第19話 レンタルDVDと先輩

 

 私は今、先輩と一緒にDVDを借りに来ている。今日はまだ連休初日。


 私が第二の実家に帰省した後、先輩とちょっとデートをしているのだ。デート内容はDVDを選ぶこと。連休中に先輩と映画鑑賞をするためだ。


 映画を観たいと言ってホラー映画をオススメして、反対されたところでお家で映画鑑賞の流れを作る。私の作戦通りになった。流石先輩、チョロくて助かりました。



「さぁーて! 面白そうなのを見つけましょう!」



 私は先輩の腕を抱きしめてお店に入っていった。


 お店の中は音楽が鳴って明るい。予想よりもお客さんが多かった。私たちと同じように、人が多い連休は家でまったりと映画鑑賞をする人たちなのだろう。


 私は先輩を引っ張ってレンタルDVDのエリアに行く。



「本当にホラー系は選ばないよな?」


「選びませんよ。何にします? アニメもドラマもありますね」



 私は警戒している先輩を安心させる。ホラー映画なんて選びませんよ。


 ふふふ。ホラー映画はもう既に選んであるのだ!


  私の自前のホラー映画を持ってきている。面白そうな新しいホラー映画も買ってある。


 楓ちゃんやお義父とうさんやお義母かあさんにも根回し済み。


 今夜は皆でホラー映画鑑賞会なのだ! フハハハハ! 楽しみだなぁ!



「後輩ちゃん? 何か後輩ちゃんの笑顔に危機感を感じたんだけど!? 背筋がゾクゾクしたんだけど!?」



 先輩が警戒して私の顔を見てくる。チッ! 先輩はカンが良いな。



「今日の夜のことを考えていました。覚悟してくださいね♡ じゅるり」



 私が涎を拭う動作をする。これで誤魔化せたかな?


  ちょっと先輩がまだ疑ってる気がするけどしょうがない。できるだけ考えないようにして、さっさとDVDを決めようかな。



「どれにしようかな~? 先輩、アニメ見ます?」


「そうだなぁ。この際だから一気に見ようかな。でも後輩ちゃんはいいの? 折角の連休なのに」


「いいですよ。どこへ行っても人が多いので家でゆっくりしていたほうがいいです。私、人混み苦手なので」


「じゃあたくさん選ぶか」



 私と先輩はDVDを選び始める。


 外でデートするよりも室内のほうが先輩とイチャイチャできるから、私的にはお家デートがいい。


 この間、漫画を読んだ時みたいに先輩に後ろから抱きしめてもらって観たいな。


 ちょっとエッチなシーンでお互いに変な気分になって、先輩が私を触り始めてそのまま……きゃー!


 よし! エロいやつを選ぼう!



「先輩! これなんかどうですか?」


「これって主人公があり得ない転び方をするアニメだよな?」


「ハーレムものですね。おっぱい見えますよ」


「却下!」



 やっぱり露骨すぎるのはダメか。じゃあ、少し別の方向のやつを選んでみようかな。



「これはどうですか?」


「これはアダルトゲームが原作だろこれ! 最終回がトラウマになったわ!」


「ダメですか。ではこれ」


「近親相姦のやつだろ! 表現が生々しいから!」


「なんで知ってるんですか? 私、噂でしか聞いたことないんですけど」


「お、俺も噂だけだ」



 これは明らかに見たことがありますね。先輩が目を逸らしていますし。


 ふむふむ。一緒に見てみようかな。取り敢えず保留。



「後輩ちゃん? わざと選んでるよな?」


「な、なんことですかー?」



 バレてしまったか。先輩のジト目を躱す。


 先輩はカンが良すぎです。いや、今のは私が悪いか。


 こうなったら海外ドラマとか洋画で攻めるしかありませんね。


 アニメは先輩にお任せしましょう。



「アニメは先輩にお任せします」


「了解。えーっとこれはどうだ?」



 先輩が手に取ったDVDを見せてくる。私が見たことあるやつだ。



「ヴァイオリニストの少女とピアニストの少年の話ですね。これはいいですね。一緒に泣きましょう!」



 このアニメは綺麗だったなぁ。涙が止まらないし。ティッシュを用意しとこう。



「あとは、これとこれとこれ」


「ふむふむ。結構声優さんが同じですね。それに後輩ヒロインが多いですし」


「うぐっ」


「どれだけ私のことが好きなんですか?」


「………………俺の好きな人が後輩ちゃんだなんて言ってない」



 先輩ったら本当に頑固なんですから。視線逸らしてますし、顔が赤いです。


 まったく先輩ったらいつになったら告白してくれるのかな。


 先輩のペースでいいって言ったけど、あんまり遅いと本当に襲っちゃうからな!



「おっと失礼しました。先輩は後輩の子が好きなんですか?」


「まあな」



 先輩がぶっきらぼうに言った。


 嘘……あの先輩が認めただと! はぐらかすと思ったのに。


 落ち着け。私落ち着け。平常心平常心。


 取り敢えず先輩を揶揄わないと心が落ち着かない。よし! 私ならやれる!



「先輩! 顔が真っ赤ですよ~!」


「うっさい! 後輩ちゃんも真っ赤だからな!」


「うるさいです」



 うん知ってる。私の顔がとっても熱いから。顔だけじゃない。恥ずかしくて、そして嬉しくて全身が熱い。店内は涼しいのに汗が出てきた。


 私たちは顔を赤くしながらDVDを選んでいった。アニメや恋愛ドラマ、映画もたくさん。もちろん海外ドラマや洋画も選んだ。


 ふふふ。先輩は知らないだろうけど、海外のドラマとかはエッチなシーンが多いのだ。ちゃんとリサーチ済みです。ベッドシーンがあるやつを選びました。先輩はどんな反応をするのかな? 非常に楽しみです!


 ベッドシーンで興奮した私たちはそのまま先輩のベッドに行って………きゃー!


 よし。連休中は勝負下着をつけとこ。ひ、避妊具もちゃんと持ってきた。練習もちょっとだけしてみた。大丈夫なはず。


 お父さんお母さん、私、山田葉月は頑張って先輩を堕とします。


 目指せ既成事実!

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