第40話 卒業式

マキちゃんと住み始めてからもうすぐ一年が経つ。そして今日は私が小学校を卒業する日。

私は散々来なくても良いとマキちゃんに言ったのに、会場に入場すると、マキちゃんが保護者席に座っていた。

いつもの洋服とは違い、キチッとした服装でいつもより数段綺麗に見えた。

本当は来なくてもよかったのに・・・でも、ちょっとだけ嬉しいかも。

モネも入って来た時に、マキちゃんがいる事に気づいたようで、隣からこっそり声をかけて来た。


「ねぇ、今日のマキさんとっても綺麗じゃない?」

「えぇ、いつもと違う服装がとても良いわ」

「私もあんな大人になれるかなぁ」

「・・・きっとなれるわよ」

「えー、本当にそう思ってる?」

「もちろんよ」


そんな会話をしている間にも式は進み、証書授与式に突入していた。


「卒業証書、授与。薊 モネ」

「はい!」


モネが終わってしばらくしたら私の番ね。

二回目なんだし、いつも通り平常心で。


「橘 シロ」

「はい!」


あー、緊張した。二回目でも結局慣れなかったわね、こういう大舞台ってどうしても緊張しちゃうのよねぇ。

その点、モネは緊張とか一切してなさそうだったわね。羨ましい限りだわ。

その後も、卒業式は進んでいき卒業式の合唱が行われた。

これもあった事すっかり忘れてたわ、うまく歌えるかしら・・・

同級生同士で歌う最後の歌、後ろからは泣き出す子の声も聞こえて来た。

まぁ、泣きたくなる気持ちもわかるわ。私も昔はそうだったし。

歌い終わると、盛大な拍手が贈られそのまま退場となった。

教室に戻り、最後のあいさつが行われた。

これで本当に小学校生活が終わる、なんだかんだで早いものね。

先生との最後のあいさつを終えると、みんな友達と一通り会話をした後、教室の外にいる両親の元へ向かった。

本来なら私は一人で帰るところだったのだが・・・今回は違う。


「卒業おめでとう、シロ」

「もう、来なくても良いって言ったのに・・・でも、ありがとうマキちゃん」

「今日はシロの好きなものなんでも作ってあげるからね」

「え!?なんでもって言ったよね!?じゃあじゃあお寿司と、フライドチキンと、それから・・・」

「はいはい、スーパーに寄りながら聞くから。ほら、行きましょう」

「うん!」


誰かがいてくれる卒業式ってこんなにも嬉しいものなのね。

昔は誰も来てくれなかったけど、今ならわかるみんながあんなに嬉しそうにしていた笑顔の意味が。

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