第185話 断決


エリアスと私は魔道具を手にして、そこに貯めておいた魔力を補充した。


この魔道具は、普段の魔力を貯めておくことが出来て、魔力回復薬よりも多くの魔力を補えるのだ。


魔力が身体中に漲って回復していくのが分かる……



「そんな事をしても無駄ですよ?神の前では貴方達など塵と一緒なのです。悪足掻きも程々にしてはいかがです?」


「誰が神だ!自分を何様だと思ってやがる!」



エリアスが強力な雷魔法を放つ。

頭上から大きな稲妻が教皇目掛けて落ちてくる。

しかし、それも光に遮られる。


私はさっきよりも強い闇魔法を放った。

暗闇で教皇達を覆うように、大きく闇が広がっていく。

しかし教皇は体から光を放ち、その闇を全て払い退けた。



「その程度の闇魔法で、私に叶うとでも?」



教皇は声高らかに笑いながら、私達に無数の光の矢を放った。



「ルキスっ!」


「ヴェパル!」



ルキスが光の矢を蹴散らしていく!

しかし光の矢は、教皇だけではなく、あちこちに散らばった高位の教徒達からも放たれている……!


エリアスは無効化しようとするが、四方八方からやって来る矢に対応しきれない。

結界を張り光の矢を防ぐが、その矢は強力で、段々と結界が壊されて行く。


ヴェパルは、教徒達を水に浸らせるが、苦しみだして倒れても、また立ち上がって光の矢を放ってくる。

ヴェパルが蛆を身体中に這わせるが、それでも教徒達は生き絶えない……!


彼らは……もう人ではないのか……?!


それからも襲って来た矢を躱すが、狙いを定める様に光の矢が追って来る……!


無効化にしながらも、剣で矢を凪払っていたエリアスと同じ様に、私も剣で光の矢を防ぐが、留まる事なく次から次へとに矢が襲って来る!


何度もエリアスと結界を二重に張り直し、矢を防ぎ、その間に魔法を放って倒して行き、結界が破られれば矢を剣で払っていき、結界を張りなおす。

こんなことを繰り返していては、私達の魔力が切れれば一貫の終わりだ……!


私は雷魔法で感電させて行くが、倒れた教徒達は、程なくして起き上がって攻撃を始める。


このままでは、どうにもならない……!


雷魔法を放ちながらも、魔力を這わせた剣で払っていたが、その剣が矢に当たって砕け散った……!



「くっ……!」



そこに矢が飛んできた!



「アシュレイっ!!」



エリアスが私の前に立ちはだかる。


光の矢が、エリアスの右胸に鋭く刺さった…!



「あっ……ぐっ……っ!」



エリアスの口から胸から、勢いよく血が飛び散った。



「エリアスっ!!」



急いで回復魔法をエリアスに放つ。


すぐにエリアスは、何事も無かったように回復していく。

少しでも遅くなると、光の矢は体を浄化させてしまう。


間に合って良かった……っ!



「ほぅ……貴女は聖女でしたか……これは殺す訳にはいかなくなりましたねぇ。」



教皇がそう言うと、攻撃が一旦おさまった。



「ルキス……!」



ルキスを近くに呼ぶ。



「あれは……本当に光魔法なのか……?何か禍々しい物を感じる……」


「アシュリー、それは私も感じています。あれは……光魔法ではないかも知れません……」


「どう言う事なんだ?!」


「アフラテスは心優しい光の女神です。彼女に認められ、光の加護を受けた者であれば、あの様な禍々しい光を発する筈がありません……!」


「やはりそうか……っ!」


「ヴェパルが教徒を殺っても、全く死なねぇしな。可笑しいと思ってたぜ!」


「おや……?何やら感づいた様ですねぇ?まぁ、冥土の土産に貴方達には教えてあげても良いでしょう。あ、聖女の貴女は殺しませんよ?私の側で生きる事を許します。一生私が可愛がってあげますからねぇ。フフフ……」


「てんめぇ……っ!」


「私の敬愛する、真実の神はアカマナフ神です。その加護を得てから、私に漲る力と、幸運をもたらせて下さったのです!」


「アカマナフ……っ!」


「ルキス?!」


「それは邪神です!あの者は邪神に魅入られたのです!」


「邪神だと?!」


「それで通常攻撃が効かなかったのか……っ!」


「邪神とは失礼ですよ!アカマナフ神こそ、この世界を治めるに相応しい神なのです!」


「じゃあっ!アフラテス神はどうしたんだっ?!」


「邪魔でしたのでねぇ。勿論、封印させて頂きましたよ?私が欲しかったのは、アフラテス教と言う地盤だけでしたからねぇ。やっとここまで布教できたんです。邪魔はさせませんよ!」



教皇が両手を広げると、禍々しいオーラの様なものが広がっていき、倒れていた教徒や兵達が次々と起き上がって行く……


倒れただけの者も、絶命していた者も……!


それから、教皇も禍々しいオーラに纏われると、その容貌が醜く変貌していった。



「あれは……!アカマナフ?!」


「既に乗っ取られていたと言う事なのか?!」


「ルキスっ!手伝って欲しいっ!」


「もちろんです!」



ルキスが私と重なって、光魔法を強化させる。


さっきよりも強力な浄化魔法を放つが、変貌した教皇には効かなかった……!

それでも、光魔法を放ち続ける。

倒せずとも、その間は邪神のオーラが止まっているからだ。


蘇った者達に、エリアスが覚えたての光魔法で浄化するが、倒れても、またすぐに立ち上がり、襲いかかってくる。



「くそっ!キリがねぇなっ!」


「刃向かうだけ無駄と言う事ですよ。フフフ……」


「うるせぇっ!……ヴェパル!こうなっちまったら仕方ない!もう遠慮はいらねぇ、徹底的にやってしまって構わねぇっ!」



ヴェパルは地面を水に変えて、次々に教徒や兵達を沈めて行った。

それからその水を、また地面に戻す。

そうやって、襲ってきた教徒達を、生きながらにして地中深くに埋めたのだ。


「やっぱりヴェパルはやること半端ねぇなぁ!滅多な事では呼べねぇよっ!」



光魔法を放ちながら、エリアスも剣を振るって応戦していた。


ヴェパルが次々に蘇った教徒や兵達を地中に埋めていく。


これでもう、浄化で心根を正すことが出来なくなった……

操られているだけの人もいたかも知れないのに……っ!


不意に余所見をしてしまった、その僅かな間に邪神のオーラが……っ!



「うぁぁっ!!」



禍々しいオーラがエリアスを襲う……!



「エリアスっ!」



急いで回復魔法をエリアスにかける!



「効きませんよ?それは回復魔法ではどうにもなりません。フフフ…強い手下が欲しかったんですよ。殺すよりも、使い勝手がありそうです。」


「ルキスっ!エリアスを助けてっ!ルキス、お願いっ!」


「アシュレイ……俺に……近づくなっ!……うっ…ぐぁっ!」


「エリアスっ!」



ルキスが私から離れ、エリアスに浄化魔法を施す。

エリアスが苦しみながら、オーラに抗っている……!



……許せない……



お前だけは……!



絶対に許さない……!!






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