第222話 Sランク冒険者
ナルーラの街へ急ぐ。
休む間もなく、ただひたすらティトルを走らせる。
少しずつティトルの為の休憩を取って、すぐにまた駆けて行く。
二日後、やっとナルーラの街へたどり着いた。
それでもこれだけの距離を、二日で来れる事は普通ではあり得ない。
ティトルも俺の我儘に付き合ってくれていた。
馬宿でたっぷりの餌を与えて、暫し休ませる。
俺はその間に捕らえられたアシュレイの情報を聞き出す事にする。
聞き込みをするが聖女と言う存在自体、一般には知れ渡っている事じゃない。
その事を聞き出すとなると、やはり巡回中の兵達に聞くのが一番なんだろうけど、それをすると俺は捕らえられるかも知んねぇ。
とは言うものの、何もしない訳にはいかず、手当たり次第に今回の爆破事件に関して分かっている情報があれば教えて貰う様聞いていく。
しかし聞き出した内容は、殆ど俺が知っている事のみで、新たな情報は何も無かった。
八方塞がりになりかけていた時、声をかけられる。
見ると、それは祭りの前の日に誘ってきた、アンナと一緒にいた子だった。
「エリアスさん!ちょっと聞きたいんですけど!」
「何だ?!どうした?!」
「アンナが!捕まっちゃったんです!」
「えっ?!何故だ?!」
「それが分からないんですっ!突然家に国の兵士がやって来たらしいんです!エリアスさんと一緒に祭りに行ったのか聞かれて、行った事を伝えるとそのまま拘束されて、王都まで連れて行かれたってご両親がっ!」
「何だって……っ!?」
「エリアスさん、何がどうなってるんですか?!アンナは何故捕まったんですか?!」
「分からねぇ……けど、なんとかする!教えてくれてありがとな!」
それを聞いて、俺はすぐに王都へ向かうべく、再びティトルに乗って移動する。
アンナを人質に捕られて、アシュレイは従っちまったんだな……
アンナにも悪い事をした……!
ただ俺と祭りに行っただけなのに。
それを人質にするって……そんな国なのか?!
グリオルドってのはよ!!
まだ疲れが取れないであろうティトルには申し訳ねぇけど、頑張って貰うしかねぇ!
王都ウェルヴァラまで急いで行く。
けれど、行ってどうしたら良いとかは正直分かんねぇ……
分かんねぇけど、行かずにはいられねぇ……!
街道を走って、三差路に差し掛かった。
左に行けば王都ウェルヴァラ、右に行けばオルギアン帝国へ行くこの場所で、俺の前をオルギアンからウェルヴァラに行く道を、馬車を引き連れた小隊が通って行った。
一瞬、その馬車の窓から見えた男……
あれは……もしかしてディルクって奴か……!?
アイツもアシュレイを助けに来たのか?!
急いでアイツに追い付く様にして、ティトルを走らせる。
馬車を守るようにして、周りに馬に乗った奴らが取り囲んでいる。
馬車の横にピッタリ並走しているのは…ゾランが乗っている馬だ……!
やっぱりアイツだったんだな!
俺が急いで近づいて来るのを、後ろにいる奴らが警戒をする。
ソイツに、ゾランに取り合う様に伝えて貰うと、暫くして馬車はスピードを落として、やがて止まった。
馬車の横まで行くと、中からディルクって奴が出て来た。
俺もティトルから下りて、ディルクに近づく。
周りの奴らは俺を警戒して剣を構えるが、それをディルクは手で制して止めさせる。
「エリアスだな。」
「そうだ。会った事あんだろ?レクスを見送った時によ。」
「そうだな。」
「御大層にこんなに多く連れて来て、皇帝様は大変だなぁ?」
「国同士の話し合いになるのでな。聖女はそれ程の価値を持った存在だ。」
「俺はアシュレイが聖女だろうが関係ねぇ……」
「分かっている。けれど、そう言う訳にはいかない。」
「俺だってそんな事くれぇ、分かってる……!」
「しかし、エリアス。君はもうすぐ指名手配されてしまう。そうなれば、無闇に動き回る事など出来なくなるぞ?なんなら、今俺達が拘束する事も出来るが。」
「……拘束するのか?」
「正直に言うとそうしても良いと思っている。が、そうすればアシュリーが悲しむ……俺はアシュリーの悲しむ事はしない。」
「ハッ!じゃあどうすんだよ?!俺を助けてくれたりすんのかよ?!」
「そのつもりだ。」
「あぁ?!何だよそれ?!」
「エリアス、君にはオルギアン帝国のSランク冒険者となって貰う。名目だけだ。縛り付けるつもりはない。」
「オルギアン帝国の?!」
「そうだ。今回、グリオルド国の兵達に攻撃したのは、オルギアン帝国の聖女を守る為の行動だと言う事にする。」
「……っ!んな事……っ!」
「ではどうする?このままウェルヴァラまで行って、グリオルド国の兵達に拘束されるか?」
「………」
「エリアスをどうこうするつもりはない。オルギアンには他にもSランク冒険者は何人もいるからな。エリアスはオルギアンからの依頼で、聖女であるアシュリーの護衛の仕事をしていた、と言う事にする。それが嫌なら、自分で何とかすれば良い。Aランクとは言え、一介の冒険者がこれを回避出来るとは思えないがな。」
「……けど……どうにも出来ずに俺が指名手配になったりすれば……」
「アシュリーが悲しむ……」
「………」
「俺だって不本意だ。本当なら、君の事等何も関与せずに放置したいんだ。けれどそうすると……」
「……分かったよ……」
「ではその様に手続きをする。ゾラン。」
「畏まりました。」
「アシュリーは俺が必ず助ける。心配する必要はない。」
「そうかも知んねぇけど、はいそうですか、って帰れるか!俺もついていくぜ!オルギアン帝国の冒険者になっちまった事だしな!」
「……好きにすれば良い。」
俺は不覚にもオルギアン帝国の冒険者になってしまった。
アイツと比べると、俺なんてちっぽけな存在に思えてしまって、すっげぇ情けねぇ気持ちになる……
けど!
アシュレイが助かるんなら何でも良い!
アシュレイに対する気持ちだけは、俺はアイツには絶対負けねぇからな……っ!
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