好きってなんだろう

成咲せん

真衣

 好きってなんだろう

 私の好きは笑顔と後悔



「神谷せんぱーいは、なんで彼氏つくんないんれすかー 」


 そう言って紗奈が酔いつぶれる。

 今日は真衣の家で同じ職に就いた大学からの仲良しグループで飲んでいた。

 女子会の話となると当然そういった類の話になるだろう。


「もう、紗奈は飲みすぎ。でも、確かに気になります。先輩めっちゃくちゃ美人だしモテるのに 」


 優香は紗奈に毛布を掛けながらたずねる。

 大学時代から人気を誇っていた先輩が浮ついた話の1つもないのは気になるものだ。

 普段は聞きづらくて聞けないがもう皆お酒がまわっていてついつい聞いてしまう。


「そんなことないわよ 」

「いえいえ、大学の時からモテてましたし。なにか理由があるんですか、例えば好きな人がいるとか。佳奈先輩は知っていますか 」


 真衣と仲の良い佳奈なら何か知ってるであろうと思っての質問だった。


「まあちょこっと聞いたことあるけど、でも私も少ししかそこら辺知らないから教えて欲しいなーなんて、だめ? 」


 佳奈は上目遣いで頼む。

 今まで聞づらかった話が後輩から出たのだ便乗する形で真衣に頼む。


「そうね。貴方たちなら教えようかしら。優香が言った好きな人がいるって言うのは一応正解になるのかな 」


 真衣は少し考えた末に言った。

 そしてなにか覚悟を決めるこのような顔つきで続ける 。


「ちょっと長くなるけどいいかしら。私の最初で最後の初恋の話 」


 そう言った真衣の目はどこか遠くを見ているようで懐かしんでいるよだった。




 彼とは家がお隣さんで幼稚園から高校までずっと一緒だった。

 まあ幼なじみってやつかな。

 彼は一言で言うなら太陽のような人だったわ。 決してイケメンではないけど誰にでも優しく明るかったから男女問わず人気があったわ。


 そんな彼との出会いは病院だった。

 私が幼稚園の頃に鉄棒から落ちて手の骨を折ってしまい入院をしたの。

 両親は2人とも働いていてずっと私を見ている事が出来なかったから子供だった私はずっと1人でとても寂しかった。


 そんな時に声を掛けてくれたのが彼だった。

 同じ病室に後から入ってきた彼に人見知りの私は初め無視してしまった。それでも熱心に話しかけてくれて徐々に仲良しになったの。

 毎日彼が声をかけてくれたおかげで寂しいだけだった入院生活の日々が一瞬で楽しい日々に変わったわ。


 その後私が退院して初めて、その彼がお隣さんでさらに同じ幼稚園だと知ったわ。

 私がスミレ組で彼がサクラ組だったから気づかなかったの。

 ふふっ、子供だった私は奇跡だ、なんてロマンチックな事を考えていたかしら。

 まあとにかくそれが出会い。


 それからは毎日一緒に過ごした。

 思えばこの時から好きだったのかもね。

 彼の無邪気な笑顔に私は惹かれたんでしょう。

 知ってると思うけど私はどちらかと言えばさばさばして冷たいから、なかなか友達はできなかった。

 けれど彼はいつも私に手を差し伸べてくれたわ。

