第24話 不正な裁判
「エルグレドさん、『
篤樹は裁判所の廊下をエシャーと並んで歩きながら、前を行くエルグレドに質問した。
「私も初めて経験する裁判のやり方なので
「時間制限付きの裁判?」
篤樹は両親が
「人間の10倍もの時間を持つエルフ族なのに、何とも短気な裁判ですよね」
篤樹の思いが聞こえたかのように、エルグレドも不思議な裁判への
「本来は彼ら……エルフ族は森の中でこの裁判を行うそうです。裁きを下すのはエルフ族の長老だとか。ただ、今回は人間の
「お父さんは……」
エシャーも会話に加わってくる。
「お父さんは、一体なんの罪でエルフ族から
当然の疑問だ。300年前……ルロエさんは外界で生まれ、18歳まで両親と暮らす中で一体どんな「罪」を犯したというのだろう? それは篤樹も気になっていた。そして、そんな「大昔の罪」に対し、自分たちがどんな
「すみません……詳細はまだ、私も知らされていないんです。私やビデル大臣だけでなく、ボロゾフ
あと少しで裁判所入口のホールに着くというところで、エルグレドは立ち止まった。
「良いですか? 一応、私の知っている
篤樹とエシャーはコクリとうなずく。
「陽が沈んだら
「死刑!?」
エシャーが口を押さえて目を大きく見開く。
「いや、すみません。例えばそんな
「『制限時間』の間に終わらなかったらどうなるんですか?」
篤樹は裁判の時間制限というのが理解出来なかった。
「裁判の
「だけど、そんな短い時間で……間違いだったら?
「私に言われても……」
エルグレドは
「まあ、私も気になっている点はそこなんですよね……」
考えをまとめるようにエルグレドは手で
「
「今回は人間ですよね? 裁判長は」
篤樹はエルグレドの言わんとするところを理解した。
「エルフ族協議会は……というよりカミーラ高老大使は、何があってもルロエ氏を……エシャーさんのお父さんを有罪にしたい、と考えているのでは無いでしょうか?」
「どうして! どうしてお父さんを……」
エシャーの目は、今にも涙がこぼれ落ちそうなくらいに
「なぜなのかは、裁判が始まってみないことには
「裁判長を代えてもらうとかって、出来ないんでしょうか?」
篤樹はなんとかならないものか、自分なりの意見を出してみた。
「権限が無いんですよ、私たちには。異議を申し立てる権利は被告…ルロエさんにしかない。だからと言って、もし裁判長の
「じゃあ、どうすれば……」
エシャーが
「今回、重要証人としてあなたたちを
「え?」
そういえば自分たちが「重要証人」なんて立場に「誰から」選ばれたのか、まったく考えてもいなかった。
「どうしてビデルさんが?」
「さあ……? 閣下にも何か考えがあるんでしょう。ビデルさんは昔から、大臣になった今も『
「お父さんを……助けるために?」
エシャーは自分がどうやったら父親を救えるのだろうかと不安を感じた。「下手な証言」をしてしまえば、逆にお父さんを
「そうです。お父さまを助ける方法として、ビデル閣下は『人間の施設で人間の裁判長を立てるなら、被告人の子どもたちを証人に立てるくらいの
「何か作戦とか、打ち合わせとかってあるんですか?」
篤樹の質問にエルグレドは首を横に振って答える。
「閣下の
ビデルさんは一体どんな考えで俺たちを選んだんだろう? ルロエさんの子どもであるエシャーがいれば、確かに人間の裁判官なら娘を
篤樹は「なんで俺まで?」という疑問の解決は出来ないまま、とにかく出廷するしかないと決心した。
とにかく当たって
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