本庄とマウス
学生実験で動物実験をするのは割と時間がかかる。
世の中には全く動物を扱わない研究室もあり、そこの学生はマウスをほとんど触ったことがない。
マウスが逃げ出して捕まえたりしてると、実験が無限に終わらないので、マウスを触る練習をする機会を先々週くらいに先生が設けた。
「本庄はマウス触れるでしょ、うちの研究室だから先生側やって」
「ええ〜」
「加点するから」
「やりまーす」
成績の悪い本庄は加点に弱い。一瞬で臨時講師が爆誕した。
「頭の周りを掴む時に、ゆるく掴むと噛まれるから、しっかり掴んで」
本庄は家庭教師や塾講などをしたことがないので教えるのは苦手なのだが、加点には勝てない。
なぜいきなりマウスの首根っこを掴むのか。注射するときには、基本的にマウスの首根っこを掴むからである。噛まれると割と痛いので、頭をホールドするというわけだ。
だが、マウスの首根っこを掴めない学生は、予想以上に多かった。
「違ぁぁぁああああう!! 首!! 頭蓋骨ごと掴んで皮を引っ張る!!」
言葉はグロいが絵面はグロくない。安心してほしい。
「首吊る勢いで掴んで!! 首絞めていいから!!」
実際には首は絞まっていないので虐待ではない。安心してほしい。
「刺すときは、ひと思いに!! グサッといけグサッと!!」
暴れたら刺し直しだから、むしろマウスに配慮している。安心してほしい。
友人に一通りサイコパス扱いされて本庄の繊細なメンタルは傷ついたものの(嘘)、急に投げられた臨時講師の職は無事に全うされた。
学生の中には全くマウスが触れずに泣き出す女子もいるので、自分が代わりにやってあげたりもするのだが、マウスに針をぶっ刺すという絵面のせいで本庄がモテるなんてことはない。
そしていざ、学生実験の時。
「やっぱ、学生はマウスに慣れさせておくべきだね〜。今日は早く終わったから、みんなに加点つけとくね〜」
先生ありがとう愛してる〜!
本庄は加点に弱い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます