第18話 帰省と後輩ちゃん

 

 今日からゴールデンウィーク。やっと連休が来た。俺は実家に帰ることになっている。隣の後輩ちゃんもだ。

 一時間ほど前に後輩ちゃんは帰っていった。俺と後輩ちゃんは小学校の学区が違うだけで結構家は近い。だから一緒に帰ろうと言ったんだけど、女の子はいろいろあるらしい。悪戯っぽく笑っていた。

 俺は最後に部屋の中を確認する。窓は鍵を閉めた。冷蔵庫の中にはほとんど何も入っていない。賞味期限が長いものだけ。コンセントも必要な物以外全部抜いた。

 お隣の後輩ちゃんの家も確認する。鍵も閉めてあるし、冷蔵庫も大丈夫。コンセントも抜いた。

 よし! 帰るか!

 俺の実家は一人暮らしをしているアパートの市から電車で一時間半くらい。電車に揺られながらのんびりと移動する。そして、駅に着いて、そこから二十分くらい歩くと俺の家がある。普通の二階建ての一軒家だ。

 玄関を開けて久しぶりの家に入る。


「ただいまー!」


 誰も出迎えてくれない。連絡したはずなのに。ちょっと寂しい。最近いつも後輩ちゃんが出迎えてくれたり、俺が出迎えたりしていたから少し物足りない。そういえば後輩ちゃんも家に着いたかな?

 俺はリビングのドアを開けた。リビングではテーブルに座った家族が談笑してた。


「ただいま」


 俺が声をかけると部屋の中にいた人たちが一斉俺のほうを見た。


「颯ちゃんおかえりなさーい」


 母の風花が真っ先に返してくれた。母は見た目が若すぎる。小学生と言われても違和感がないくらいの幼女だ。いつ見てもこの幼女が俺の母親には見えない。


「颯おかえり」


 次に返してくれたのは父の隆弘だ。渋くてダンディなおじ様系だ。でも、見た目幼女の母親と結婚したから絶対ロリコンだと俺は思っている。


ふぉふぃふぃふぁんお兄ちゃんおふぇーふぃーおかえりー


 妹の楓が何かを食べながら言ってきた。楓も美少女と言われるくらい顔立ちは可愛い。小学校の頃から人気者だった。俺の親友の裕也と付き合っている。


「おかえりなさい」


 最後に後輩ちゃんが挨拶してきた。


「ただいま。おい妹よ。せめて飲み込んでから話しなさい」


ふぁーいはーい


 妹はもぐもぐと食べながら返事をしてきた。だから飲み込んでから喋ろって言ったのに。まあいっか。家だし。外でしなければいい。

 口の中のものを飲み込んだ楓が俺に話しかけてきた。


「お兄ちゃんお土産は?」


「あるわけないだろ!」


「えー! 葉月ちゃんは買って来てくれたのに」


 楓が焼き菓子を見せつけてくる。


「それは私と先輩からということで」


「あっ! そういうことね!」


「すまんな後輩ちゃん」


「いえいえ」


 俺も何か買ってきたほうがよかったかな? 後輩ちゃんのご両親にでも買う必要は………………ないな。あの人たちには土産話のほうが喜ばれるな絶対。精神がガリガリと削られるが、それで手を打つか。

 母さんが俺に話しかけてきた。


「颯ちゃん聞いたよ。休みなく学校に行ってるって」


「後輩ちゃんに連れていかれるからな」


「はい! 私が連れて行っています!」


「葉月ちゃんもすまないね。颯をよろしく頼むよ」


 父さんよ。なぜ後輩ちゃんに頼むのだ。別に学校休んだっていいじゃないか。有給休暇だ有給休暇。


「任せてください! お義父とうさん、お義母かあさん」


「流石私たちの娘ね!」


 おい母さん。後輩ちゃんは他人の娘だぞ。母さんたちの娘じゃないからな。


「先輩、荷物を置いてきたらどうですか? 手洗いうがいも忘れずに!」


「そうだな。了解」


 俺はリビングを後にして自分の部屋に向かう。自分の部屋は当たり前のことだが何も変わってはいない。掃除はされているようだ。俺は荷物を置くと、別の荷物が目に入った。これは俺のものじゃない。これは………………なんだ、後輩ちゃんのか。

 俺は荷物を置くと手洗いうがいをする。まったく、後輩ちゃんは俺の母親かよ。

 俺はうがいをしながらあることに気づいた。

 あれ? 後輩ちゃん? 今さっき俺の家に後輩ちゃんがいた気がする。

 俺はうがいを終えるとリビングにダッシュした。ドアを勢いよく開ける。


「こ、後輩ちゃん!?」


 俺の大声に驚いたのか後輩ちゃんの身体がビクンと跳ね、俺のほうを振り返った。


「うわっびっくりしたぁ! ど、どうしたんですか先輩!?」


「なんで後輩ちゃんがウチにいる!?」


「連休中お世話になるからですが?」


「はぁっ!?」


「両親が仲良く旅行に行ったので、家に誰もいないんですよ。なのでお泊りに来ました」


「俺聞いてないぞ!」


「はい。言ってませんでしたから。サプライズです!」


 後輩ちゃんがどこからともなく取り出したクラッカーをパァンッと鳴らす。両親も妹もパァンッとクラッカーを鳴らした。うるさい。そして火薬のにおいが臭い。


「葉月ちゃんから連絡きたから即答でオーケーしちゃった」


「母さんなんで!?」


「いいじゃん! うちの娘同然なんだし。というか近い将来結婚するんでしょ? もう娘だよ!」


「葉月ちゃんが泊まるのはお兄ちゃんの部屋ね。よろしく」


「はぁっ!?」


「あの……それは私も初耳なんですけど……」


「お兄ちゃんがいなくなったのでちょっと部屋が汚れております。私の部屋には泊められませーん」


「じゃあ今すぐ片付けてやる」


「ダメダメ! ちょーっと見せられないものが転がってるからダメですぅー! どうせお兄ちゃんも葉月ちゃんも向こうではいちゃラブして一緒に寝てるんでしょ? 問題ないじゃん!」


「そ、そんなことは全くしてないから! なあ後輩ちゃん?」


「まだしてませんね。誰かさんがヘタレてるので。告白もまだです」


 後輩ちゃんが俺にジト目を向けてくる。家族も俺に非難のまなざしを向けてくる。そして、一斉に、はぁ、とため息をつかれた。

 なんでため息をつかれないといけないの? いや、何事にも順序というものがあってだな。告白とかそういう事は時と場所と雰囲気が大切だから!


「じゃあ、なおさらお兄ちゃんと一緒の部屋にしないとね。葉月ちゃん頑張ってお兄ちゃんを襲ってね!」


 おいコラ妹よ。後輩ちゃんを唆すんじゃない。それに確かお前は裕也と賭けをしていたな。裕也は俺が告白するほうに賭けていたけど、さては後輩ちゃんが襲うほうに賭けているな?

 後輩ちゃんも恥ずかしそうにして頷かなくていいから。

 父さんも母さんも微笑ましそうに見つめてないで何か言え!

 俺の家族は全員後輩ちゃんの味方でした。そして後輩ちゃんが俺の部屋に泊まることが決定しました。

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