興奮した表情でやる気を出している。


「ユキさん。女性と戦うのは、騎士道に反するのですが先ほどのフユさんの力を見た限り手を抜いて勝てる相手じゃないので、俺も本気で行かせてもらいますよ。」


 サハランは、ユウキの家庭教師でもある「聖騎士アルデバラン」の息子である。剣技については、王宮聖騎士の父親や、その部下の兵士たちに幼少期から鍛えられてきている。そのため、剣技の実力は学院内でもトップクラスである。しかし、性格的に軟派なところがあり調子に乗ってしまい実力が出し切れないことが多い・・・。


「では、ユキさん、サハラン君前へ。」


 「ユキ」VS「サハラン」


 ユキは、フユと同様に何も持たずに歩みだす。


「ユキおねえちゃん!がんばって~!!」


 フユが声援を飛ばす。


 サハランは、槍を手に持ち中央に向かっていく。先ほどのフユが魔剣を作り出したのを見ていたため、距離をとれる武器にしたようだ。


 フユとサハランが並び立つと、ノーラ先生が、


「二人ともいいですね。ユキさん、無理はしないようにね。では、開始っ!」


 サハランが、開始の合図とともに素早い動きで槍を突き出す。しかし、その切っ先は空を切りフユは上空に飛びのいていた。


 サハランは、魔法陣を作らせないように連続で攻撃を繰り出す。さすがに鍛えられているようで、かなり早く槍の先が残像のように見える。


 ユキは、避けるのが精いっぱいのように見えた。ユウキは、その様子を見て、ハラハラしていたがフユは余裕の表情で姉の姿を見ている。


 フユの余裕の訳が分かったのはそのすぐ後のことであった。ユキは、軽々と槍をかわしながらブツブツと詠唱を始めた。


「なっ!召喚を移動しながらだとっ!?」


 召喚魔法だと思ったサハランは、ユキの戦闘から、剣の召喚をするものと思い槍を構えなおす。


「・・・炎をつかさどる・・・炎神よ・・・我の・・・現れたまえっ!!」


 サハランが、攻撃をやめ、槍を構えなおしたすきに、ユキは詠唱を完成させ、魔法陣を地面にぶつけるように展開させる。


「いでよ!


メラルーカ!!」


 魔法の円陣が、爆発的に広がっていき、その中心より真っ赤に燃えた炎の神【メラルーカ】が姿を現す。


「ちょっ!剣とか盾とかじゃないのっ!?」


 サハランは、出現した自分の倍以上の炎の神に驚く。


「くそっ!!」


 サハランはやけくそに、槍を突き出す。


「槍竜乱撃!!」


今までより、さらに鋭い突きが繰り出される。

しかし、【メラルーカ】の前では通常の武器では効果なく

鋭く突き出された槍を、【メラルーカ】が難なくつかむと、つかんだ先から炎がサハランに向かって進んで行く。

サハランは、その槍を離そうとするが、炎の勢いが早く手に燃え移ろうとしたその時に、


「お姉ちゃんストップ!!」


 フユの、氷魔法がサハランの手を包み込み炎を防御する。それと同時に、ユキが【メラルーカ】を帰還させる。


「勝者、ユキさん!」


 ノーラ先生が、失神しかけて呆然としているサハランを場外にずるずると引きずって行った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る