第55話 いざ、実験室へ

衝撃を与えるとマキちゃんの精神は反転し、昔のマキちゃんに戻ると思っていたのに・・・

どう言う訳なのか、衝撃を与えても最近のマキのままだった。

いや、マキはマキなのだがそのどちらかが本物でどちらかが偽物だ。

精神が二つに分裂していると言うことは、元々は一つだった。つまり、これを治せれば元のマキちゃんに。

しかしそうは言っても、体内にある精神を一つにまとめるなんてそんなことできるわけがない。

今まで私達は記憶を抜いて、新しい記憶を埋め込む事しかしていない。精神へ干渉するだなんてとても・・・

いや、もしかしたら出来るかもしれない。お父さん達ならきっと!


「マキちゃん、それからシロ。今から私の家に行くわよ」

「え、わざわざ部屋変える必要ある?」

「違うわ、私の実家に行くのよ」

「それって・・・」

「菜々さんの実家かー、いろいろな果物が実ってるのかな」

「ねぇ、あなた正気?」

「当たり前よ。それに、お父さん達なら何かしらヒントとかもくれそうだし」

「なるほどね」


そう言い出すと、菜々はすぐさま車を用意し二人を乗せた。

菜々は車を走らせて、その間にシロにメールを代わりに打って貰っていた。

何の知らせも無く行くと後で色々面倒になりそうだからと、シロにそう言いながら携帯を渡した。

車を走らせる事20分、目的地である菜々の実家にたどり着いた。

辺りは桃の木やリンゴの木など様々な果物の木々が並んでいた。

その木々を掻き分けながら出てきたのは麦わら帽子をかぶったガタイのいい男が出てきた。

シロと菜々は萎縮して近付けなかったが、唯一菜々のみがその人物に対して近づいて行った。


「久しぶり、お父さん!」

「おぉ、久しぶりだな。元気にしてたか?」

「もちろん。今日はお客さんも呼んでるから」

「あぁ、例の子達だろう?話は聞いてるからとりあえず中に入りなさい」


菜々の父親の案内のもと、シロとマキは菜々の実家に招かれたのだが、まだ少し怯えているような表情だった。

まぁ、無理もないわね。ほんと外見はめちゃくちゃ怖いもの。


「あ、ああああのわ、私菜々さんと一緒にお仕事をさせていただいているマキと申します!!!」

「マ、マキちゃんと一緒に住んでいるシロです!!」

「ははは、そんなに固くならなくてもいいさ。マキちゃん、シロちゃん。君たちの目的はうちの地下の実験室だろう?」

「は、はい!どうしてもマキちゃんの症状の原因を知りたくて・・・」


シロがそう言うと、菜々のお父さんは一旦客間を出て行った。その数分後、白衣を着て再び客間に戻って着た。

顔つきも先程と違い、真剣そのものだった。

そして、客間にかけられていた掛け軸をまくり、そこに設置されていた機械にパスワードを入力する。

すると掛け軸が下がり、代わりに地下に続く階段が出現した。


「さぁ、行こうか。我らの地下実験室へ」

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