第9話 俺の弟子のようなもの
「ふーっと、そろそろ行くか。ガイストの怪我も治ったみたいだしな」
俺達はガイストの怪我が治った事を確認し、再びダンジョンを進む。俺達というのは先程出会った3人組の事だ。どうやらこいつらは同じ村の出身で、子供の頃から一緒だったらしい。どうりでこの仲の良さか。
それから何度か魔物に出くわした。俺が相手しようかと思ったが、こいつらの実力を見とく必要があると思ったのでこいつらに相手をさせることにした。
まあ大丈夫だろうけどな。魔物ったってオーガの1匹だけだし。
「って言ってもよライトの旦那。流石に3人でオーガはきつくね〜か?」
「ん、そうか? じゃあ倒せなかったら俺がお前らの面倒見るってのは無しだな」
「そりゃね〜ぜライトの旦那·····」
「無駄話はそこら辺にしてくださいね。行きますよ」
どうやらこのパーティの指揮官は弓使いの少女、クリルらしい。まあ適任だろう。
こいつらのパーティは前衛2人に後衛1人。中々バランスもいいし、それを生かした戦い方が出来ている。オーガの攻撃は盾役のガイストが防ぎ、その隙にファレスが剣で攻撃をする。クリルは弓で援護しつつ帰路の確保。中々理にかなってる戦い方をしている。 こいつらって中々強いんじゃね? そこら辺の盗賊団くらいなら簡単に潰せそうだけど。
俺がそんな事を考えているうちに戦闘は終わっていた。もちろんファレス達の勝利に終わった。
「何とか勝てたな」
「ああ、ちょっと危なかったけど」
「でも、私達オーガに勝てたんだよ!!」
何だかファレス達は和気藹々としていて俺はちょっと羨ましいと思ってしまった。俺とカイロも前なこんな感じだったのにな·····。
·····嫌なこと思い出しちまったな。
「ん? ライトさん、どうかしたんですか?」
クリルが上目遣いで俺を見てくる。
あれ? こいつこんなに可愛かったっけ? ·····気のせい·····かな。それよりこいつら喜びすぎじゃ·····。
「いや、なんでもない。それよりお前らオーガごときで浮かれすぎだ」
確かにオーガは強いがこの先もっと下を目指すならオーガごとき1人で倒せるようにならなくてはいけない。でないとすぐに死んでしまうからだ。こいつらと知り合ってからあまり時間は経ってないが、俺はこいつらを死なせたくない。俺はそう思ってしまっていた。
「いやいやオーガってあのオーガだぜ?」
「ああ、ちなみにもっと下に行くとオーガの群れが出てくるから気をつけろよ」
「え、マジかよ·····。てか、ライトの旦那そんな下まで潜ってたのかよ·····」
「まあ23階層までだけどな」
「化け物かよ·····」
「ま、お前らにはミノタウロスくらい倒せるくらいにはなってもらうからな」
「あれ? 俺達死んだりしないよね?」
それから俺達は1度上の階層に上がり、晩飯を食べ終えると直ぐに寝る準備をした。ファレス達が見張りはどうするか、と相談していたが俺の魔物避けの薬があったのでそれで解決した。
俺は寝ていても魔物の気配に気がつけるから最近は全然使ってなかったので気が付かなかったが、この薬がもうすぐ切れそうな事に気がついた。後で薬草を採取しに行かなくては。
「ライトさぁ〜ん」
「ん? どうしたクリル」
「ライトさんて恋人って、いるんですか」
「っいや·····まあいないけど」
「そうなんですか?! ふふっ!」
「何だ?」
「べ〜つに〜」
そう言ってクリルはファレスたちの方へ戻って行った。一体何がしたかったんだ?
それよりもやっぱり俺、まだフライデの事引きずってるんだな。·····未練たらしいよな。まあでも新しい恋とかは当分無理そうだな。
俺達はその後直ぐに眠りについた。皆疲れがたまていたのか熟睡だ。警戒心てものを知らんのか、まったく。
だがその晩は特に何も起きやしなかった。魔物避けの薬のおかげで魔物は大丈夫だが、たまに盗賊等もダンジョンに入ってきたりするので注意が必要だったのだ。
「早いですねライトさん」
「っ! ああ、何だガイスト。急に話しかけてきたからビックリしたぞ」
「あ、すいません。·····それとおはようございます」
「あ、ああおはよう·····」
俺は一瞬ガイストを盗賊だと勘違いしてしまった。危なかった、もう少し気がつくのに遅かったら剣を抜いていたかもしれない。やっぱり寝起きが1番注意が必要だな。
ちなみにガイストは口下手で基本無口だ。だがちゃんと自分の意思は伝えるので問題ない。問題があるのはどちらかと言うともう1人の方だ。
「よ〜ライトの旦那。よく眠れたか〜」
この男、ファレスのことだ。こいつはガイストとは真逆の性格だな。たまにうざったいくらいだ。
「はぁ、お前は相変わらずだな」
「へ? それってどうゆうことだよライトの旦那〜」
「いいからそこの河原で顔でも洗ってこい。今日は昨日より下の階層に行くぞ」
「あ〜い」
全く、こいつといるとペースを崩される。悪い気分では無いと思うのだが、ちょっとやりずらい。戦闘ではしっかりとしているのに何故日常ではあんななのだろうか。
「そうですか? ああ見えてファレスが1番真面目ですよ?」
「いや、嘘だろ?」
クリルに聞いたのだが、こいつらの中だったらファレスが1番真面目でしっかりとしているらしい。
世の中何が起こるか分からないな。まあ真面目なのに越したことは無いんだがな。今日の相手はミノタウロスだし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます