第238話 10月と後輩ちゃん
いつもの寝る前の団欒タイム。今日は珍しくみんなの体勢が違う。
俺はベッドの枕や毛布などにもたれかかり、俺の胸には桜先生がもたれかかっている。その桜先生にもたれかかっているのが後輩ちゃんだ。
最近、これに違和感を感じなくなっている自分がいるんだけど。普通に考えたらおかしいよね? 教師と生徒の禁断の関係だよね!?
俺って着実に毒されてる!?
「先輩。余所は余所、ウチはウチですよ」
「そうそう。プライベートだしOKよ! 教師と生徒。禁断の関係って激しく燃え上がるわよね!」
「とうとう認めて開き直ったな、このポンコツ姉! 燃えねぇよ! それと、
「先輩がわかりやすいのが悪いと思います」
「そーよそーよ! それに、教師と生徒である前に、姉と弟なのです! 姉は弟の全てを受け止めてあげる存在なのです! だから、子作りも性処理も任せて!」
「……もうヤダこの姉」
何故姉弟に関することだけ常識がぶっ壊れているんだろう? 後輩ちゃんもぶっ壊れてるし。俺もだんだん毒されてきていますけど!
俺は八つ当たりとして、桜先生のお腹をフニフニする。
「やぁん♡ くすぐったい。弟くんってお腹が好きねぇ。じゃあ、お姉ちゃんは妹ちゃんのお腹を触る! ………おぉ。これは癖になりそう」
わかるか。わかってくれるか! 後輩ちゃんのお腹は中毒性があるんだよ。一度触れたら病みつきになる。
あの柔らかさ。温かさ。素肌のしっとりとした滑らかさ。可愛いおへそ。今すぐ触りたいけど、今日は桜先生のお腹を触る。桜先生もとても気持ちよくて手が止まらない。
俺たちは各自身体を預けながら、好きなことをする。後輩ちゃんはボケーっとしてるし、俺と先生はお腹をフニフニする。
「そう言えば、10月になりましたねぇ…」
ぐてーっとだらけきった後輩ちゃんがのんびりと言った。
そうだなぁ。10月に突入してしまったなぁ。今年もこの時期がやってきてしまったかぁ。嫌だなぁ。俺は一番10月が嫌いだなぁ。早く過ぎ去らないかなぁ。
反対に、10月が大好きな後輩ちゃんが元気よく質問してくる。
「さて質問です! 10月に行われるイベントはなんでしょ~か?」
「はいはーい! ハロ…もごもご!」
元気よく返事をして答えようとした桜先生の口を塞ぐ。
その言葉は言ってはいけない。禁句だ。口に出したら幸せが逃げるぞ。世界も滅んでしまう。
桜先生は暴れる。手に柔らかな唇の感触や熱い吐息がかかるが、俺は口を塞ぎ続ける。
「ハ、もごもご………ロ…ン……もご! もがが!」
「それ以上言ったら、喋れなくしてやるからな」
俺は桜先生の耳元で小さく囁いて脅す。ビクゥッと震えた桜先生だったが、毅然とした態度でキッと横目で睨みつけてきた。反抗的な瞳をしている。
「ハ、ハロウ……もごもご! もごごごご!」
ほうほう。喋れなくして欲しいみたいですね。良いでしょう。やってやる!
俺は目の前にある可愛くて綺麗な桜先生の耳を、カプッと口に含んだ。
「きゃぅん♡」
「な、何事!? 今お姉ちゃんの口からものすっごいエロい声が聞こえたんだけど!?」
後輩ちゃんが振り向こうとするが、何故か桜先生が両手で後輩ちゃんの顔を挟み込んで動かせないようにしている。
俺はそのまま気にせず、桜先生の耳をハムハムと唇で甘噛みし、時々舌でチロッと舐めてみる。
ビクビクしながら、熱い吐息を漏れ出す桜先生。必死に声を我慢している。滅茶苦茶エロい。
ふっふっふ。喋れなくしてやりましたぜ! あの言葉を言わせるくらいなら、俺はエロいことだって何でもしてやる!
