誕生日、おめでとう

「誕生日、おめでとう」


今日は八月四日、美智果の誕生日。この子ももう十二歳か。保護者の承諾さえあれば結婚できるようになる十六歳までもあと四年。成人までは八年か。この調子だと、あっという間なんだろうな。


バースデーケーキは用意したけど、美智果は甘いものが苦手だった。たぶん、一切れ食べたら『ウェッ!』ってなると思う。なので、午後から来る好美よしみちゃんと真理恵まりえちゃんの為に取っておく。二人も誕生日パーティーをしてれるから、その時に使えばいいというのもあるし。


美智果はお寿司が好きなので、パーティー用の寿司も買ってある。これで好美ちゃんや真理恵ちゃんを招いての誕生日パーティーもOKの筈だった。


なのに、


「あ、今日、しーちゃんとむっちゃんも来るから」


だって。


「なんですと!?」


しーちゃんというのは椎名(しいな)ちゃん。むっちゃんというのは睦美(むつみ)ちゃんと言って、普段はあまりうちには来ないけど、やっぱり美智果の友達だった。当然、ゲームやアニメが好きな同好の士である。


「ぐわ~! そういうのは先に言っておいてくれよ~!」


「ごめ~ん。でも、昨日急に来れることになったんだも~ん」


「って、昨日分かってたんならその時に言わんか~い!」


「にゃ~っ! 許されて~!」


まったくもう! 仕方ない、宅配ピザを急遽追加だ。


でも、四人になればケーキも殆ど食べてもらえるかな。好美ちゃんと真理恵ちゃんだけだと、半分以上残るから、それは結局、僕が食べる羽目になるんだ。僕は甘いものは嫌いじゃないけど、さすがにケーキのホール半分以上はちょっと厳しいし。


「ま、いいや、ほれ、誕生日プレゼント」


と言って、現金五千円を渡す。それがいつものうちのプレゼントだ。


美智果は好みがうるさいので、下手にモノを渡すよりは自分で好きなものを選べるからこっちの方が確実に喜んでくれる。最近はもっぱらゲームに消えるけどね。それに、こうやってもらった現金を貯めてほしいものを買うんだ。美智果が使ってるノートPCだって、彼女が自分でお小遣いとかを貯めた分を足すことで、僕が元々プレゼントとして想定してたものより性能的に上のグレードのに変更したりしたしね。


「わ~い、ありがと~!」


プレゼントに現金なんてって思われるかもしれない。確かに別に現金じゃなくても、よっぽど要らないモノじゃない限り、美智果は同じように喜んでくれる。


けど、同じように喜んでくれるなら、この子が自分で考えて選べる現金でも構わないんじゃないかって僕は思ってるんだ。


「うふふふ、何買おうかな~」


お金を握り締めてそう言ってる美智果の顔は、ちゃんと、プレゼントにワクワクしてる子供の顔なんだよね。


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