第71話 現状
マキと過ごし始めてから一週間が経過した。今の所は特に変わった様子も無くそれなりに快適に過ごせているけれど、相変わらず外にだけは一向に出る事を許されない。
私がマキちゃんの目を盗んで逃げようとするかも知れないと思われているのだろう。
そのせいか常にマキちゃんの視線があるのがなんとも辛いところではあるわね。
って思ったけれど、昔もこんな感じだったし気にしても何も変わらないことは身を以て知っている。
ただ、昔との決定的な違いは明らかにマキちゃんの性格が攻撃的になっているところだけね。
菜々に対してあそこまで有利を取れる人も久しぶりに見たわね。
そういえば菜々、今頃どうしているのかしら。無事だと良いんだけど・・・
「シロー、ご飯できたわよ〜」
っと、いつの間にかそんな時間になってたのね。今日は何が食べられるのかしら、楽しみだわ。
リビングに行くと、ハンバーグが目の前に置かれていた。ハンバーグの上には目玉焼きも添えられている。
普通のシンプルなハンバーグはもちろん大好きだが、目玉焼きが乗るとまたひと味もふた味も変わってくる。
こんな誘惑に誰が耐えられるだろうか、そんなの耐えられないに決まっている。
シロはテーブルの席に着き、マキが来るのを心待ちにしていた。
マキは大方の片付けを終えると、エプロンを外しシロの正面の席に座った。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
シロは箸を持つなりすぐさまハンバーグに手を付けた。
口に入れると口の中には肉汁が広がり、肉の旨味が口いっぱいに広がる。
そして目玉焼きの黄身を割り、その黄身の中にハンバーグをくぐらせてからまたハンバーグを頬張る。
卵のまろやかさがハンバーグを包みながらそれでいてハンバーグの味を殺さずにうまさをより引き立たせる。
これを作った人は本当に天才かもしれないわね・・・
シロはその後も止まる事なくハンバーグを食べ続けていた。その様子を見ていたマキもシロの事を笑顔で見つめていた。
が、シロがハンバーグを食べ勧めているうちに突然シロの手から箸が落ち、そのまま机に倒れこんでしまった。
その様子を見たマキは椅子から立ち上がり、シロの方を揺さぶった。
「シロ、シロ!?しっかりして!!」
シロの身を案じて声をかけているかのような声に聞こえるが、マキはニヤニヤと笑いながらシロを揺さぶり続けていた。
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