第12話 勝利の余韻には浸れない

「な〜ライトの旦那。俺達この間はたまたまオーガに勝てたけどよ? 今回はそう簡単にはいかねんじゃね〜か? 俺達まともに稽古付けてもらってないしよ」

「確かに相手が相手だしな。まあやばそうになったら俺が助けに入るからへーきだろ」


 確かに今のファレス達の実力では少し厳しいかもしれない。いくら連携が取れたって圧倒的な力の前では無意味と化す。それはファレス達が1番分かってるだろう。ま、最悪俺が何とかすればいいんだけどな。

 ちなみに相手というのは10階層のボス、ミノタウロスのことだ。ボスというのは他の魔物よりも強く、その階層よりも下の階層の魔物よりも強い事がある。ミノタウロスも例外では無い。



 それから俺達は10階層のボス部屋に向かった。10階層に入ると直ぐにミノタウロスを見つけた。


 相変わらず不思議だな。いくら倒しても復活しやがるし。それも一定時間で。まさに神の所業ってわけだな。

 ダンジョンでは魔物が一定時間で復活するように、人間は理解出来ない事などを神の所業とよばれているのだ。



「お前達、いつも通りでいい。殺れ!!」

「「「了解!!」」」


 ファレス達はライトの合図で一気に戦闘態勢へと入った。予め決めていた合図だったので行動がいつもより早い。


「行くぞガイスト!!」

「おう!!」


 まずはファレスとガイストがに接近する。それをクリルが援護する。いつものパターンだ。それを監視するのがライトの仕事だ。



「ウォーーン!!」


 ミノタウロスが手に持った大きな斧を振りかざし、2人目がけて攻撃をする。その攻撃を盾役のガイストが受け止め、その隙にファレスがミノタウロスの腹部に斬撃を喰らわせる。ーーがしかし、ミノタウロスの皮膚は鎧のように固く、ファレスの刃はミノタウロスには通らず弾かれてしまった。


「嘘だろコイツ·····。マジモンの化け物じゃねえか」

「ファレス!! そいつの皮膚は鎧のように硬い。柔らかいところを狙え」


 ライトはミノタウロスの弱点をファレスに伝える。だがファレスはそれを理解していないようだ。それは盾役のガイストも同じだった。だがただ1人、ライトの言葉の意味を理解した者がいた。それはクリルだ。


「2人とも落ち着いて!! ミノタウロスだって全身硬いわけじゃないのよ。きっと鎧のように関節裏は柔らかいはずよ!!」

「なるほど、そ〜ゆうことかよ。よっしゃ行くぞ2人とも!!」

「ああ!!」

「援護は任せてちょうだい!!」



 クリルは賢く冷静、そんな言葉が似合う少女だ。それはライトも理解しており、自分の出したヒントにきっと気がついてくれるだろうと信じていた。


「ミノタウロスの動きを止めるわ!!」

「助かる」

「任せたぜ〜」


 クリルはそう言うとミノタウロスの膝裏目がけて矢を放つ。その矢はミノタウロスの膝裏に直撃し、動きを封じた。クリルが今放った矢は普通の矢とは違い、矢の先端に麻痺毒液が塗られていたのだ。その毒がミノタウロスの全身に周り動きを封じる。だが流石ボスと言うだけあってミノタウロスは直ぐに動き出す。



「コイツもう動けんのかよ」

「構うことは無い。行くぞ」


 だが動けるだけで完全には回復していないようで動きが鈍い。ファレス達はこの隙に攻撃を叩き込む。ミノタウロスは全身から血を垂れ流し、瀕死寸前と言ったところだ。だがミノタウロスも黙ってはいない。


「ヴォォーーンッ!!」


 動物とは死の間際になると凶暴になり物凄い力を出す場合がある。それは魔物も同じであり、今まさにミノタウロスがその状態だ。

 ミノタウロスはファレス目がけて突進する。その攻撃をガイストが盾で守る。だが、勢いを受け止めきれず、ガイストは10数メートルほど飛ばされてしまった。


「ッ!! この野郎が!! 」


 ファレスは自分の剣でミノタウロスに切りかかる。だがミノタウロスは手に持った斧でその攻撃を防ぎ、ファレスを弾き飛ばした。その瞬間、ファレスの剣があっさりと砕け散ってしまった。


「ぐはっ!! 嘘·····だろ」


 絶対絶命という言葉を誰しもが頭に浮かべたその瞬間、等々ライトが動いた。


「『フォルテート流 修羅ノ型 風刃の鳥籠』」


 ライトはファレス達を守るように風の斬撃をいくつもの飛ばした。それはまるで鳥籠のように。

 そしてライトは3人の安全が確認されるとミノタウロスを討伐すべく技を繰り出す。



「『フォルテート流 修羅ノ型 一線』」


 ライトはミノタウロスの首を落とす。ほんのわずか零コンマ数秒。目にも止まらなぬ速さで、まるで線を描く様に鮮やかに。




「すまねライトの旦那。また助けられちまったな〜」

「気にするな。それよりお前ら中々の連携だったぞ」

「ラ、ライトさんの方こそ綺麗でした!!」

「お見事」



 一応ボスを倒した訳だしこいつらの勝ちでいいよな? やっぱりこいつらの連携はかなりの武器になるな。これを軸にもっと強くなってくれればいいが·····。

 俺がそんな事を考えていると1匹の魔物が現れた。



「クピ?」

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