第39話 淡く緑に光る街

淡く緑の暖かい光が、街全体を包み込む。



それに触れた者は、1人、2人と意識を失うようにゆっくりと倒れこむ。



まるで、暖かく柔らかな木漏れ日に抱かれるような、そんな感覚に陥るように。



幸せそうな顔をしながら 眠るように。



街にいる人達が、ゆっくりと意識を失ってゆく。






「レクス……」



溢れ出す涙を止める事もできず、ただレクスを抱き締める。



私が




私がこの街に来たから




こんなに人と関わったから




だからレクスが……




そう思っても、レクスは目を覚まさない




レクスを抱き締める




そっとレクスの顔を撫でる




私の涙がレクスの頬を濡らす




それをそっと手で拭う




レクスを抱き上げ、歩き出す。


そのまま街の外に出る。


ダンジョンからの帰りか、冒険者達が通りすぎ、レクスと私を見て驚く。


声をかけられても、見向きもせずに進んでゆく。


冒険者達は驚きながら、一旦街へ帰ろうと門をくぐると、光に包まれ皆倒れこんだ。


暫く歩き、森にある一番大きくて長寿の樹木の元にやって来た。


そこにレクスを横たわらせる。



その時、



「アッシュ?こんな所でどうしたんだ?」


クオーツが私を見つけて、それからレクスを見て驚く。


「何があった?!アッシュ!」


そう言って私の肩を掴む。


クオーツの頬に、そっと左手を置く。


クオーツが目眩をおこし、よろめく。


少しして頭を振って、意識がはっきりしだしたクオーツは、私を無視して何事も無かったかの様に街へ戻っていった。




私の事は忘れた方が良い。




優しい人達が




もうこれ以上 苦しまないように……






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