第8話 カイロの過去

 カイロがまだ10歳の時、カイロの両親は自殺してしまった。カイロただ1人を残して·····。



 事の発端はある日、見知らぬ男がカイロの家を訪ねてきたことだ。それからカイロの両親はその男に身に覚えの無い借金を背負わされることとなる。


「奥さ〜ん、いい加減払ってくんね〜かな? こっちも一応仕事なんで」

「だから·····そなんなの知らないって言ってるじゃないですか。それにあなた方に借金した覚えはありません」

「ごちゃごちゃうるさいんですよ。あんたは黙って金払えばいいんだよ·····な?」


 カイロの母親が抵抗しようとすると男はドスの効いた低い声でカイロの母親を黙らせた。

 当時幼かったカイロは何が何だか分からなかった。だが母親や父親が大変な目に遭ってるというのは理解出来たようだ。


「お母さん、大丈夫なの?」

「·····ええ、大丈夫よ。カイロは何も心配しなくていいから」


 そう言いながらもカイロの両親はもう限界に近かった。経済的にも、精神的にも。 

 そして借金に押し潰されそのまま自殺してしまったのだ。借金から永遠に逃れるために。あの借金取りはカイロの両親が自殺した事を知るともう二度と来なくなった。


「·····母さん、父さん·····どこいったんだ。なんで俺を1人にするんだよ。·····1人は寂しいよ」



 両親の死が原因でカイロは変わってしまった。暗く、全てを憎むような目をしていた。

 次第にカイロは心を閉ざしてしまった。もう誰も信じない、自分1人で生きて行くと決めてしまった。その為に知恵を学んだ。戦い方を学んだ。生き方を学んだ。殺意を学んだ。

 そしていつしかカイロはライトを憎むようになっていた。優しい母親を持つライトを。自分とは決定的に違うライトを、自分と同じ目に遭わせたいと。



 親といる子供を見るのがカイロは何より辛かった。壊してやりたい気持ちを抑え、その場からいつも逃げ出していた。それは親友のライトも同じだった。憎くてたまらなかった。

 それからカイロの怒りや恨み等と言った感情が全てライトに向かった。死の原因である借金取りではなく、ただ優しさい母親をもつ親友のライトに·····。

 だがカイロはその感情を隠した。ライトに感ずかれないように。時が来るまで、ずっと。


 



 そして3年後、カイロはライトの母親を崖から突き落とした。カイロは長年考えていたのだ。どうやってこの気持ちを晴らそうか。その答えがライトの母親を殺す事だった。

 さらにそれから2年後、カイロはライトに真実を話す事となる。ライトの絶望した表情がたまらない程に興奮した。カイロの中では爽快感や達成感があった。全てを奪ってやったんだと。


 この頃になるとカイロは自分を見失っていた。何故ライトの母親を殺したのか、何故ライトから全てを奪うような真似をしたのか、カイロ全く分からなくなっていた。だがもうどうでもいい、とカイロは頭の隅に片付けてしまった。







 カイロとフライデが16歳を過ぎた頃。2人は村を出て冒険者になっていた。フライデは最初は嫌がっていたが、魔法の才能があると分かると自信がついたようで、フライデはカイロと共に冒険者になる事を決めた。


「カイロ。その、私頑張るから」

「ああ、一緒に頑張ろう。まずは仲間探しからだな。行くぞ、フライデ」

「はい!!」


 そして2人の冒険者生活は始まった。ライトの存在をすっかり忘れて·····。

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