 そう、いつも彼から誘ってくれた。

 友達もいない女の子だった私からすれば彼は王子様だったわ。


 幼稚園の時。

 彼も退院した後、組は違ったけど家が隣だっから毎日のように遊んだ。

 あの頃は何をしても楽しかったな。その頃の一番の思い出は、やっぱあれかな。

 家族ぐるみの付き合いだったから両家族で山にキャンプに行ったの。

 昼は川で夜はバーベキューをして楽しかったわ。

 その帰りの時かな、母さん達は片付けをしていたから私達は2人で虫取りをしていたの。でもまだ子供だから夢中で遊んでいたら自分達がどこにいるかわからなかった。

 私は怖くなって泣いたわ。たくさん泣いた。

 でもそんな時に彼が言ってくれたの。


「泣かないでまいちゃん。悲しい時に泣いたら悲しいままだよ。でも笑ったらなんでも楽しくなるんだよ。歌おう歌ってたらママがきっと見つけてくれるよ 」


 そう言って彼は歌い出したわ。

 自信ありげに歌うもので上手なのかと思ったら彼ったら音痴で、私も笑いながら歌った。

 何気ない普通の言葉だけど、子供ながら、ああ私はこの人となら笑っていれると思った。



「素敵ですね 。これは惚れますよ 」

「かっこいいわねー」


 酔いつぶれた紗奈以外の2人は酔いもあってか頬を赤くして聞いていた。


「まあね。その後すぐ見つけてくれて。その時私より彼の方が泣いてたわ。子供なのにきっと無理してたのね 」

「いい方ですね 」

「ええ。本当に 」



 そして小学生。

 3・4年生当たりまではいつも一緒だったわ。

 でも高学年になると、みんなから、からかわれて私は恥ずかしくてちょっと距離を置こうとしたわ。

 それなのに彼は気にせず声をかけてくれた。

 態度では嫌がってたけど本当はめちゃくちゃ嬉しかったわ。赤くなった顔を隠すのは大変だったかしら。

 そういえば彼を完全に意識し始めたのはこの頃ね。



「先輩の小学生時代。見てみたいですね 」

「確かに。ムスッとしてそう 」

「そんなことないわよ 」


 真衣はふんっとそっぽを向く。


「きっとそんな感じだったんじゃない 」

「もぉ、小学生の頃はもうちょっと可愛げがあったわよ。ちょっとわ」

「はいはい。心配しなくても今も可愛いわよ 」

「真衣先輩はどの教科が好きだったんですか? 」


 その質問は本当になんとなくからきたものだった。


「好き嫌いはあまり無かったけど強いて言うなら体育かしら 」

「ああ、運動得意だよね。彼は体育会系だったの? 」

「いいえ、体育はあまり参加してなかったわ 」

「意外ですね 」

「それはね。まあ、一応置いといて続けるわよ 」


 真衣が一瞬寂しそうな顔をしたのを見て察したのか2人はそれ以上言及せずに耳を傾けた。



 中学生の時。

 私は本当に彼を避けるようになったわ。

 好きって自覚したのもそうだけど周りからからかわれるのが嫌だったし、それに彼と話していると何を話していいかわからなくなって恥ずかしかったから。 元々こんな性格の私だから本当に冷たくしちゃったと思う。

