仲間達の新たな活動 4
「続けるぞー。次、モーナー。俺達の中で唯一、仲間になる前からこの村の村民だった奴。巨人族と人間のハーフっつー話。時間がありゃダンジョン掘り続けてる。魔物の泉現象知ってるな? その条件は、その空間があることだけ。ダンジョンを深く掘っていけば、ダンジョン内で現象が起きても、ある程度の対策は立てられるっつーことでな」
「モーナーだあ。魔力とかはないぞお。力作業が専門だなあ」
その筋肉を誇るように、両腕を水平に伸ばして肘を曲げ伸ばしする。
まさに人間離れの筋肉の塊。
「男の人……ですよね。同じ男として、憧れちゃうなぁ」
「背も高いし……二メートル以上あるわよね」
二メートル三十とか言ってなかったか?
身体測定したことないからよく分からんが。
「背丈は難しいけどお、誰でもこんなに筋肉つけられるぞお」
「え? ホントですか?」
「どうするんです?」
「それはあ、アラタのおにぎりをお、毎日食べることだぞお」
ないから。
有り得ないから。
つか、そうきたか。
「あのなあ、モーナー……。……まぁいいけどさ。で、クリマーは、ドッペルゲンガー種っつってたな」
「あ、はい。えーと、魔法は一応火、水、風、土、雷の基本的なものなら一通り。そんなに威力はないですけど。あと、ライムさんほどじゃないですが、体を変化させることができます。大体、私の体に近い質量の物ならほぼ完璧にコピーできるって感じですね」
「ドッペルゲンガーなんだ!」
「マッキーさんと色の系統違うけど肌が色黒だし、髪の毛がやや白みがかってるから人間じゃなさそうと思ってたけど……」
「すげー! 珍しいよな! それって!」
「ライムさんもテンちゃんさんもマッキーさんも珍しいけど……珍しい種族揃ってるよね」
そんな驚かれ方をしたのは……これで何度目だろうな。
もう数えきれんわ。
「例えばこんな風に……」
クリマーが右腕を、新人の一人の右腕そっくりに変化させた。
見事なまでに……生き写し……って言葉は当てはまるのかな。
「え? あたしの腕、装備ごとそっくりに……」
「腕だけ見たら、イーヤと変わんねぇぞ?!」
「触ってみてもいいですか? ……え? 金属の部分は金属の感触だよ?」
「マジかよ、ハッツ! ……流石に俺ら男は触れねぇか。でもすげぇな」
「まぁ……私には自慢でも何でもないんですけどね。あ、あと、私もアラタさんのおにぎりが好きです」
もうそれ、いいから。
「はいはい、次は……同時だったよな。ミアーノとンーゴだ。ミアーノはモグラっぽい獣人、ンーゴはワーム種っつったか。主に地中で生活……つか、生活圏が地中ってとこだな」
「俺からでいいんか? ミアーノだ。よろしゅうな。魔法なんざ知らねぇけど、土ん中から底なし沼作ったり空洞作ったり岩を土に変えたりと、まぁそんな感じたわな」
「ンーゴダ。ミアーノトイッショニカツドウシテル。オレモミアーノトダイタイオナジ。オナカノシタニカラダノナカニハイルイリグチガアッテ、ミンナモイレラレル。ヨロシクナ」
「あ……あは……。す……すごいですね……」
「あ……はい……よろしく……」
必要最低限しか布で覆われていない、茶色っぽい体毛に覆われたミアーノにはともかく、何も身に着けていないミミズのような色のンーゴにはやはりその姿と大きさで、新人達には威圧感を感じてるようだ。
それでも、いくら広いフィールドでも、全身五十メートル越えの体を全て地上には出せず。十メートルくらいしか見せてないンーゴの体はそれだけでも迫力はあるんだろうな。
見慣れりゃどうということはないが……確かに真上から落ちてきたら潰されて死んでしまうことは間違いないな。
あ、そうそう。
「ミアーノは男。ンーゴは女らしい」
「えーっ?!」
「性別あんのかよ!」
「マジかっ!」
これには引率の冒険者達からも驚きの声が上がった。
まぁいいんだけどさ。
「あぁ、それと俺とンーゴな、アラタのおにぎりで、その力を蓄えられてんだわ。……ってこたぁ、魔法は知らんが、魔力はあるっつーことかいな?」
「ダロウナ」
お前らもか。
コメントの後付けに俺のおにぎりはもういいってのっ。
「で、次はこのサミーだ。物は喋れんが、俺らの話は理解できてるからな?」
「そ、そうなんですか……」
「何か……硬そうですね」
「ミィ」
見た目は確かに甲殻類っぽいよな。
昔はモフモフだった、だなんて説明したら、信じられんだろうな。
ま、今はどうでもいい説明だが。
「見ての通り、両腕のハサミで攻撃はできるんじゃないかな? あと、この鼻先でスリスリされると、その部分の体毛が剃られる。剃髪剃毛してもらいたい連中が時々サミーにお願いしにやってくる」
