第189話 模擬戦


ギルド内にある、訓練場までやってきた。


既に見物しようとする人達で、周りは溢れかえっていた。


ギルド長のアルベルトがそこにはいて、私の側までやってきた。



「久しぶりだな、アシュレイ。やっとランクを上げる気になったか。」


「まぁ、成り行きだ。」


「アシュレイは『闇夜の明星』の撲滅に力を貸してくれた。実力は確かなんだろうが、俺も実際にその力を見た訳じゃない。今日はしっかりと確認させて貰うぞ。」


「アルベルトが相手になるのか?」


「いや、Bランクのフェルドに相手になって貰う。フェルドは、魔法も剣も使える万能型の冒険者だ。アシュレイは……剣はどうした?」


「あぁ、昨日壊してしまってな。魔法だけで相手するよりも、出来ればなるべく剣を使って戦いたい。その様子を見て、私の剣を作ってくれるみたいなんだ。」


「そう言うことか。では、ここで貸し出している剣を使って貰って構わない。が、性能の良いものは無いので、それは我慢してくれ。」


「前は鉄の剣を使っていたから、問題なく使えると思う。有り難く借りる事にするよ。」


「鉄の剣だと?!それで今までやって来れてたのか?!不思議な奴だな……まぁいい。では剣を選んで来い。」



訓練場の端にある、剣が幾つか立て掛けてある所に行き、どれにするか見て確認する。

鑑定眼で、その素材と性能が見て分かるのだが、それよりも重さや長さ等で選ぶ。

前に使っていた剣に似た感じの方が、使いやすそうだったからだ。


似た感じの剣があったので、それを選んだ。



「アイツ、一番の安そうな剣を選んでるぜ!武器を見る目もねぇじゃねぇか!」


「勝つ気なんかねぇのかも知れねぇな!試験は記念に受けるとかだろ?」


「いや、Cランクに挑んだけどダメだったって言えば、その実力はあると勘違いしてくれるからなぁ。それを狙ってじゃねぇのか?!」


「ギルド長も何考えてんだ?!フェルドを相手にあてがうって……合格させる気がねぇんじゃねぇか?」


「ランクを上げるのは実力だけじゃ上げられねぇからな!エリアスのお墨付きだか何だか知らねぇが、大目に見て貰って意気がってんのも今のうちだぜ?!」



様々な意見が聞こえてくる。



「うっせぇな!おめぇら!黙って見とけ!!」



エリアスが一喝すると、その場は一気に静まり返った。


何だか、余計にやりにくくなってしまった……


訓練場の真ん中辺りには、既にフェルドがいた。


彼は『闇夜の明星』を撲滅するのに協力してくれた、Bランク冒険者だ。


剣を作って貰う為の模擬戦だから、出来るだけ剣を使う様にするか……



「ギルド長からは、手加減無しで良いと言われている。それで構わないか?」


「あぁ。それで良い。」


「用意は良いか?では、はじめっ!」



アルベルトが言うなり、フェルドが詠唱し火の玉を飛ばしてきた。

彼の詠唱は素早かった。

流石はBランクだ。


それを結界を張って防ぐ。


火の玉は無数に飛んできて、大きさは無いが、その威力は高かった様だ。


結界で防いでても戦いにならないな……

剣を使うところを見せないといけなかったんだ……


そう思って結界を解除し、やって来た火の玉を剣で捌く。

剣には氷魔法を這わせておいたので、火の玉が当たれば、直ぐに消えて無くなった。


それを見たフェルドが火の玉を放って直ぐに、私が捌いている間に近くまで走り寄って来て剣で攻撃してきた。


まだ火の玉が残っている所に、フェルドの攻撃がやって来たので、火の玉を直接氷魔法で消してフェルドに応戦する。


五感を研ぎ澄ませ、フェルドの剣を見ていると、その太刀筋が全て読み取れる。

それ以外にも、筋肉の使い方や足さばき等で、次にどう行動するのかが、手に取る様に分かった。


とは言え、フェルドの剣捌きは見事だった。

確実に致命傷となる場所を目掛けて、そうと悟られないように誘導しながら剣を放ってくる。

彼がBランクだと言うのも納得出来る。


それに時々結界を張ってくる。

私が攻撃しようとすると、何度かその結界に阻まれた。

しかし、アフラテス神から加護を受けた私は、光魔法の効果が大きく跳ね上がり、結界を一瞬で解くことが出来る様になったのだ。


フェルドの剣を難なく捌いていき、時々剣に雷魔法を這わせると、剣がぶつかった時にフェルドが痺れて後退る。


フェルドが肩で息をして、額から汗を流しながら私を睨み付ける。



「……大丈夫か?」



私が平然と聞いてくるのをフェルドは苛立った様で、土魔法を詠唱して槍を作り出して飛ばして来た。


剣に水魔法を這わせて凪ぎ払うと、土の槍は泥になって落ちていく。

それから、また火の玉がやって来て、続いて土の槍が飛んでくる。


土の槍を水魔法で無効化し、火の玉を氷魔法を這わせた剣で凪いでいく。

その間を縫うように、フェルドの剣が襲ってくるが、それも全て払って行く。

魔力が尽きてきたのか、それからは剣のみでフェルドが挑んで来たが、それを交わして、フェルドの首に剣をあてがった。



「まだ出来そうなら戦うが、どうする?」


「アンタ……剣に魔法を付与させてんのか?」


「そうだ。」


「アンタ……魔法を放つ事も出来たのに、なぜそうしなかった?」


「今日は剣を作って貰う為の模擬戦だからだ。」


「ハっ!俺は良いように使われたってところか!」


「そう感じたのであれば……申し訳なかった……」


「余裕だな……分かったよ……」



そう言うと、フェルドは手を上げて



「降参だ!俺の敗けだ!」



そう声高らかに告げた。


周りからはどよめきの声がして



「終了だ!勝者、アシュレイ!」



アルベルトがそう叫ぶと、大きな歓声が鳴り出した。



エリアスは満足そうに微笑んで、私を見ていた。






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