 でも大事件があったの、 まあ私の中ではだけど。

 彼が告白されたの。

 彼は中学に入っても相変わらず男女問わず人気があったからね。

 その時は焦って完全に自我を忘れちゃって、その話を友達伝いに聞いた後、すぐに彼の所にいった。


「蓮、告白されたの 」

「ええっ。なんで知ってるの 」

「だめだよ 」

「真衣ちゃんどうしたの? 」

「蓮は私のなの。私だけの蓮なの。私だけに笑ってればいいの 」



「プロポーズですね 」

「プロポーズね 」


 真衣は顔を赤くする。


「仕方ないじゃないあの時は必死だったんだし。それにすぐに自分の言った事の重大さに気づいて逃げ出しちゃった 」

「その後はなにか無かったんですか? 」

「まあ、そりゃそれで終わりじゃないわよ。その後追いかけてきてくれて 」



「真衣ちゃん待って 」

「いや 」

「待っててば 」


 いつの間にか私より足が早くなっていた蓮にすぐ腕を掴まれた。


「離して」

「離さない。真衣ちゃんさっき言ったのほんと 」

「ふんっ、知らないわ 」

「心配しなくても、僕は真衣ちゃんのものだよ 」

「な、な 」


 真衣は口をパクパクさせる。


「真衣ちゃんだけの笑顔をあげるよ。だから真衣ちゃんの笑顔も僕のものだよ 」


 彼は今までで一番の笑顔でいった。



「青春ですね 」

「ここら辺は聞いたかな 」

「そうかもね 」

「先輩いいはなしですね 」


 酔いつぶれていた紗奈がいつの間にか目を覚まし涙を流し、鼻水を垂らしながら言った。


「紗奈起きたのね 」

「もう、ほら鼻水拭きな 」


 優香はティッシュを紗奈の鼻にあて、どうぞ続けてくださいと視線を送った。


「ふふっ、じゃあ続けるわよ 」


 苦笑いをしながら真衣は少し遠い目をして続けた。




 高校生。

 一応彼氏、彼女になった私たちは同じ高校に進学したわ。

 私も少しは大人になれたと思ったけど、相変わらず冷たい態度だったわ。


「真衣ちゃん大好きだよ。好き好きー 」

「はいはい 」

「どっか行こうよ 」

「また今度ね 」

「今度じゃダメなんだよ 」

「もういいじゃない 」


 こんな感じかな。

 高校に入って蓮は少し誘ってくることが増えた。

 理由はまあその内分かる事なんだけど。

 恥ずかしかったのもあってむげに断ってしまうことが多かったわ。

 それから



 真衣は言葉に詰まる。


「どうしたんですか 」

「真衣? 」


 佳奈達は心配そうに尋ねる。


「大丈夫だよ。話したいことはたくさんあるでもね。まあとにかく続けるね 」




 高校2年の冬。

 私は今まで生きてきて後にも先にも1番後悔した季節。

 彼が風邪で入院したって聞いてお見舞いに行った。その時期、彼は元気が無かったから心配してたの。


「蓮生きてる 」

「もう死にそう 」


 少し元気のない笑顔で答える。


「そんな冗談言えるようなら大丈夫ね 」

「ねえ真衣ちゃん僕のこと好き? 」

「なによ。今更そんなの聞かないでよ。」

「最近聞いてないなぁと思って 」

「退院したら言ってあげるわよ 」

「今がいいんだよ 」

「もお、良いじゃん別に。それよりゆっくり休んで 」



 その後も結局言わないまま帰った。

 それから数日のこと。

 彼から突然電話がかかってきた。


「他に好きな人ができたから別れてくんない 」

「はあ。今なんて 」

「だから。別れよって言ったの 」

「意味わかんない。嫌に決まってんじゃん 」


 あまりにも唐突な言い出しだった。


「嫌なんて知らないよ。でも別れてね 」

「もう意味わかんない。蓮のバカ。もうすきにしたらいいよ。バイバイ 」


 そう言って電話を切った。

 急に言われて頭にきちゃってそう言ってしまった。 頭が冷えた頃にきっとなにか理由があるのだろうと思い、 会いに行こうとしたわ。でも今更気まずいし、ほんとだったらどうしようとか考えていると結局会いに行けなかったわ。


 その翌日。

 あの日を私は今でも忘れられない。


「ごめんね真衣ちゃん入るわよ 」


 そう言ってなにか少し震えた声の母さんが夜遅くに部屋に入ってきた。


「なによ、こんな時間に。なんかあったの 」

「真衣ちゃん落ちついて聞いてね 」


 母の様子は明らかに変であった。


「なによ。さっきからどうしたの 」

「さっき蓮君の母さんから連絡がきて、蓮君が亡くなったって 」


 母は堪えていた涙を流し始めたが、真衣の目には写ってなかった。


「ははっ、うそだよ。なにをまあそんな冗談いって 」


 真衣はそう言った時やっと母の涙に気がつき、滅多にみない母の涙に現実を突きつけられた気がした。


「本当よ 」

「えっ、いやだって 」


 もう一度、母の顔を見るが悲しそうなその表情に嘘なんてひとつも見受けられなかった。


「そんな、嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。そうだ、夢だよ。それか、お医者さんが嘘をついたんだよ 」


