星はさえ人はわかれてゆく夜かな

【読み】

 ほしはさえひとはわかれてゆくよかな


【季語】

 さゆ(晩冬)


【語釈】

 さゆ――「① しんしんと冷える。冷え込む(中略)② 光、音、色などが、冷たく感じるほど澄む。また、まじりけがないものとしてはっきり感じられる。澄みきる(後略)」(精選版 日本国語大辞典)。


【大意】

 星の光が冷たく澄んでゆくにつれて、人々は別れ別れになる夜である。


【附記】

 最近対句に凝りぎみである。それは人事と自然を対応させるのに適した手法であると思う。この句はそうではないが、上五を「……て」とするのは収まりがよいと思う。この句でそうしなかったのは、中七のとの重複を避けるためである。


 こうした句の季語を「星冴ゆ」(「星冴ゆる」「冴ゆる星」)」とする考えもあるだろう。そうした分類法はわたしにとってすこし煩雑である。


 なお、「冴え返る」は初春の季語の由。また、「冴ゆ」を三冬とする説もあるだろう。


【例歌】

 山かげや岩もる清水音さえて夏のほかなるひぐらしの声 慈円


【例句】

 冴ゆる夜のともし火すこし眉の剣 園女そのめ

 霜をける畠の冴えやくはの音 太祇たいぎ

 風さえて今朝よりも又山近し 暁台きょうたい

 棚畑のすみずみ冴えて見えにけり 村上鬼城

 冴ゆる夜のこだまにひびく汽笛哉 寺田寅彦

 山の月冴えて落葉の匂かな 芥川龍之介

 人待てば鏡冴ゆなり青落葉 横光利一


 冴えそむる鐘ぞ十夜の場の月 杉風さんぷう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る