失敗を活かすことができた

さすがに寒くなったから、僕も美智果もパンツ一丁じゃなくなった。


僕は普通に服を着てるけど、美智果はキャラクターものの着ぐるみを着てた。今のお気に入りはゆるキャラの着ぐるみだ。でも、どっちにしても女子力とかいうのはないんだろうな。


けれど、それでいい。そういう部分だけで相手を見るような人に好かれる必要なんて全くない。見るべき内面を持ってる人は、『ただしイケメンに限る』とか言わない。


僕の母も、単なる外見では選ばなかったけど、父の<上辺だけの優しさ>で選んで失敗した。内面を見て選んだつもりが、実は表層的なものでしかなかった。父のそれは、実際には<優しさ>なんかじゃなく、ただその場を取り繕う為に適当な言葉で誤魔化すだけのものだった。


母はそんな男に騙されて結婚して、でもすぐに父の本性に気付いて後悔したそうだった。


正直、後悔するくらいなら安易に結婚なんかするなよ。って思う。だから僕は、たとえ罵られたって騙されたってこの人ならって思える相手だってことで妻と結婚した。そういう意味では、母の失敗を活かすことができたと思う。


だけど僕も、たくさんたくさん失敗してきた。美智果がまだほんとに小さかった頃には、つい声を荒らげてしまったことも何度かある。それは叱った訳でも躾でもなかった。単に感情的になってしまっただけだ。今ならたぶんやらない失敗だろうな。まだ妻がいたから、僕が失敗しても妻がフォローしてくれるという甘えもあったかもしれない。


そうだ。僕だって失敗する。今でもやっぱりいろいろ失敗してると思う。だから美智果が失敗したってそれを責めるつもりはない。ついつい小言を並べてしまったりするかもしれないけど、それ自体が失敗だと思う。小言じゃなくてただ諭せばいいんだよ。と分かってても、やっぱり小言になってしまったりするんだよね。


親だってそういう未熟な部分があって失敗するんだから、子供が失敗するのは普通なんだ。そういう失敗を重ねて経験を積んで成長していくんだから。


失敗したっていいじゃないか。間違ったっていいじゃないか。大事なのはそれを反省して経験として活かすことなんだから。


上手くいかないことを悔やんでもいい。辛いと感じてもいい。でもそれだけに囚われて自分自身を否定する必要はない。自分は駄目だと、何をやっても無駄だと、役に立たない人間だと卑下して閉じこもってしまう必要はない。


泣いたっていいよ。愚痴ったっていいよ。誰かに八つ当たりしたくなったら僕に当たってくれたらいい。


親なんて本来、その為にいるようなものだって思うからさ。


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