 いつもクールで表情のあまり出ないはずの真衣の顔は完全に崩れていた。

 涙を流しながら笑い、目の焦点があっていない。


「2人とも落ち着きなさい 」


 急な父の声に真衣は我に返る。


「お、お父さん」

「車を準備したから今から行くぞ 」


 到着した時にはもう蓮の顔にはよくテレビで見る白い布がかかっていた。

 蓮の母さんは蓮の父さんの胸で泣いていて。

 蓮のお父さんも、涙を流すのを堪えているようだったが堪えきれずうっすらと頬を涙が通っていった。

 蓮の妹がお兄ちゃんと叫びながらベットの横で泣いていた。

 私は、私はただただ立ち尽くすことしか出来なかった。


 その後私は泣いた。

 泣いて泣いて泣いて泣いて、1週間廃人のようになっていた。

 学校には行かず、葬式には出たがまったく記憶にない。

 ただただ泣いて、寝て、泣いて寝て、泣いての繰り返し。

 後悔と悲しみとあと色々、たくさんのもので押し潰されそうで生きる気力も希望も何もなかった。

 蓮が居ないだけで私はこんなにも空っぽだった事に初めて気がついてまた泣いた。


 そんなある日のことだった。


「真衣ちゃん入るわよ 」


 そう言って許可なく入ってきたのは、蓮の母だった。


「え、あ 」


 1週間まともに喋っていないせいか、泣き疲れていたせいか、まったく声がでなかった。


「ごめんなさい、勝手に入って。でも、どうしても渡さなければいけないものがあったから 」


 そう言って一つの封筒を差し出した。


「こ、れは 」

「蓮からあなたに渡してって 」

「蓮から 」

「真衣ちゃん、ありがとう。蓮と一緒にいてくれて 」


 そう言った蓮の母の顔を見ると目を赤く腫らしながら笑っていた。

 その笑顔はとても綺麗で今でも忘れられない。

 蓮の母が帰った後、私は恐る恐る封筒の中身を見た。

 中には手紙が入っていた。

 女の子ような丸文字で、真衣ちゃんへと書いてあった。

 これは、蓮の字だ。

 折りたたまれてあった手紙を開いた。




「これがその手紙よ。破ったら許さないから」


 真衣は優しくそれ以上に悲しい声と笑顔でいった。




 愛しの真衣ちゃんへ

 これを読む頃には私は死んでいるでしょう、ってこういうの書いてみたかったんだよ(笑)

 なんか手紙で色々伝えるのは難しいけどとりあえず初めに、ごめん

 なにも言えなくて、君を1人にさせてしまってごめん

 まずは僕についてを書こうかな

 僕は生まれつき心臓が悪かったみたいでね、元々長くは生きられないって知ってたんだ

 初めてあったのは、病院でしたね

 覚えてるかな?

 その時真衣ちゃんは怪我で入院してたけど僕は、ちょっと体調が悪かったから検査入院してたんだ

 正直告白すると、一目惚れだったんだよ

 入院なんて嫌だと思ってたけど、同じ病室に真衣ちゃんがいて本当に楽しかった

 それにまさかお隣さんだったなんてね

 今思えば小・中と、真衣ちゃんは恥ずかしかったんだよねしつこく絡んでごめんね

 あの頃は、体育とか外で遊ぶのはあまり心臓に良くないって言われてたから、他の子との違いが分かってちょっとナイーブになってて焦ってたんだよ

 もっと一緒にいたいって思ったから

 でも、真衣ちゃんから、あんな激しい愛の告白をされるなんて夢にも思ってなかった

 本当に嬉しかったなぁ

 高校に入って、余命が分かってねちょっと悲しかったけど、真衣ちゃんがいたから本当に楽しかったよ

 でもやっぱ不安になって沢山誘っちゃった

 ごめんね

 うざかったよね

 あと好きって言って欲しくて何度も言わせようとしちゃったごめん(でもやっぱもっと言って欲しかったなー笑)

 あっ、でも、たまに言ってくれたからこその嬉しさもあったよ

 まあ僕の事はこんなもんかな、長々とごめんね

 じゃあ次は君について

 泣いてるでしょ。

 泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いてるでしょ

 真衣ちゃんは僕のこと大好きだったから

 気付いてないと思った?

 残念僕が真衣ちゃんのこと気付かないはずがないよ

 とか言って、じゃなかった書いておいて真衣ちゃんが気にせず学校行ってたりなんかしてたら流石に呪ってやる へ(゚∀゚へ)

(絵文字上手いでしょ(ドヤァ…!))

 学校はいくらでも休んでいいよ、僕を理由休めばいいさ

 僕がいない学校なんて楽しくないでしょ(笑)

 ここで真衣ちゃんに、任務を与えよう

 僕からの最後のお願い

 留年はせずに、高校を卒業していい大学に入ってそれから信頼できる友達作ってちょっと嫉妬するけど普通に恋とかしてそんで、最後に幸せになれ

 僕のことを忘れて幸せになってとでも言うと思った?

