本庄とあだ名

 どこの大学でもそうだろうが、教員には学生によってあだ名がつけられる。

 あだ名にはパターンがあり、基本的に好感度によって変化する。


 まず、好かれている先生は「○○ちゃん」が多い。女性教員だと下の名前、男性教員だと名字にちゃんづけする。

 50代後半の肥満や脂肪肝の教授にちゃんづけもアレだが、好かれている証である。単位をめっちゃくれる先生は、「神」「仏」「菩薩」と崇められる。神は複数人いるので、我が大学は多神教である。


 例外として、40代半ばながら、めちゃくちゃ美人で優しい先生がいるのだが、彼女はちゃん付けではなく「鈴木姉さん(仮名)」と呼ばれている。別の先生に男性の鈴木先生がいるので、そちらは「鈴木兄さん」と呼ばれている。どちらも必修(と選択必修)なので、学科内で呼び分けが必要なんですよね。


 普通の先生は「○○先生」である。個性がある先生だと、凝ったあだ名がつく。ルー大柴みたいな喋り方の先生がルーとか呼ばれる感じ。あるいは、青山先生だったらテルマとかそんな感じ。自分は、木村先生をこっそり「きむきむ」と読んでいる(定着してないけど)。


 がっつり外見からあだ名が取られる場合もある。スティッチのリロに似ている女性教員は「リロ」、綺麗にハゲている男性教員は「ザビエル」だ。

 二人合わせてリロアンドザビエル、すごい絵面でしょ? ちょっと偏屈なだけでいい人たちではある(落とされたけど)。


 ここらへん、本人に伝わったらどんな気持ちなんだろう……(頼むからこのエッセイの存在よバレないでくれ)。


 嫌われる教員にあだ名などない。苗字の呼び捨て、それだけである。まれに親しみを込めて「〇〇」と呼ばれることはあるにはあるが、そういう先生も好き嫌いが分かれたりするので、嫌いな人はめっちゃ嫌いだ。


 あだ名がない教員は陰でどう呼ばれているかというと、

「田中(仮名)にレポート再提出食らったわ〜」という感じだ。

 例外は、先日語ったババア。


 ちなみに、ババアの場合はかなり例外なので、普通の先生のようにあだ名の名付け親などはいない。誰しもが自然にババアと呼ぶようになった「自然発生型」である。


 動物にあだ名がつくこともある。名前をガッツリつけると情が移ってしまうので、移らないようなあだ名にする。


 先日のモルモットには「アボ」というあだ名が付けられたのだが、彼は友の白衣の袖でうんこをしたので、「コロコロうんこ丸」に改名させられていた。ちなみにおしっこもされたので、実験中に白衣を洗わざるを得なくなったらしい。


 他にもあだ名のついた動物はいて、コカインを打ったマウスには、

「ヤクチュウ」と名付けられた。

 まあ、彼を薬中ヤクチュウにしたのは我々学生なんだけどな。「行け、ヤクチュウ! 100万ボルトだ!」とかやってたけど聞いてくれるわけもなく。本当に100万ボルト出されたらみんな死ぬけど。


 もちろん、これらは実験動物なので、コロコロうんこ丸もヤクチュウも、もうお亡くなりになっている。ありがとうございました。来世ではいい名前をもらえますように。


 話は人間のあだ名に戻って、本庄が知っている中に「かわいそう系」というジャンルのあだ名がある。あたかも、今までがかわいそうでないかのような言い方だが。

 それは数年前、実験中にこっそり鼻をほじっていた教授の秘書さん(男性)がその現場を不運にも学生に見られ、「鼻くそおじさん」「鼻くその人」などと呼ばれるようになったのだそうな。

 幸いにも鼻くそおじさんはその学年でしか定着せず、我が学年で新たなあだ名「標本おじさん」(標本の場所を実験初回に案内したから)が爆誕した。


 それもそれでどうなん、ってあだ名ではあるが、鼻くそおじさんよりは……。

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