第72話 銀髪の部族の村
拘束されたまま、村まで連れていかれる。
その間、マリーは村の男達に、私の事は恩人だと訴えるが、拘束を解かれる事はなかった。
「アッシュ!アッシュ!大丈夫か?!」
レクスが心配そうに私の周りをうろうろしている。
私は微笑んで、レクスの方に頷く。
暫く歩くと、村が見えてきた。
村の前には、村長と思わしき老人や、屈強そうな若者が並んでいた。
皆が、銀の髪だった。
マリーが村長の元まで走っていき、訴えかける、
「村長!聞いてください!この人は私の恩人なんです!早く拘束を解いてください!」
「マリー。もしそうであったとしても、迂闊に拘束を解くことはできん。キチンと調べてからでないと、この村の存亡に関わる事になりかねん。」
「そんな!お願いします!」
「マリー、大丈夫だよ。今は大人しくしといた方が良さそうだ。」
「……アシュレイ様!」
涙を流しながら、マリーはいきなり私に抱きつきに来た。
私もビックリしたが、セルジと言う男がもっと驚いた様で
「マリー!何をしている?!離れるんだ!」
「嫌よ!アシュレイ様!ごめんなさいぃぃ!」
困った顔をしていると、村長の後ろの方から
「マリー!」
と、大声で名前を呼びながら男女の夫婦らしき者達がやって来た。
恐らくマリーの両親だろう。
声のした方を見たマリーは
「お父さん!お母さん!」
言うなり、母親に頬をぶたれた。
「こんなことをして!まずは落ち着きなさい!」
ポロポロと涙を流してるマリーを、母親は抱き締める。
「心配したのよ……無事で良かったわ。」
そう言って、マリーを村の方へ連れていった。
「マリーの父のガルフと言います。娘がお世話になったようですね。しかし、すぐに拘束を解くことはできません。申し訳ないのですが、暫くはこのままで我慢して頂けますか?」
「分かりました。」
「アッシュは助けたんだぞ!何も悪くないんだぞ!」
レクスは私を庇ってくれるが、今は仕方がないだろう。
私は拘束されたまま、村の中まで連れていかれた。
村は周りはとても強い結界を張っていて、外部からの侵入者をかなり警戒しているのが分かる。
村には広い畑があり、色んな野菜が育てられるのが分かる。
牛鴨や鳥もいて、酪農されているのも目につく。
本当に自給自足だな。
作業をしていた人達が、私を見て手を止める。
余所者が珍しいんだろうな。
晩御飯の用意をしているのか、至るところから美味しそうな匂いがしてくる。
子供達が集まって遊んでいる。
私を見つけて不思議そうに見上げる。
可愛いな。
思わず微笑んでしまう。
この村はいいな。
暖かさを感じる。
私が周りを見ながら微笑んでいるのを見て、私を連れていく者達は不思議そうに私を見ていた。
こいつ、囚われているのに笑ってるとは怪しいヤツだ、とか思われているのだろうか。
村の奥の方に、地下へ下る階段が見えた。
そこを降りて行くと、牢屋の様な場所があった。
「申し訳ないが、暫くここで過ごしてくれ。食事は後で持ってくる。」
男はそう言って、牢に私を入れて立ち去った。
牢の奥の方に人影が見える。
私の他にも誰かいたようだ。
人影がこちらに歩いてきた。
よく見ると、それはディルクだった。
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