第175話 ワイ談と後輩ちゃん

 

 妹の楓が襲来し、楓様のご要望にお応えして、お昼ご飯は焼きおにぎりとお味噌汁を献上した。


 楓と後輩ちゃんと桜先生は大変満足したようだ。


 三人ともそれはそれは幸せそうな表情で完食してくれましたよ。


 現在俺は、食べ終わった食器を洗って、午前中に干した洗濯物が真夏の日差しでもう乾いたため、部屋の中に取り込んだところだ。


 クラス会の分の洗濯物もあり、今日は少し多め。


 俺は一人で黙々と洗濯物を畳んでいく。


 女性陣はここにはいない。昼食が終わった後、俺の寝室に消えていった。


 時折楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


 俺は一人寂しく洗濯物を畳む。テキパキと綺麗に畳んでいく。


 よしっ! 全部終わり! タオルは脱衣所に持って行って、三人分の洋服は寝室へ。


 コンコンっとドアをノックして扉を開ける。



「入るぞー!」



 扉を開けると、三人の女性が俺のベッドにうつ伏せになって談笑していた。


 三人のスカートが際どく捲れ上がっている。


 入り口に立つ俺から艶めかしい素足が丸見えだ。



「あっ、やっほー! 愛の巣をお借りしてまーす!」



 脚をパタパタさせながら楓が言った。


 せめて借りる前に言って欲しかったなぁ。



「………まあ、いいけどさ。三人とも、食べた後すぐに横になると牛になるぞ」



 俺がそう言ったら、妹の楓がガバっと勢いよく振り返った。


 そして、物凄く悔しそうに血の涙を流し始め、悲痛な叫びをあげる。



「なれるものなら牛になりたいよ! おっぱいバインってなりたいよ!」


「お、おう。なんかすまん」



 血の涙を流すスレンダーな体型の楓に気圧されて、俺は思わずのけ反って謝ってしまった。


 残りの二人は………別に何も気にしていないようだ。


 悔し涙を流す楓は巨乳の桜先生に八つ当たりを始めた。


 三人のスカートが更に際どくなる。


 後輩ちゃんの捲れ上がったスカート。程よく肉の付いた白い素足。太ももでスカートの奥が見えそうで見えない。


 見えそうで見えないのに、それがいい。男心をくすぐられる。


 桜先生も素足が露わになり、スカートの奥は肉付きのいいむっちりした太ももで阻まれているが、お尻が僅かに見えている。


 先生の下着は見えない。Tバックみたいな際どい下着をつけているらしい。


 これはこれでありです。


 楓? 楓の下着なんかどうでもいい。妹なんかどうでもいい。


 というか、妹で欲情したらダメでしょ。


 後輩ちゃんと桜先生の際どい姿を記憶に留め、俺は三人に注意する。



「淑女諸君。下着が見えそうですよ」



 バッと手でスカートやお尻を押さえたのは後輩ちゃん。


 顔を真っ赤にして俺を睨む。



「見ましたか!? 見たんですか、えっちな先輩!」


「大丈夫だ。安心しろ。見てないぞ」


「どうして見なかったんですかぁー!?」



 えぇー。なんで俺怒られてんの? 見てもよかったの?


 桜先生はスカートを直そうともせずに、のほほんと脚をパタパタ動かしている。



「弟くんが見たいなら見ていいわよぉ~。お姉ちゃんは大歓迎!」



 まあ、平然と裸になるような人ですからね。何もしないのはわかってた。


 最後に、妹の楓はスカートをわざとたくし上げたり、チラチラさせている。



「ほれほれぇ~。可愛い妹の下着だぞぉ~!」


「はんっ!」


「は、鼻で笑われたぁ~!?」



 妹の下着なんぞどうでもいい! 興味なんかない! 欲情もしない!



「お兄ちゃんが興奮してくれないよぉ~! 鼻で笑ったよぉ~! 面白くないよぉ~!」



 楓は後輩ちゃんと桜先生に泣きつく。絶対に嘘泣きだ。


 だから、妹の下着に欲情したらダメでしょ!


 んっ? そう考えると、姉に欲情するのもダメなのか。


 俺、姉の桜先生の際どい姿を見て、ちょっといいなぁ、と思ってしまったんだけど……。


 だ、大丈夫。大丈夫なはず! 姉のように思っている桜先生は、血のつながりもないし、戸籍上では他人だし、大丈夫大丈夫!


