ノー アンサー ~僕の孤立と彼女の闇黒~

作者 坂井シロ

人間の本質を如実に描いた良作です。

  • ★★★ Excellent!!!

元妻が失踪した、と聞かされるのも十分に嫌なことだろうに、知らせてきた相手は失踪した元妻の新しい婚約者の身内で、あろうことか捜索に力を貸してほしいなどと言う。

そんなところからこの物語はスタートします。
1話が約2万字とwebの体裁としては取っ付きにくい印象ですが、あれよあれよと読み進められてしまうのは巧みな文章力ゆえでしょう。次々と展開していく話に気づけば読む手を止められなくなっていました。

離婚後の孤独に馴染めない主人公と、新しい婚約者の従妹がバディとなって、元妻の失踪にかかわる複雑な事情を紐解いていくという見方をすれば立派なミステリーですが、絡んでくる殺人事件の真相についてはミステリではお約束のもの。むしろこの物語のポイントは、キャッチコピーにあるとおり、人間の本質を描いた純文学的要素にあると私は感じました。

葛藤や苦悩、嫉妬、恋慕、自己肯定感など、誰もが直面する心の問題を表現豊かに描き出しており、時に嫌悪感さえ抱きながらも読み進めずにはいられなかったです。

物語の舞台となる沖縄の情景描写も鮮やかで、実際に初春の沖縄へ行ってみたくなりました。

各所に散りばめられた伏線を読み落とさないよう、そして沖縄の景色とキャラクターたちの人生に思いを馳せながら、じっくり楽しんでいただきたい作品です。

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