第13話 けいおん (後書きに重要なことを書いています)

「ウース。皆、いるかー」


 部室に入り、声をかける。

「いるですにゃん」


 1年の女子がキーボードの鍵盤を右手で軽やかに叩きながら、左手を挙げる。その耳には立派な猫耳が生えており、丸くてキュートなお尻から、尻尾までもニョッキリと生えていた。ちなみに、これはコスプレではない。無論、特撮でもない。ここまできたら、説明する必要もないかもだが、一応念の為。


「犬飼という一年の女子は、猫耳パンデミックなのだー! 犬飼という苗字のくせに、猫娘という因果な奴なのだー!」

「いやー、杉内先輩。わざわざご紹介ありがとうございました。もっとも、TSパンデミックと違って、猫のパンデミックは亜種で、とってもレアっすけどね。感染確率も500万分の1以下ッス。ニャンとも因果な病気なのです」

「ウム、そうだな。美少女、美少年、美幼女。TSパンデミックはややこしい病気だが、流石に他の病状はない。かかった奴は不運というか、ツイてないよな」


 オレがそう言うと、マイクスタンドの前に立つ美少年がさめざめとした。


「ううううううっ。それはボクの事を言っているんだね? 涼平」

「よう、宏美。今朝は会わなかったな」

「この前、お弁当をダブらせちゃって、合わす顔がないよ……」


 宏美はしゅんと萎れた。


 そこで、ふと気が付いた。考えてみれば、宏美が朝、オレの家に迎えに来るのはマズいな。会長と玄関口で鉢合わせしたら、言い訳のしようがないぞ。その辺は細心の注意を払わなくちゃな。

 そう考え、渋い顔をする。


 ちなみに、軽音部の部員は、オレと宏美と犬飼とドラムのタクだ。もっとも、タクは殆ど幽霊部員で、たまにしか顔を出さない。

 宏美が中学生の頃、ベースを始めたのに影響を受け、高校に入ってからオレはギターを始めた。それが昂じて、軽音部に入部した。


「先輩、それじゃあ一発いくッスか?」


 犬飼が猫耳をおっ立て、挑発的な目つきをしながら、キーボードを叩く。


「ウム。では、例のアレを準備し給え」


 オレの言葉に従って、犬飼は尻尾を振りながら準備する。宏美もそれを手伝う。犬飼はカップをテーブルの上に置き、お湯を沸かし、宏美はお茶菓子を用意した。

 準備が整い、皆で談笑しながら、お茶を飲む。放課後にティーするタイムは軽音部のお約束。


「さて、お茶も飲んだし、始めるか。犬飼、Aくれ」


 犬飼がラの鍵盤を押し、オレは5弦をチューニングする。それから、チューニングメーターにコードを接続し、丹念に調律していく。それが終わってから、最後に軽くAマイナーのアルペジオを爪弾いた。


「犬飼、今日もタクは来ていないから、ドラムマシンのセット宜しく。BPMは110で」

「了解っす」


 犬飼はフットスイッチを踏み、ドラムマシンを起動させる。スピーカーから4つ打ちのビートがドッドッドッドッと鳴り出す。それに合わせて、オレはピックアップをフロントに切り替え、甘いメロディのリフを奏でる。

 オレはリフを弾き、犬飼がコードを引く。それに、宏美が弾くベースが重なる。前奏が終わり、ベース兼ボーカルの宏美のハイトーン・ボイスが炸裂。元が女の子なので、ハイトーンが軽々と出る。

 ズドドドドとベースとドラムがリズムを刻み、ギターがコードを弾く。それに、宏美のパワフルな歌声が加わる。


 曲が後半に近づき、ギターソロ。待ってましたとばかりに、タメてチョーキング。ゆったり目のフレーズから、ちょっとした速弾きを披露した。それから、ドラムとベースがミュートし、ボーカルとギターだけが重なってエンディング。盛り上がったまま、1曲目を終える。

 そして、場当たり的に曲をチョイスし、練習する。今日はハードロックでいくぜ。


 ちょうど5曲目が終わったところで、部室の扉が開いた。ラケットを肩に下げ、春野さんがペコリと頭を下げて、部室の中に入ってきた。

 春野さんという聴衆を得て、オレは気張った。


「うしっ。ほんじゃ次は、あの課題曲でいこう」


 オレが言うと、部の皆が「えー」と声を上げた。


「あのライトハンドで、いつも涼平は失敗しているじゃないの」


 宏美が異議を唱える。


「うるさいなぁ。やるったらやるの。ドラムはこの前、タクが叩いたやつ流して」

「分かったですにゃん」


 犬飼が返事を返し、DTMのPCソフトを立ち上げた。このソフトに、タクが演奏したドラムが録音されている。

 再生ボタンを押すと、スピーカーから強烈なダブルバスのドラムが鳴り響く。超絶うめぇ。たまにしか部活に来ないけど、やっぱ、タクはうめぇな。


「春野さーん、見ててねー」


 オレは手を振ってから、真顔になり、必死にライトハンドを決める。速いけど、なんとか、ねじ伏せてやる。って、トチった!


