第75話 触られると言うこと



「アシュレイ殿、村長がお呼びです。」



そう言って、私を連れてきた男がやって来て、牢の鍵を開けた。


良かった、今このままここにいたら、心臓がどうにかなりそうだった。




男に連れられて、私は村長の家に向かう。


その間に高まった心臓を何とか落ち着かせる。




村長の家には、村長と、セルジと、マリーと、マリーの両親がいた。




「アシュレイ殿、マリーから詳しく話を聞きました。牢屋に入れてしまって、申し訳ありません。」


そう言って、皆が頭を下げた。


「いえ、大丈夫です。顔を上げて下さい。」


「アシュレイ様、本当にごめんなさい!」


「良いよ、マリー。気にしないで。」


「今日は私共の家で、ゆっくりなさって下さい。」


マリーの母親が言う。


「ありがとうございます。」


「ところで、牢にいた男と知り合いだったとか……」


「はい、以前彼に助けて貰った事があったんです。彼は私の、命の恩人です。」


「アシュレイ様の恩人は、私の恩人だわ!村長、何とかなりませんか?!」


「アシュレイ殿から見て、彼はどう言った人ですかな?」


「どう言った人……」


言われてさっきの事を思い出してしまった!


また心臓がドキドキ言い出して、顔が赤くなっていくのが分かる!


急に下を向いた私を、何事かと思って皆が不思議そうに私を見る。


「あ、いえ、彼は穏やかで、とても優しい人だと認識していますっ!その、会ったのは一度きりでしたが、私は彼を信用に足る人だと思っています!」


慌ててディルクの事を説明する。


なにか不自然だったか、私の言動はおかしくなかったか、一頻り気になった。


「そうですか。この二日間、彼の様子を見ていたが、不振な動きをすることなく、大人しく従っていましてな。彼も解放するとしましょう。」


「ありがとうございます!」


そう言って、頭を下げた。


「とにかく良かった!アシュレイ様!」


マリーがまた私に抱きついてきた。


それを見たセルジが


「マリー!離れろ!」


と言って、私からマリーを引き剥がした。


セルジはマリーが好きなんだろうな。



しかし……



マリーにしてもそうだが、銀髪の人達には私の異能である手が反応しない。



それが凄く嬉しいし、こう言っちゃなんだが、楽だ。



触る事、触られる事を気にしないで良いと言うのは、こんなにも楽なんだな……






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