「……ある意味、ハサミよりその鼻が危険って感じですね……」
「あたし達、頭スリスリされないようにしないと……」
女性の頭をスリスリする趣味はなさそうだがな。
「あ、あとはこいつ、テンちゃんほどじゃないが飛べるから。ギョリュウ族……ギョリュウ種? 空飛ぶ竜の一種」
「えーっ?!」
「マジかよっ!」
「そんな珍しい種族、どこで見つけてきた?!」
これも引率冒険者からの反応の方がでかい。
新人達は、更に腰が引けた感じ。
まさに、たまげたって反応だな。
サミーはその反応にはどこ吹く風といった感じで、料理の皿が並んでいる方に移動してる。
「……おい、サミー?」
「ミッ!」
俺のおにぎりが乗っている皿から一個持ちだしてきた。
「まさか……」
「サミー……さんも、おにぎりが好き?」
「ミッ」
おにぎりを持ち上げている両手を上下に動かしてる。
肯定の反応だ。
まったく……。
「次は……」
「次はあたしよね。コーティ。ピクシー種。体験済みだから説明はいらないでしょうけど、電撃が得意。他の魔法も使えるけどね。あとアラタと、アラタのおにぎりが好き」
俺からの説明無用とばかりに、トンボのような半透明の羽根をパタパタさせて宙に浮かびながら四人の目の前に移動して自己紹介。
って、おまっ!
どさくさに紛れて、俺が好きって……おいっ!
「ピクシー……って……普段は姿を隠してるって話聞きますけど……」
「あー、それ、無理。自分で言うのもなんだけど、魔力の量が膨大なせいで、姿を隠しきれないのよ。あと、まぁご覧の通り、羽で浮いたり飛んだりするけど、物運びには不向き。っていうか、こんなか弱いあたしにそんな力仕事はさせないように」
おい。
この新人がそんなことを命じる間柄なわけないだろうが。
そうそう、この説明は絶対必須だな。
「……あと、コーティの説明だが、こいつ、毒吐くから」
「毒まで吐くんですか?!」
「ピクシーって……そんな、怖い種族だっけ……?」
新人達が震えて、引率達が驚いてる。
全身三十センチあるかどうかの体格だ。
その体からそんな危険なものを出すとなりゃ、誰の目から見ても可愛らしいと思えるその姿もカモフラージュの一つ、と警戒されるのは無理もない。
「ちょっとアラタっ! 変な事言わないでよ! 毒吐けるわけないでしょ?!」
「吐くじゃねぇか。おもに俺に向かって」
「何言ってんのよ! あたしがあんたに向かってすることってば、せいぜい文句くらいでしょうが!」
「その文句を、毒を吐くって言ったりするんだよ」
「……あぁ、そういう意味でしたか」
「……びっくりした……。ほんとに毒なのかと」
だって毒吐いてんじゃん。
ほかに言いようがねぇだろ。
「まったくアラタってば……好きな相手にそんな意地悪するわけないでしょうが!」
「あ、あの……コーティさん」
「ん? なぁに?」
「コーティさんと、アラタさん……恋人同士なんですか?」
ぶっ!
「恋人じゃないけど、あたしは好きだけど?」
ぶはっ!
これ……どうコメントしていいんだ?
なんか、数人から変な目で見られてるんだが……。
「……大事な仲間、という認識ではあるが……。それ以上の親密な関係ってのは考えられねぇかな」
「将来を誓い合う、なんてのは……」
……こいつら、新人からマセガキに格下げだ!
「異種族どころか、同種でも考えたこたぁねぇよ! あったとしてもお前らの訓練に必要な情報じゃねぇだろ!」
たくこいつらぁ。
「ほらほら、みんな。アラタの言う通り。ここでは冒険者としての戦闘経験積んで成長する目的で来たんだろ? 余計な雑談は訓練の邪魔になるぞ」
……引率者らしい事言うじゃねぇか。
「ということで、よろしく頼むな」
と、日中俺に相談を持ち掛けた冒険者が、肩を叩きながら親し気に話しかけてきたんだが……。
「俺、まだお前らの名前は知らねぇんだが」
「え?」
うん、お前ばかりじゃなく、引率してきた冒険者全員の名前、知らないままなんだよ、俺。
※※※※※ ※※※※※
引率の冒険者達とヨウミの自己紹介を軽く済ませて、ようやく晩飯の時間。
俺のことは、引率は当然ながら、新人達もある程度は知ってたらしい。
余計な説明をする面倒がなくて何よりだ。
もっともこの晩飯会は、こいつらと訓練する連中の仲を取り持つ場だし、俺はでかいツラする立場でもなくその計画に首を突っ込む立場でもない。
こいつ等さえ話が付けられれば、この場の役割は無事に果たせるってことでな。
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