 オープニングのライトハンドから、速弾きのスケールダウンまで、トチり1回でなんとか弾きこなす。ダブルバスの胃に来るような重たさと、しっかりしたベースライン。ギターのバッキングも中々に癖がある難曲。


 ハイライトのギターソロもトチったけど、上手く誤魔化しつつ、なんとか演奏を終えた。


 圧倒され、ボーとしている春野さんをよそに、続けざまに演奏する。前曲のハードなやつとは違い、シンセが綺麗で、ややバラードかかった曲。 この曲はシンセとボーカルがメインだ。


 宏美が高音と声量で圧倒する。そこに、優しくシンセが重なる。

 チラリと春野さんを見ると、その後ろに会長が無言で立っていた。けど、その姿はすぐに見えなくなった。


 ギターのチョーキング、煌びやかなシンセの旋律、それに宏美の熱唱が混ざり合い、エンディングを迎える。

 演奏が終わり、オレは春野さんに声をかけた。


「どうだった、春野さん?」

「いや……なんて言うか、私、圧倒されちゃって。演奏とかに疎いけど、携帯オーディオプレイヤーで聞くのと、実際の演奏とじゃ全然違うのね。知らない曲だけど、あまりの迫力に感動しちゃった」


 言葉とともに、春野さんはふぅっと息を吐いた。本当に感じ入ってくれたみたいで、充足感に包まれる。


 皆でちょっと雑談した後、オレたち軽音部のメンバーが後片付けをし、廊下に出て、部室の鍵をかけた。


 春野さんと一緒に歩いて行こうすると、会長の後ろ姿が見えた。隣の音楽室に入っていこうとしたので、彼女の背中に声をかけた。


「あ、会長。さっき、ちらっと姿が見えたけど、オレの演奏、聞きに来てくれたの?」


 会長はフンと鼻を鳴らし、喋り出す。


「フン、自惚れてるな。私はピアノを弾きに音楽室に来ただけだ。隣がやかましいと思って覗いてみたら、ロックなんかやっているじゃないか。クラシックに比べると、ロックなんか下劣な音楽だ」

「ロックが下劣な音楽だって? おい、取り消せよ、今の言葉!」


 会長の言葉にムッとする。オレのことを馬鹿にされてもいいが、ロックを馬鹿にするのは許せない。これまで必死に練習しているのを否定されたような気がして、怒りがこみ上げてきた。

 目を吊り上げ、会長を睨む。睨み合いの中、先に視線を外したのは会長だった。


「これ以上、杉内君と音楽談義をする気はない。バカバカしい」


 会長は会話を一方的に打ち切って、音楽室に入り、乱暴に戸を閉めた。

 収まりのつかないオレは、文句をつけに行こうと音楽室に乱入しようとしたが、部員と春野さんから止められた。そこに、ピアノの旋律が音楽室から聞こえてきた。


「うへ。会長、パガニーニ弾いているっすか」


 犬飼が猫耳をピクンと立て、ポツリと呟く。


「何それ、ウマいの?」

「パガニーニは飯じゃなくて、クラシックの音楽家っす。超絶技巧で、ムズいッス。私はピアノ出身だから、よく分かるッスよ」

「フーン。まっ、別にどうでもいいけど。クラシックなんかに興味ないし。それより皆、帰ろうぜ」


 ギターストラップの位置を直して、オレ達は学校を後にした。



*)あとがき


ここのエピソードで、「けいおん!」のパロを書いていました。

京アニのパロも書いていましたが、その部分は削除しました。

今では不謹慎な表現になってしまい、自粛しました。


どうして、こんなことになったのでしょうか。

不条理でたまりません。


あの京アニがあんな目に……

犯人は絶対に許せません。


どっかの馬鹿がツイッターで、「京アニは犯人の作品を公開すべき。盗作問題だ」と喚いていますが、そんな訳ねーだろ、と。


一次落ちの作品など誰も盗作しないっての。公募をなめるな。通常、一次審査は下読みがやるんだよ。

つまり、京アニの編集が読むのは、二次審査に入ってから。だから、KAエスマの編集が犯人の作品を読んでいる可能性はゼロに近い。

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