第21話 バレた!?

 いつも通り学校に着き、席に座る。すると、タクがこちらに寄って来て、声をかけた。


「涼平ちゃん、ちょっと」

 タクは人差し指をクイクイと動かす。耳を貸せと、いうことだろうか。

 オレはタクに顔を近づける。すると、小声で喋ってきた。


「会長の弱点を見つけたよ」

「えっ、マジ?」


 驚きの声を上げる。

 オレの家で、ぐうたら寝転がっている時を除いて、あの会長に弱点なんかあるのか? ちなみに、ぐうたらしている時の会長は、氷の上でゴロゴロしているトドにそっくりだ。愛嬌があるちゃあるが、所詮トドだ。せめて、アザラシへとレベルアップして欲しい。


「うん、マジなんだけどさ。これって、涼平ちゃんも絡んでいる話なんだよね」

「え、オレと会長が絡んでいるって? なんじゃ、そりゃ?」


 タクの意図が分からず、キョトンとする。


「3組の薫ちゃんから聞いたんだけどさ」

「薫ちゃん? ああ、お前の大勢いるガールフレンドの一人の」


 オレは思い出し、ポンと手を打った。


「薫ちゃんは会長と同じクラスなんだけどさ。今朝、涼平ちゃんの家から、会長が出て来るところを見たって言ってるんですけど。マジなの?」


 タクがそう耳打ちする。その一言で、顔から血の気が引いた。


 ヤベ、ヤベェ! ど、どうする? どう言い訳する? どうしよう? どうしよう? どうしよう?


 咄嗟に言葉が出て来ない。切り返す事も出来ない。冷や汗をかきながら、タクを見ると、奴は珍しく神妙な顔つきになっている。なんか、喋んなきゃ。なにか……


「いや、デマでしょ、それ」


 やっと口にしたのが、コレであった。言い訳になりそうにない。動揺がバレないよう、なるべく声を平坦にして言うのが精一杯だった。


「薫ちゃんはデマとか言わないって。どういうことなの、涼平ちゃん?」


 うっと言葉に詰まる。やや間を置き、どうにか喋り出す。


「会長はただ単に、委員会のプリント届けに来てくれただけだ。それ以上でも、それ以下でもない」


 ぶっきら棒に返す。なんか、逆ギレっぽい口調になってしまった。落ち着けって、オレ。


「マジで?」


 タクはオレの顔を覗き込む。


「マジだ」

「フーン、委員会のプリント、ね。なんなら、生徒会で議長をやっている委員長から裏を取ってもいいんだよ?」


 タクの視線が教室の扉の方に向かう。そこには、登校して来たばかりの塚原がいた。

 ドクン! と心臓が跳ね上がる。


「勝手にしたらいいだろ。裏でも何でも取って下さいよ」


 タクから顔を背け、横を向いた。情けないことに膝が笑っている。


「あ、そ。なら、そういうことにしておくよん」


 タクは素っ気無い口調で言った。タクの追求から逃れ、はぁーと、長く息を吐き出す。そんなオレの耳元に、再びタクの顔が近づいたので、ドキリとした。


「けど、涼平ちゃん」

「な、なんだよ?」

「なんかあったら、僕に言ってくれよ。一応、友達やってるんだからさ」


 タクは片手を挙げ、自分の席に戻っていった。


 オレはげっそりしながら、机に突っ伏した。タクは口が軽いけど、友達をないがしろにするような奴じゃない。そこの所は信用していいと思うんだが……


 視線をガラス窓の外に移す。仰ぎ見ると、真っ黒な雲が空に浮かんでいた。雨雲が近づきつつある。

 空模様と同じく、この先荒れてきそうだなと感じた。

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