第59話 浄化された魔界と美緒ちゃん先生

 

 俺は夕方には桜先生の部屋の掃除を終えることができた。足の踏み場もなく、瘴気が漂っていた汚部屋が浄化され、綺麗に輝いている。部屋の隅々まで掃除をして、埃一つない。シンクから物体Xが取り除かれ、お風呂もトイレも綺麗になった。洗濯物も全て乾いたので畳んでタンスに直した。桜先生はその…大人っぽい下着が多かったです。

 シャワーを浴びて汚れを落としたら、家が静かなことに気づいた。リビングには読み散らかされた本が置いてあるが、二人の姿はない。

 寝室を覗いてみると、ベッドの上で後輩ちゃんと桜先生が仲良く寝ていた。二人は姉妹みたいに仲良く気持ちよさそうに寝ている。


「何故俺のベッドで寝ているんだろう? 隣は後輩ちゃんの家だよね? 後輩ちゃんの家にもベッドがあるのに………………あれ? 最近後輩ちゃんは家に帰っていない気がするんだけど…」


 後輩ちゃんはずっと俺の部屋にいる。寝るときも一緒なのだ。隣に部屋を借りる必要ある?

 俺は考えるのを止めた。後輩ちゃんと一緒に居るのが気に入っているのだ。出来ればこのままの生活を続けていきたい。

 俺はスマホを準備すると、仲良く寝ている二人の写真を撮る。

 よしっ! 俺のベッドで寝た罰だ。それに掃除の代金だ。

 写真を撮った俺は静かに寝室を出て、夕食の準備を開始する。今日は豚肉の生姜焼きを作ろうかな。後輩ちゃんからおねだりされてたから。頑張って作るか!

 生姜焼きの良い香りが漂い始めたところ、眠そうに目を擦りながら後輩ちゃんと桜先生が寝室から出てきた。寝ぼけた桜先生は激レアだ。学校中の男子たちが羨ましがるぞ。絶対に内緒にしておこう。


「おはようごじゃいましゅ……」


「おはよう…」


「おはようございます。よく寝られましたか?」


 後輩ちゃんは眠そうにボーっとしているけど、桜先生は俺を見た瞬間、カッと目を見開いて覚醒した。


「あっ! 宅島君! ご、ごめんなさい! ベッドを勝手に使ってしまって」


「いいですよ。後輩ちゃんも毎日寝ていますし」


「ま、まさかっ!? あのベッドであんなことやこんなことを!?」


「してません!」


 まあ、あんなことは後輩ちゃんにされてるけど。最近後輩ちゃんが積極的過ぎる。それはそれで可愛いけど。

 あっ後輩ちゃんが舟をこぎ始めた。後輩ちゃんは家にいるとだらけるからなぁ。このまま再び眠ってしまいそうだ。よし、真っ赤になっている桜先生にお願いするか。俺は料理しているから離れられないし。


「桜先生」


「ひゃいっ!」


「後輩ちゃんをお願いしていいですか? 寝ちゃいそうなので」


「わ、わかったわ。お姉さんに任せなさい! ほら山田さん、顔を洗うわよ」


「ふぁーい」


 桜先生が後輩ちゃんを連れて行く。本当にお姉さんみたいだ。…………桜先生は年上だったな。昨日今日でダメダメな妹が定着してしまった。

 顔を洗って少し目が覚めた後輩ちゃんと桜先生がリビングに戻ってきたときに丁度料理ができた。昼食の時みたいに三人で一緒に食べる。二人はとても美味しそうに食べてくれた。また、桜先生が泣き出してしまったので俺と後輩ちゃんで慰めた。昼食の時と同じ風景だったので割愛する。

 片付けが終わったのでゆっくりしていると桜先生が話しかけてきた。


「あれ? そういえば私のお家はどうなったの?」


「綺麗になりましたよ。予想より早く終わりました。見に行きます?」


 ということで、後輩ちゃんも連れて見に行くことになった。

 ドアを開けた瞬間、桜先生の目が丸くなった。だって瘴気が漏れ出てこないから。そして、輝く床を見て言葉をなくす。後輩ちゃんも驚いているようだ。

 足の踏み場もなく、空気が淀んで瘴気溢れる魔界だった家が、空気は澄んで、キラキラと聖域のように輝いている。


「流石先輩ですね! 魔法を使ったみたいです!」


「すごい! 入居当時みたい! いえ、それよりも綺麗だわ!」


 部屋の全てを確認して桜先生が嬉しそうに声を上げた。リビングでクルクル回っている。


「…………まだ三カ月しか経っていませんよ」


 桜先生が視線を逸らした。


「洋服や下着は勝手に直させていただきました」


「ああ、うん。ありがと」


 先生が顔を真っ赤にする。下着を見られたら恥ずかしいよなぁ。でも、もっとすごいものを発見してしまったからなぁ。言いたくないけど言うしかないか。


「それとですね、掃除していて見つけた雑誌や本はどうします?」


 俺は部屋の隅に纏めてある雑誌や本を指さす。でも、視界に入れないように顔を背ける。キョトンとした先生が雑誌や本に気づいて爆発的に顔を赤くした。


「こ、これは違うの! 違うの! ほ、保健の勉強で必要だったの!」


 桜先生が顔を覆って崩れ落ちた。うん、エロ本を見つかったらそうなるよな。生々しいやつが多かったし、教師と生徒の禁断の恋の漫画も多かったな。何故か姉弟ものもあった。好奇心で全て確認させていただきました。女性も性欲はあるんだから仕方がない。仕方がないよなぁ。先生もこんなのを読んでいたんだなぁ。

 俺にバレてしまって桜先生が呆然としている。これは漫画であるレイプ目というやつか? 瞳には何も映っていない。親にエロ本を見つかった男子高校生はこんな風になるんだろうな。俺はエロ本を持っていないから経験ないけど。俺の家では親よりも妹の楓や後輩ちゃんが危険だ。

 うん、気まずい。めっちゃ気まずい。ここは後輩ちゃんに任せて逃げるか。


「後輩ちゃん。先生を任せた。俺は先に戻っとく」


「えっ! あっはい! わかりました!」


 訳が分かっていない後輩ちゃんにお願いして、俺は自分の家に戻った。

 その後、結構時間が経って帰ってきた後輩ちゃんによると、桜先生は元に戻ったようだ。ただ、しばらくは俺の顔を見れないかも、ということだった。

 流石後輩ちゃん。任せてよかった。でも、なんで顔が赤くて挙動不審なのかな?











<おまけ>


 ペラペラと紙を捲る音がする。


「美緒ちゃん先生! こんなのもあるんですか!?」


「そうなの! 私もびっくりしちゃった!」


「へー、ほー、ふ~ん……また読みに来ていいですか? 私のも持ってくるので」


「もちろん! 大歓迎よ! また語り合いましょう!」


 女性二人は固く握手をした。




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