 俺は自分に言い聞かせながら、手に持った洗濯物を仕舞い始める。


 畳んだ洗濯物を仕舞いながら、俺は三人に問いかける。



「楽しそうな笑い声が聞こえてきたけど、何の話をしていたんだ?」



 嘘泣きをしていた楓が真っ先に声を上げる。



「わい談!」


「わ、猥談!?」



 下ネタで盛り上がっていたのか!? こんな昼間から!?



「こ、後輩ちゃん! 愚妹の言うことなんか聞いちゃメッです! 耳を塞ぎなさい!」


「先輩キャラがおかしくなってますよ。それに『ワイワイ騒いで楽しむ談笑会』、略して『ワイ談』です」



 ワイワイ騒いで楽しむ談笑会? 略してワイ談?


 紛らわしいこと言うな! びっくりしただろうが!



「まあ、猥談もしていますが…」


「後輩ちゃん!?」


「あらあら! 性教育はとても大事なことよ!」



 まあ、桜先生の言う通り、性教育は大事なことだけどさ。


 安全日だから避妊具はしなくていい、というのは真っ赤な嘘とか……。


 桜先生がベッドの上で得意げに胸を張る。



「安心して、弟くん! ここに性的なことに詳しい大人のお姉さんがいるから! 任せなさい!」


「だから不安なんだけど……」


「なんでなのっ!?」



 心外だ、と言わんばかりに目を丸くしてショックを受ける桜先生。


 俺はポンコツ教師にある事実を突き付ける。



「だって、男性経験皆無じゃん」


「うぐっ! で、でも、最近は弟くんで何とか……。そ、それにお姉ちゃんは現役の体育教師よ! 保健体育も教えているんだから! 必死でお勉強したから知識だけは豊富よ! 経験はないけど!」



 ………………あぁ! そういえば、桜先生は体育教師だった! 忘れてた忘れてた。


 夏休み明けに性教育の授業もするって言ってたな。教師だったことをすっかり忘れていたよ。


 桜先生が大人の色気を放ち、妖艶な笑顔で微笑む。



「蓄えた知識を弟くんで実践してもいいかしら? 大人の女としていろいろとサービスしてあげるわよ?」


「あ、結構です。じゃあ、俺は買い物に行ってくるから。じゃね!」


「えっ? そこはお姉ちゃんにダイブしてくるところよ、弟くぅ~ん!」



 背後から桜先生の声が聞こえるが、俺は寝室から出てドアをバタンと閉める。


 あぁ……危なかった。絶世の美女からの誘惑。後輩ちゃんのことが好きだったから何とかなったものの、そうじゃなかったらどうなっていたかわからない。


 それに、今のが後輩ちゃんだったら………………今頃俺は理性がぶっ飛んでいただろうなぁ。


 そこは桜先生に感謝しておこう。


 俺は頭を冷やすため、買い物の準備を整えると、すぐに外を出た。


 外は真夏の日差しが降り注ぎ、頭を冷やすどころか、滅茶苦茶熱くなってしまった。


 うぅ…焼けて死んじゃいそう……。昼に買い物をするんじゃなかった。


 部屋を一歩出て、即座に後悔した俺でした。
















<おまけ>


「うぅ…弟くんにフラれた……」


「あぁ~よしよし。大丈夫ですよ~。先輩は理性の化け物ですからねぇ。私なんかもう軽く三桁は躱されてますよ」


「よしっ! ここはお兄ちゃんの妹として、そして、いろいろな経験者として、私が一肌脱いであげましょう! 物理的にも!」


「お願いします、師匠! でも、服は脱がなくていいから」


「お姉ちゃんからもお願い! 一生生娘でいたくないの! 目指せ弟くんで卒業!」


「………………葉月ちゃんはそれでいいの? お兄ちゃんが盗られるよ?」


「んっ? 何かおかしい? お姉ちゃんだよ? 普通のことでしょ?」


「姉は弟くんの性処理も子作りも何でもするものでしょ?」


「………………うっわー。二人ともマジでぶっ壊れてるよ。でも、私的には面白いから気にしなーい! 頑張れお兄ちゃん! というわけで、猥談しましょー!」


「「おぉー!」」



 ということがあったとかなかったとか……。

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