第64話 悪夢再び

私達は再び菜々の家に訪れた。前に来た時は果物がたくさん実っていた木も果物が収穫され葉がゆらゆらと揺れていた。

菜々は先に部屋に入り、そのまま地下室の実験室へ向かった。

その間、シロとマキは居間で新鮮なフルーツを菜々の母親からご馳走になっていた。

フルーツを食べながらシロとマキは菜々の母親も交えて世間話をしていた。

話し込んでから2時間後、菜々が薬を持って地下室から上がって来た。


「お待たせ!これが完成品だよ!!」

「これが・・・」

「あとはこれをマキちゃんに飲んでもらうだけだよ」

「副作用とかは大丈夫なの?」

「2、3日寝込むけど、その後からは元のマキちゃんに戻るよ」

「そう」

「えっと、私がこれを飲めばいいんだよね?」

「えぇ、それで全てが解決するわ」

「わ、分かったよ!」


そう言うと、マキは菜々から受け取った薬を一気に飲み干した。

飲んだ瞬間こそ何も変化はなかったが、数分後突然マキが倒れた。

何か別の副作用が出たのかも知れないと思ったシロは急いでマキの元へ行ったが、マキからは寝息が聞こえて来た。

どうやら眠り込んでいるだけのようだ。ここから2、3日経てば元のマキちゃんに戻るのね。

菜々はマキが眠ったのを確認すると、家の前に車を出すように家の人に伝えていた。

そして車には私とマキちゃんが載せられていた。菜々に一緒に来ないのかと聞いたが、目が覚めた時私が近くにいたら嫌だろうからと言う理由で菜々だけここに残り私達二人だけがマンションに帰ることになった。

車が出るのを見送り、見えなくなると菜々は家に戻っていった。

家に戻ると、父親が仁王立ちして待ち構えていた。


「今回は何があった」

「別になんでもないわよ、私がちょっと油断してただけだし」

「そう言うレベルの問題じゃないだろう、いいかよく考えろ。今回はたまたま薬が狙われていたから誰も傷つかなかったんだ。だが、今度お前達の誰かが狙われるとしたらどうするんだ」

「何それ、考えすぎじゃない?」

「考えすぎではない、実際お前が持ってた薬を壊すまであのスナイパーは打ってきただろう」

「ま、まぁ確かにありえるかもしれないけど」

「菜々、お前も今すぐに帰れ。そして愛しの人を守り抜け」

「・・・うん!」


菜々は家の裏に止めていた車に乗り込み、そのまま3人の住んでいるマンションへ帰宅しようとした。

マンションの前に着くと、先程シロたちを送り届けた車の窓ガラスが割れていた。

急いで車から降りて中を確認したが、そこにはシロ達の姿はなかった。

代わりにあったのは運転席で血を流している運転手だった。

菜々はすぐ警察と救急隊に連絡した。見た限り、運転手はもう虫の息だった。

それでも車から出して救急隊の到着を待っていた。

すると、その運転手が最後の力を振り絞るかのように私の腕を掴んだ。


「シ、シロさん達は・・・無事・・・で・・・す」


そう言い残すと、菜々の腕を掴んでいた運転手の手が崩れ落ちた。

数分後、救急隊が到着した頃には運転手が倒れた状態で発見された。その周りには運転手以外誰もいなかった。

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