 言わないよ幸せにはなって欲しいけどね

 僕の事は忘れないで欲しいんだ

 ごめんね自分勝手で

 まあどうせ忘れられないだろうし(笑)

 よしっ、まあじゃあこんなもんかな

 真衣ちゃん、今まで本当にありがとう

 ごめんね

 それじゃあ、バイバイ

 愛してるぜ

 真衣ちゃんの愛しの蓮より



「蓮、蓮 」


 もう出ない程に今まで出していた涙が簡単溢れてきたが、封筒にもう1枚入っているのに気づき目から溢れる涙を袖で拭った。

 その紙はしわが少しできていて、後から書きたされたように書かれていた。



 これはただただ僕の気持ちを書き殴った失敗作だから恥ずかしいけど、死んだ後なら読まれているかどうか分かんないから大丈夫

 入って無かったらごめんなさい

 真衣ちゃんへ

 僕の事は好きでしたか

 僕の笑顔は届いていましたか

 これを書くのも不安で不安で仕方がありません、僕が死ぬ証を書いているようなものだから

 僕は皆の、真衣ちゃんの心に残ることができたでしょうか

 真衣ちゃんを幸せに出来たでしょうか

 これから書くのは、お願い事

 でもやっぱこれは不採用かな

 でも一応書きます

 僕のかわりに生きてください

 僕のかわりに皆の心に残るような人にいて下さい

 天国なんてあるか分からないけど僕はずっとずっと見てるから

 笑ってよ

 どんなに苦しくても悲しくても僕のために僕だけの笑顔を見せて

 そして、もう泣かないで

 僕は君の笑顔が見たい

 それが僕の最後の願い

 なんて傲慢な文だろうやっぱこれ没だね


 このシミはきっと蓮の涙が乾いたものだろう。

 よく見たら少し消されかけていた部分があった。

 没になるものだから中途半端なものだったのだろう。



 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 死にたくない死にたくない死にたくない

 生きたい笑っていたい

 真衣ちゃんを泣かせたくない



 消えかかっていて見えたのはこれだけだった。

 そりゃそうだ不安だったはずだ。苦しかったはずだ。

 大丈夫なはずが無い

 ごめんね気づいてあげられなくて。

 ごめんごめんごめん。

 きっとこれが蓮の想い。


「蓮の願いはすべて叶える。高校卒業して、いい大学に行って、親友も作って恋は無理かもだけど。幸せになって蓮のための蓮だけの笑顔を見せる。蓮の事を忘れてなんかやらない。でもごめん最後だからこれを最後にするから 」


 溢れてくる想いを堪えきれるはずがなかった。

 前が見えなくなるほどに涙が溢れてきた。


「ごめんね、ごめんね。もっと一緒に遊んであげられなくて。冷たくして、恥ずかしくて無下に扱ってしまって。もっと貴方の笑顔が欲しかった。もっと好きって言ったらよかった。いいたかった。好き。大好き 」


 あぁ、もう蓮の笑顔をる事ができないんだ。

 好きって言えないんだ。

 あぁ、私はこんなにも蓮の事大好きなんだ。


 窓から差し込む月の光に照らされた真衣の最後の涙は止まることは無かった。




 3人の目から涙が見えた。


「ううっ。手紙が濡れちゃいます 」


 優香は流れる涙で手紙が濡れないように真衣に返した。


「これが好きな人、なのね」


 佳奈はなんとも言えない様子で顔をゆがめる。

 それは真衣の話を聞いてだけでなく親友だったのになにも知らなかったという事からの涙だった。


「そうよ。私の自慢の恋 」


 心配する3人とは裏腹に真衣の顔に悲しさは見えなかった。


「真衣は、見ないの 」

「ええ。見たらさすがに泣いちゃうかもだから。もう私は泣かない。彼のために笑顔を捧げるの 」


 そう言った彼女の笑顔は、優しさと愛に溢れていて同性の佳奈達ですら美しいと思えるほどの綺麗な笑顔だった。



 そうこれが私の恋。

 あの笑顔を後悔を決して忘れない。

 そして私は今日も笑う、きっと近くで見てくれてるであろう彼の為に。


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好きってなんだろう 成咲せん @kann

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