第214話 ボーンテッドハウスと後輩ちゃん
ライオンと写真を撮った俺と後輩ちゃんと桜先生の三人。ポーズを取った後輩ちゃんと桜先生がとても可愛すぎた。思わず吐血する程に。
二人のニャンコのポーズ。あれはもはや凶器だ。萌え死ぬ。キュン死する。
周囲にも甚大な被害を巻き起こし、俺もあの破壊力には耐えられなかった。威力はツァーリ・ボンバ、史上最大の威力を誇る水素爆弾をも軽く凌駕する。
二人の可愛さに勝てる者などいない。思い出しただけで幸せだ。昇天しそう。天国で天使の後輩ちゃんと桜先生が出迎えてくれる。
「はっ!?」
そこで俺の意識が戻った。周りを確認すると、どこかの部屋の中にいるらしい。
お隣の超絶可愛い美少女が意識を取り戻した俺に気づいて、じっと顔を覗き込んでくる。
「おやっ? 先輩、復活しましたか?」
「………天使だ」
「ほえっ? 天使…ですか?」
「あぁ! 違う! 何でもない!」
不思議そうな顔をしている俺の天使……じゃなくて、俺の超絶可愛い彼女の後輩ちゃんに、慌てて首を振って誤魔化す。
後輩ちゃんが腕に抱きついていて、胸の柔らかさが気持ちいい。手はいつも通り恋人つなぎ。甘い香りがふわっと漂ってくる。
反対の手や腕も、より柔らかなもので包み込まれている。桜先生だ。じーっと心配するように俺を観察している。
「弟くん大丈夫? さっきからずっとロボットみたいに機械的に動いていたわよ」
「うん、たぶんもう大丈夫」
「ちっ! もう意識が戻りやがりましたか!」
「………後輩ちゃん? 今、舌打ちしなかった?」
「何のことですかー? 私はそんなことしていませんよー?」
後輩ちゃんがそっぽを向きながらあっけらかんと答えた。口笛も吹いている。綺麗な音階を奏で、聞き惚れるほど上手な口笛だ。
おかしいな。悪女のように顔を歪ませて舌打ちをした気がしたんだけど、気のせいだったかな? 返答も棒読み口調だったのは気のせいかな? 明らかに怪しいし嘘をついている感じなんだけど、後輩ちゃんを信じてあげよう。
というわけで、意識を取り戻した俺は、今の状況を確認する。が、さっぱりわからない。殺風景な部屋の中で、少し先に扉があることしかわからない。
「ここはどこだ?」
「動物園の標本が展示してあるところです」
「あのドアの先にあるらしいの。丁度今から行くところよ」
「なるほど。博物館みたいなところか。それは楽しみだな」
「くひっ!」
「くふっ!」
「んっ? どうした?」
「「なんでもな~い!」」
二人は仲良く輝く笑顔を浮かべている。なんか笑い声が聞こえた気がしたけど、気のせいか。
さてさて、この先は標本か。楽しみだな。
二人も俺の腕をグイグイ引っ張っているし、余程楽しみらしい。そう焦らなくても行きますから! では、レッツゴー!
扉を開けて中に入った瞬間、俺は理解不能で固まってしまった。
あまりに衝撃的な光景に脳が処理を受け付けず、フリーズしてしまう。
「なんだ…これは…!」
扉の向こうは薄暗い部屋だった。それもおどろおどろしい雰囲気の部屋だ。松明のような小さな明かりがユラユラと揺れている。
まるで、お化けが出てくるような雰囲気だ。出てきてもおかしくない。
俺は寒さを感じた。背筋がゾクゾクする寒気を感じている。俺の直感がヤバいと大音響で警告を発している。
何故か身体に震えが走り、錆びついた機械人形のようにギギギッと首を動かした。
「こ、こここここ後輩ちゃん? 俺、嫌な予感がしてるんだけど! してるんですけど! ここってもしかして……」
「はい! 所謂、お化け屋敷です!」
大変美しくて綺麗で可愛らしい輝く笑顔でニコッと微笑んだ後輩ちゃんの背後に、猛獣の
「きゃぁぁあああああああああああああああああああああああ!」
防衛本能が俺の身体を勝手に動かし、左右にいた後輩ちゃんと桜先生をむぎゅっと抱きしめ、二人の身体で顔を隠す。
顔が物凄い柔らかさで包まれているが、恐怖に怯える俺は何も気にしない。
いざとなったら後輩ちゃんでも盾にするぞ俺は!