「二人とも、答えないんですか? 10月には大きなイベントがあるじゃないですか! わからないのなら正解を発表しまーす。正解はハ…」
「後輩ちゃんは可愛いなぁ。可愛すぎるからナデナデしてあげよう!」
「わーい!」
ふぅ。危なかった。咄嗟に言葉を遮って、後輩ちゃんの頭を撫でてみたけど、何とか防ぐことができたようだ。このまま誤魔化そう。頭をナデナデしてたら、いつか忘れるでしょ。
目を閉じて気持ちよさそうに頭を撫でられる後輩ちゃん。顔を真っ赤にしてビクビクしている桜先生。
桜先生はお腹を軽く撫でただけでもビクビクするからちょっと楽しい。
そのまましばらく誤魔化せていたのだが、後輩ちゃんがハッと我に返ってしまった。
「はっ!? 危ない危ない。先輩に堕とされるところでした。いえ、もう堕ちてますけど。先輩に誤魔化される前に答えを言います! 正解はハロウ…」
「葉月。好きだ」
「ひゃぅん♡ ふ、不意打ちは卑怯って何度言えばわかるんですかぁ~! 先輩のばかぁ~!」
不意打ちの告白を受けて、盛大に身体をビクつかせた後輩ちゃんは、顔を赤くし、瞳を潤ませながら八つ当たりを開始する………桜先生の大きな胸に。
桜先生は胸にグリグリと顔を埋められてビクビクしている。
「い、妹ちゃん、今はらめなのぉ~」
「先輩のばかぁ~。あほぉ~。ヘタレ~。そして、正解はハロウィンです!」
「ちっ! 誤魔化せなかったか!」
俺を罵倒しながら正解を言った後輩ちゃん。
ハロウィン。それは10月末に開催される盛大なイベントであり、俺が最も嫌いなイベントだ。
10月になると、街はハロウィン一色になる。俺の嫌いなお化け一色になるのだ。
ホラーが苦手なことを知った後輩ちゃんは、毎年毎年俺を怖がらせてくる。
ハロウィンなんか滅んでしまえ!
「今年も盛大に行いましょう! コスプレを期待しててくださいね? 数年前から着実に成長したので、ちょっとエッチなコスプレを楓ちゃんと考えております。もちろん、お姉ちゃんにも着させます」
「はいはーい! お姉ちゃんはゾンビメイクをした看護師さんがいいでーす! 待てよ。あえて女性教師のコスプレもありかも…」
「コスプレはいいけど、ホラーの化粧は無しでお願いします。何でもしますので」
今なら土下座でも何でもするぞ。それくらいホラーは嫌い。大っ嫌い。
でも、ここには怖がる俺を愛でるのが大好きという女性しかいない。俺のお願いはことごとく無視される。
「今年のテーマは『トリック・アンド・トリート ~ お菓子をくれたら悪戯するぞ♡ ~』です!」
「『トリック・アンド・トリート』……いいわね!」
「どういう意味だ、それは」
普通はトリック・オア・トリートで、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、だろ?
お菓子をあげたら悪戯してくるとか、意味が分からない。
後輩ちゃんは得意げに胸を張る。平均より大きな胸がポヨンと跳ねた。
「いい質問です。先輩。ハロウィンの日に、ケーキでもクッキーでもいいから甘いものを作ってください。お菓子をくれたら、ちょっとえっちな悪戯をしてあげます」
「お姉ちゃんもするー! エロエロで爛れた悪戯じゃなくて、ちょっとえっちなところがいいわね!」
ほうほう。それはそれは大変魅力的ではないか。
俺もお年頃の男なのだ。愛しい彼女にそう言われたら、期待してしまうではないか。
くっ! 俺もエロくなってしまったな。あの頃の純情な俺はどこへ行ってしまったんだ。
「ちなみに、お菓子をあげなかったらどうなるんだ?」
「飾りつけをして、雰囲気を盛り上げて、ホラー映画の絶叫祭りが始まります」
「全力でお菓子を作らせていただきます!」
それだけは絶対に嫌だ。飾りつけなんかしなくていい。雰囲気も盛り上げなくていい。ホラー映画だけは絶対にお断りです。
はぁ…今年もこの時期がやってくるのか。
10月のハロウィン。嫌いなイベントだったけど、今年は後輩ちゃんと桜先生のおかげで、ちょっと楽しみになった俺でした。
「先輩。そこで提案なんですけど、ハロウィンを盛り上げるために、週に一回ホラー映画を観ませんか?」
「お姉ちゃんは賛成!」
「絶対に嫌!」
「「えぇー!」」
可愛らしく拗ねてもダメなものはダメです! 断固拒否する!
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