第59話 触れた手

「貴女はなにか知っているのですか?」


問いつめる様にナディアを見つめてしまう。


彼女は話を続けた。





銀の髪の我が部族は、他の人より魔力が強く、魔法に長けていると言う特性があった。


森の奥の小さな村で、他の部族と交わらない様にひっそりと生活するには理由があった。


同じ部族同士であれば何も問題ないが、同じ部族以外の人と結婚し子供が出来た場合、その子供には異常が現れる場合がある。


しかし、殆どの子供は生き残る事はできず、産まれてすぐに亡くなる。

恐らく、異常な力に体が耐えきれないからだろう。


生き残る子供は、尋常ではない、大きすぎる魔力と魔法の力を持っていて、自分で制御する事が出来ず、周りを破壊する等の事故を起こし亡くなる事もあった。


そして体に、魔力以外の、何らかの力を持つ場合もある。


実際に見た訳ではないが、自分の親の世代で1人、異常に大きな魔力を持ち、異常と思われる力を持っていた者がいたそうだが、その、不必要で邪魔でしかない力に耐えきれず、その者は自害したそうだ。


今となっては、異常な力がどんな力だったのかは分からないが、人に会わないように、避けるように生活していたらしい。






ナディアがそう話すのを聞いて


私の母は、ナディアと同じ部族だったんだと分かった。


母の親の事は聞いた事がなかったので、どういう経緯だったのかは分からないが、もしかするとどこかで隠れる様に過ごしていたのかも知れない。


ナディアは私を優しく見つめ、両手で私の右手を擦るように触れた。


私は革手袋をはずし、そっとナディアの手を握り返す。



「私の右手は、触れた人の過去が、未来が見えます。私の左手は、触れた人にあった、私の記憶が全て無くなります。」


そう呟くと、ナディアは大きく目を見開き、それから涙を流した。


「しかし、私は貴女の過去も未来も見えません。もしかすると、貴女の血が、少しでも私に流れているからでしょうか……」


同じ部族の血が流れるからなのかは分からない。


しかし、そう考えるのが一番辻褄が合う。





ナディアは私の左手を握った。





少し驚いて手を強張らせて、そっとナディアを見て



「……私が誰か、分かりますか……?」



と、恐る恐る聞く。



「あなた、は、 アシュレイ……

我が  部族を、  護って、いた、  トネリ、コ の森、それが   アシュレイ……よ。」



涙を流しながら、私の名前を呼んだ。



嬉しそうに、ナディアが私を引き寄せた。



優しく、そっと支え合う様に



お互い確認するように、私たちは抱き合った。







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