「きゃはははは! 先輩可愛い~! 可愛いですよ先輩! ナイスリアクションです! あはははは!」
「お、弟くんがおっぱいに顔を埋めて……ひゃん♡ お尻までモミモミしてるわ! でも、全然気づいてなさそう」
なんか女性二人が何かを言っている気がするが、俺の脳が処理をしてくれない。
ガクガクブルブル。怖い。超怖い。マジで怖い。
なんで動物園にお化け屋敷があるんだ! 確かに、お化け屋敷や乗り物もあって遊園地みたいになっている場所もあるけど!
お化け屋敷なんかこの世から滅んでしまえ!
「こ、ここここ後輩ちゃん!? こ、こここここ……」
「ここですか? ボーンテッドハウスという名前らしいですよ。ホーンテッドと骨のボーンを混ぜているそうです。動物園の動物たちの骨格標本を学びつつ、獣が襲ってくる死の恐怖も体験できるという素晴らしい場所です!」
「じぇ、じぇんじぇん素晴らしくにゃい……」
「そうですか? ちなみに、今襲ってきたのは豹の骨らしいですよ。確かに、しなやかな感じがしますね!」
「ほんとね! かっこいいわ! 弟くんもよく見たら?」
「ム、ムムムムムリ! だ、だだだだだだって怖い……怖いんだもん!」
むぎゅっと目を瞑り、柔らかいものに顔を押し付けながら首を横に振る。首を振ったのか、身体の震えなのか自分でもよくわからない。
怖い。怖すぎる。もう帰ろう?
「はぅ……先輩が可愛いです。私、キュンキュンします。キュン死しそうです!」
「いつもはかっこいい弟くんがこの可愛さ……これがギャップ萌えっていうやつなのね…!」
「か、かかかかか帰ろう? もう帰ろう? 帰ろうよ……」
「ぐはっ!? 血が…鼻から血が噴き出そう!」
「ぐふっ!? い、妹ちゃん…もう噴き出てるわよ…」
「おっと失礼! そういうお姉ちゃんだってブシャーッと噴き出てるよ」
「あらっ! ティッシュティッシュ!」
二人がゴソゴソと何かをしている。でも、今の俺には余裕がありません!
何かを終えた二人が、鼻に何かを詰め込んだようなくぐもった声で言う。
「じゃあ、先輩のために早く帰りましょう!」
「行くわよ! レッツゴー!」
「お、おぉ…! って、そっちは奥じゃないか!」
「だって、出口はあっちですも~ん! ほら! 行きますよ、せぇ~んぱぁ~い♡」
「い、嫌ぁぁぁぁああああああああああ!」
俺の絶叫がボーンテッドハウスの中に響き渡る。後輩ちゃんと桜先生はウキウキでテンションMaxだ。嬉々としてへっぴり腰の俺の腕を引っ張っている。
そんなに引っ張らないで! 速いから! 歩くの速い速い速い!
突如、襲い掛かってくる動物の骨格標本。
「ぴぎゃぁぁぁああああああああああああああああああああ!」
「あはははは! 先輩可愛い~! もっともっとぉ!」
「うふふふふ! 弟くんが可愛いわぁ!」
嫌! もう嫌! お化け屋敷嫌! 怖い! 怖い怖い怖い怖い怖い!
ここに連れて来た二人のことなんか嫌いだぁー!
俺は、恐怖のあまり脳が処理オーバーし、再び意識を失うのだった。
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