第32話 レクス達の事情3


次の日、シスターは朝から元気だった。


俺達が起きる前に起きて、朝飯の用意をしてくれたんだ。


久しぶりのシスターの飯だ!


やっぱり旨い!


すごく旨い!


モリモリ食べる俺達を見て、シスターは凄く嬉しそうだ。


俺も嬉しいぞ!




朝飯を食べ終わると、シスターとエミーは薬草を採りに行った。


フェルとルーシェとマーニは、今日は農家の所で手伝えるらしく、朝から喜んでた。


俺はシスターに買い出しを頼まれた。


俺の仕事は冒険者の装備を磨くのがメインだから、俺が働けるのは夕方からだ。


それまでは洗濯とか掃除とかの家事をして、それから買い出しに行く。

今日はシスターに、いっぱい買ってくる物を頼まれた。

回復薬と傷薬を作る材料が欲しいんだって。

それに、寒くても育つ野菜の種も。


早速買い出しに行く。


俺は値切り交渉も上手いんだぞ!


頼まれてた薬を作る材料を買って、種も買って、食材も買わなくちゃな!


あっちこっちの店を回って、両手にいっぱいの材料を抱えながら帰る。


着いたら昼頃で、シスターとエミーが帰ってきていた。



「シスター、買ってきたぞ!」


「ありがとう。レクス。重かったでしょう?」


「全然大丈夫だぞ!」


言いながら俺は力こぶをシスターに見せる。


「ふふ。頼もしいですね。」


シスターが笑う。


良いな、こう言うの。


アッシュのお陰で良いことだらけだ。


「もうすぐ他の子達もご飯を食べに帰ってくると思うから、レクスも手を洗って来なさい。」


「はい!」


買って来たものを片付けて、手を洗って、昼飯の準備をしていた時、フェルたちが帰ってきた。





フェルが俺を見つけると、


「レクス兄ちゃん、どうしよう……」


と、困った顔で訴えてきた。


「どうしたんだ?」


フェルの方を見ると、後ろに農家の人達が何人か立っていた。


台所からシスターが出てきて


「あら皆さん、こんにちは。今日はどうされました?」


と挨拶する。


「本当に元気になったんだな。」


「しかし、フェルの言ってる事は本当なのか?」


「シスターに聞いたら分かるだろ?」


口々に言い、シスターに歩み寄る。


何か嫌な感じがする。


「フェルから聞いたんだけど、シスター、あんた昨日やって来た旅人だかに病気を治して貰ったんだって?」


「え?!えぇ、あの、何ですか?いきなり……」


「フェルが言うには、そいつが光でシスターの病気を治したって言うのさ。それが本当なら、俺の娘の足もそいつに治して欲しいって思ってなぁ。」


「そ、そんな事はありえません!確かに病気は良くなりましたが、それはその方が持っていた薬が効いたからです!光って人の病気が治るなんて、そんなおかしな事がおこる訳がないじゃないですか?!」


「でもフェルが見たって言うんだ。もしそれが嘘だとしても、その、万能薬みたいな薬を持ってるって言うんなら、その旅人から譲って貰いたいと思っている。そいつに会わせてくれないか?」


「私の旦那も、病気で働けないんだ!とにかくその人に会わせとくれ!」


「頼むよ!俺のところも……」




思いの丈をぶつけるように、シスターに詰め寄っていく。



「待てよ!シスターは病気が治ったばっかりなんだ!そんなに怖い顔でやって来たら、また病気になっちゃうだろ!」


俺は必死に農家の人達を向こうへ押しやろうとする。


エミーもフェルもルーシェもマーニも、怖がって4人で部屋の隅に固まっていた。


そのくらい、危機迫った勢いがあったんだ。


「とにかく、彼は旅をされてる方なんです!私は連絡先も分かりませんし、もうこの街を出たのかも知れないんです!」


「あんた、隠してるんじゃないのか?!」


「自分だけ元気になったら、それで良いのか!」


「それでも神に教えを乞うシスターか!」


口々にシスターを罵倒しはじめる。





俺は必死にシスターを庇う。





シスターは必ず守るからな!





そして、アッシュにも迷惑がかからないようにするぞ!




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